救出へ
「なるほど、それから?」
「襲われていたエルフ族の村でダークエルフを倒して、彼らからゲートの秘密を聞いてそれで‥‥」
「それ!そのゲートの話を詳しく訊こうと思っていたのだよね」
アモンが身を乗り出す。サガンドで合流したときにざっと聞いただけで、詳しい話はなかったのだ。
「今回のモンスター襲撃の件は、全部彼らがゲートを操作してモンスターを送り込んでいたらしいのよ」
アリーは当時その場で聞いた話を説明した。
「邪神、ダークレイヤーか‥‥それは明日にでもギルドに報告しなければならないな」
「そのゲートはこの世界のあちこちにあるらしいけど‥‥でもあたしはそんな事どうでもいいの」
「うん‥‥」
アモンはゴクリを唾をのみ込んで続きを待った。
「その後、ゲートを中和させてそれが消える途中で、僕にはやり残した事がある~って言って、テイちゃんがそこに飛び込んじゃったの」
「‥‥なん‥‥」
「‥‥」
これには2人とも絶句だった。
「イジンさんが戻ってこないから何かあったとは思ったけれど」
「でも、すぐにゲートが閉じちゃたからもうどうしようもなくて、グス‥‥」
アリーがたまらずに泣き出す。
「テイちゃん、いきなりあたしの事を嫌いだとか、みんなの事も嫌いだとか言い始めて変だと思ったの‥‥」
「‥‥なるほど、不器用なあいつらしいな」
「ま~た、アリーに心配かけてバカよね、とっちめに行かなくちゃ!でしょ?」
「だな」
「ありがとう‥‥2人とも」
翌日にギルドで詳細を報告すると、ゲート調査の名目で出現場所のあたりをつけて3人で旅立つ事になった。デリーとマッシュは今回は行けないという。いくらアリーの事でも地獄に飛び込むのは無理なのだと。それがごく普通の感覚なのだ。
「出現場所は、秘魔の洞窟のそばだと思う」
とアリーは言う。
果たしてアリーの勘はあたり、洞窟にほど近い森の中にダークエルフのキャンプがあり彼らを締め上げるとゲートの場所を聞き出せた。
「ダークエルフなんて見たのは始めてだったが、大したことはなかったな」
アモンは笑って言う。そしてゲートの場所まで行くと一度止まる。
「これか‥‥よし!行くぞ」
真っ黒く渦巻く円形のゲートを前にしてアモンが覚悟決めて言い、馬車ごとゲートに進んでいった。
一瞬でゲートを抜けて3人が目にしたのは薄暗い世界に、荒涼とした大地。遠くの方には野良の巨大モンスターが徘徊する、正に地獄のような光景だった。
「ふぅ‥‥想像以上にヤバい感じがする」
「アリー怖いよぉ」
「だ、大丈夫よ!テイちゃんが居るんだから!」
「おいおい、あいつを救出に来たのに頼ってどうするんだよ」
「そ、そうよね」
そうは言っても目の前に見える光景は酷く心細くなるのに当然だった。
「あ‥‥あそこにデカいガルーダが、こっちに気が付いたっぽいよ!」
「ヤバいな、逃げるぞ!」
アモンは到着早々馬車を疾走させて荒涼とした大地を逃げ出した。
ドドドドドドドドドドドド‥‥
「やっぱヤバいよ~~」
マサが泣きそうになっている。
「これが冒険のだいご味だろうが、あっはっは」
アモンは強がって笑っていたが、顔は笑っていなかった。




