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桜色の唇


 なぜ僕が死ななかったのか、それは多分冒険者ですらないからだろう。もはやレベル1ですらないのだ。


 それはともかく死に立てほやほやのアモンに蘇生薬を飲ませる。非常に高価な薬だけどそれで蘇るのだから金の力は偉大だ。


「んん‥‥ああ‥‥ああ!」

「良かった、生き返ったな」


 アモンはむくっと起き上がると自分の身体を調べ見回す。


「大丈夫か?」

「あの骨の化け物はどうなった?」

「倒したよ」

「君がか!流石だな‥‥だが助かった、ありがとう」


 その後、2人で手分けして吊るされて骸骨野郎の保存食にされていた大勢の冒険者達を救出する。その中にアリーもいて優しく開放すると眠そうにして僕に抱きかかえられた。


 アリーの薄目で半睡眠状態の顔は妙にエロくて彼女の綺麗なピンク色の唇に吸い寄せられそうな誘惑に耐えなければならなかった。


「‥‥んん‥‥」

「おはよう」

「え?」

「元気なようだね」

「は!はい‥‥恥ずかしいです‥‥おろしてください」


 そっと下ろすと慌てて衣服を整える。


「あの、骨の怪物から助けてくださったのですね?」

「そういう事になるね」

「本当にありがとうございます」

「怖い思いをしたのだろうね」

「はい、大勢のオークに担がれて運ばれ、骸骨を見た時はもうダメかと思いました」

「可哀そうに‥‥」

「はい‥‥お優しいのですね」

「え!?いやそんなことはないよ!やるべきことを成しただけです、それでは僕はこれで」

「え、そんなに急がなくても‥‥」


 僕はごく自然にアリーとの会話を楽しんでいた自分に気が付き急に恥ずかしくなった。もう過去は捨てたなんて自分に言い聞かせてる割にすぐに忘れて夢中になる‥‥。


 他の囚われていた魔法使い達の救助に加わり、皆で洞窟を抜けて町に帰還する。10人以上の冒険者を救出したことで町は大いに盛り上がり、その晩は祝賀会となった。


「デーン、初の会合の手ごたえはどうでした?」

「はい、すべて順調です」


 酒場の主人のデーンに任せっきりで勝手に洞窟に救出に行ってしまったけど、特になにも問題なく会合はうまくいったようだ。


「良かった、それでもう一つ訊きたいのだけど、この町のギルドはどうなっているんだ?」

「はい、昔はあったのですが‥‥自然消滅しました」

 

 なるほど、それで町中探索してもギルドがないわけだ。


「それならばいっそこの酒場を拡張してギルドの出張所をつくってみたら良いかもしれないね」


 この町に来る冒険者のために情報の提供や仕事を斡旋したり、存在価値はあるはずだと思ったのだ。


「はは、それは賑やかになりそうですね」



 そして、それは翌日実行された。


 僕も町の人達と大工仕事を手伝い、酒場の壁をぶち抜いて床を張り、柱を立てて壁を巡らし、即席のカウンターまでできた。


「いや驚きました、イジン様は凄く力持ちなのですね」

「そう‥‥か、不思議なもんだな」


 自分では疑問に思わなかったがいつの間にかパワー系になっていたようだ。一人でデカい角材をいっぺんに運んだり、それを担いだまま屋根に飛び乗ったり。昔ならビビっていただろうことが自然にできる。


「少し調子が良いだけだろうな」


 僕は、ギルドの出張所ができただけで大満足だったので細かい事は気にならなかったのだ。



 それにしてもあの唇は惜しかったなぁ‥‥なんて、そっちの方が気になっていた。

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