決闘
太鼓の合図のあと、大興奮する観衆の声援を受けて僕はやや緊張して前ににじり出る。
すると、巨漢の魔族はダッシュで飛び込んで来て右の猛打を放ってきた。
ブオン! ペチ‥‥
そいつが放つ僕の顔面への撃ち下しを、僕が簡単に左手の掌で受けると可愛らしい音が鳴る。
巨漢が不思議そうな顔をしながらも左右の連打を放ってくるが、全て同様にペチペチと受けた。
ブオン!ボボボボボ!
ペチ ペチペチペチペチペチ‥‥
その音が全てを証明するように、僕にとっては子供のパンチを掌で受けているような感触がしていて面白く、全く緊張も恐怖もない。
「あはは‥‥」
つい面白くなって僕は笑ってしまった。決闘中に申し訳なかったのだが、急に笑いの発作が出て自分でも止められなかった。
「いやごめんね、くくく」
「‥‥ならば!武技鉄斬足」
今度は足技の武技を使ってかかと落としをしてきたのでそれも簡単に手で払う。
「ほい」
パン、ドドーン!
僕の手で払われた足技は地面を抉り、その威力を見せつけた。同時に観衆から拍手喝采が湧く。
「そろそろこちらから行くぞ」
武技を使った巨漢が硬化時間にあり回復まで動けない間に回し蹴りを叩き込む。
ヒュドゴッ‥‥ドォン!
巨漢は腕でそれを受けガードしたがそのまま壁まで10m程吹き飛ぶ。
そこで観衆からどよめきが起こった。
「おい、なんだよあれ‥‥」
「もしかして伝説の格闘家なんじゃ?」
「とんでもない奴が来たな」
巨漢は壁にぶちあたり身体がしびれているようだったので突進してダメ押しの喧嘩キックをぶち込もうとすると、間一髪で避けられた。
ドゴーン!
爆音を発して闘技場の防護壁が吹き飛んだ。
「ひぃい」
周辺の観衆があわてて悲鳴を上げ逃げ出す。
「はぁはぁ‥‥」
見ると、素早く逃げ出した巨漢が肩で息をしている。硬化時間に無理に動いた反動だった。
「お、お前‥‥なにものだ、はぁはぁ」
「僕はイジンだよ」
息を苦しそうにしている巨漢に突進し、とどめの喧嘩キックを手加減してそっと放つ。
ダン!
「ぐふぅ‥‥」
ズン‥‥
ガードの上からみぞおちに入って完全に息がとまった巨漢は、膝から崩れ落ちて顔面を地面にめり込ませて気絶した。
ドーン!
そこで決闘終了の太鼓がなりあっさりと僕の勝利が確定した。
それからの闘技場は大騒ぎになってしまった。闘技場に殺到した観客で僕はもみくちゃにされ身動きができないのだ。
「ぎゃぁああ、素敵~!!」
「イジン様ぁああああ!」
「王子様ぁあ!」
主に黄色い声が怒号のように渦巻いて僕を囲む。若い女性の魔族、獣人族が押し寄せ僕に抱き着き、手を取られ、顔を撫でられキスをされて滅茶苦茶になった。
「ちょ、ちょっとまって、あああああ」
どさくさで体中を揉まれ最後は衣服をはぎ取られて行く。
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!‥‥
騒動を納めようと太鼓が何度も打ち鳴らされたがほとんど効き目はなく、僕は全身にキスの嵐をお見舞いされて悶絶してしまった。
「おおおおお、隠密!」
溜まらずスキルを使って透明になって逃げだすが、気が付いたらパンツ一枚になっていてそのまま逃走した。
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「とんでもない事になってしまった」
「当然じゃな」
パンツ一枚の僕を見たリアはにやにやしながら当たり前だと言った。
「いくらなんでもあれは酷いのでは」
「伝説級の強さを見せたのじゃぞ、女子が黙って見ているわけがないじゃろう、くっくっく」
面白そうに笑う。
「もしかして僕は外を歩けないようになるのでは?」
「そうじゃろうなぁ」
「ああ‥‥助けてリア様」
「実はワラワもそなたに抱き着きたいのじゃ、良いか?」
「えええ‥‥」
僕は諦めて服を着てリア様に抱き着かれた。




