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転光の儀


 魔王都に入ると僕はVIP待遇で迎えられた。

 魔王様に挨拶が必要か?とリアに訊くとその必要はないという。


「魔王様ってこの国で絶対的な存在だと思っていたのだけど」

「何をいうのじゃ、ワラワが絶対に決まっておる」

「へぇ~リアって凄いんだ」

「そうじゃぞ」


 リアは何か嬉しそうだった。


 その割には、内部の不穏分子の勝手な策謀をしらないとか、穴だらけのような気がしたが。


「ワラワにはこれから大切な仕事があるのじゃ」


 数年前から魔光石が採れなくなった代わりに、リアが魔光力を魔王都全体に補充する作業に没頭しているのだという。それを今日、僕にも特別に見せてやるから一緒にこいと呼ばれて同行したのだ。


 王宮の最上部にもうけられた神殿のような場所の中央に透明なガラスでできた容器が斜めに寝かせてある。そこには多くの管のようなものが接続されていた。


「そこで見ておれ」


 彼女はそういうと容器の扉を開け、水色の薄い衣を着たまま中に入った。その部屋の隅に居る神官のような者が機械のスイッチを何か操作し始める。すると容器の中に透明な液体が充満されていき彼女の頭まですっぽり覆った。


「溺れないのか‥‥?」


 中の彼女が頭をコクコクとして大丈夫だと答えて目をつぶる。


「では参ります」


 神官が言いスイッチを押した。すると突然容器が光りだす。


 シューン‥‥


 よく見ると容器の中で手を組み何かを祈っている彼女の身体から光が溢れ出し、液体に滲み出している。その液体は魔光を彼女から受け取って管を伝って流れていくように見えた。


 容器の中で光り輝いているリアは美しかった。この世のものとも思えないほど神秘的で神々しい。


 その”転光の儀”はそれから数十分ほどつづき終了した。


「リア様、もう十分です」


 神官が言うとリアが目をあけ祈りをやめる。液体は徐々に流れていき殆ど全裸に見える濡れたリアが起き上がる。


「ふぅ‥‥」


 神官に手伝われ起き上がると少しふらふらとしていた。


「大丈夫か?」

「うん、少し眠いのじゃ」


 リアは神官から暖かそうなガウンを着せられてそのまま寝室に直行した。


 寝室に入ると、すぐに着替えてベッドにもぐりこむ。


「これをやるとワラワは眠らねばならんのじゃ」

「お疲れさま」

「ワラワが眠るまでその手を握っていてくれぬか?」

「そんな事でよければ」

「頼んだぞ、ふぁ‥‥」


 彼女の柔らかく暖かい右手を握ってやっているとあっという間に眠りに落ち、安らかな寝息を立てた。


「可哀そうに‥‥」


 僕はリアが急に愛おしくなってしばらく手を握ったままそこにいた。


 彼女は国民に魔光を送るために体を張っていたのだ。




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