表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/62

盗賊撃退


 帝都への街道は整備されてはいたが時折盗賊が出る事で有名だった。


「出るなよ~、本当に‥‥」


 僕は祈るような気持ちで呟いて馬車を走らせるとその日の午後、盗賊団が現れた。なぜ王都で小麦が不足していたのかその時理由が判ったきがしたが手遅れだ。


「こら~!そこのお前止まれ!」


 うんざりしながらも馬車を止めると盗賊団の馬に囲まれる。


「命が惜しければ積み荷を置いていけ」

「‥‥嫌だ」

「ほぅ、死にたいのか?」

「嫌だ!」

「ガキじゃねーんだ、聞き分けよくしろや」

「あーはっはっは」

「こりゃ傑作だ、一人でどうすんだよ」


 盗賊団は僕を嘲笑した。こいつらの顔が僕を虐めて来た連中に重なって見え無性に腹がたつ。


「うるさい!黙れ!」


 いつしか僕は絶叫していた。


「ほぅ、言ってくれるじゃねーか」


 そう言って目の前の1人が長刀を僕に向けて凄む。ムカついて理性を失った僕はその刀を掴む。


 ガチィ


「おお!お前、なにしやがる」


 刀の切れ味は悪いようで、掴んだ手が切れることもない。そして、その刀を引っ張ろうと必死にグイグイと頑張っているそいつが滑稽にも見えた。その姿を見た周りの賊もゲラゲラと笑う。


「おお、お前ら笑ってんじゃねーよ、こいつ!こいつ!」


 必死に両手で刀を引き抜こうを頑張っているので手を離すと、勢い余って反対側に落馬した。そこでまた仲間がゲラゲラと笑う。


「おいおい、お兄さん調子に乗るのはそこまでにしておけ、次は殺すぞ」


 仲間の一人でリーダーのような男がドスのきいた声で言う。


「やって見せろ!」


 小麦を失ったら何もないので怖いものは無かった。また乞食に戻るくらいならいっそここで死んでもいいとすら思う。


「調子に乗るな!」


 そのリーダーがボウガンを構えて発射した。


 バシィ!


 何故か、その矢がゆっくり飛んできたように見えて、簡単に矢を掴む。


「ああ!?」

「なんだこいつ!冒険者か!?」


 それで一気に場の空気が殺伐とした。見ると全員が抜刀して臨戦態勢に入っている。


「うるさい!文句があるなら掛かってこい」


 僕は怒りが収まらないまま怒鳴った。


「おう、やっちまえ!」


 リーダーが叫ぶと一斉に襲い掛かってきたが、全員の動きがゆっくりに見える。


 一番手前に伸びて来た剣を掴んで取り上げて、となりの賊に目掛けて投げつける。つぎに迫ってきていた刀を取り上げてリーダーに投げつける。


 まだ余裕があったので、一挙動で馬から降りてボウガンを構えている奴の所に走っていき思いっきり殴りつけた。


 次の瞬間悲鳴があがる。


 ザシュ!ズボ!ガン、ゴン!


「うわぁあああ」

「あぎゃぁあああ」

「うぉおおおお」


「お前らのろまなんだな」


 それは素直な感想だった。特に煽ったつもりもなくごく自然に思った事が口からでた。


「ひぃいいいい」


 リーダーの後ろにいた賊が悲鳴を上げて逃げ出そうとするので跳躍して後ろから飛び掛かり、後頭部に拳をめり込ます。


 手負いのリーダーがボウガンを発射したのでそれを躱して、走りリーダーの顔面に拳を叩き込んだ。


 ドゴン!


 鈍い音を立ててリーダーは落馬して気絶してるようだった。


 ふと振り返ると、残りの盗賊は馬で走り去っていく所だ。


「盗賊なんて案外弱いもんなんだな‥‥ビビる事はなかったんだ」


 暴れてスッキリしたあと、そんな感想がでる。


 まぁ良い。早く小麦を帝都に届けるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ