覚醒〜レベルキャップ開放 推定レベル70
僕はテイジン、一応は冒険者だ。
生まれつきおでこに変な文字のようなアザがあり周囲から虐められたけど、幼馴染だけは僕を見捨てなかった。そんな幼馴染との冒険もついに今日で終わりになってしまう。
僕が昔から好きだったパーティーメンバーの美少女のアリーが心配そうに言う。
「きっと大丈夫よ!元気出してょ」
「ありがとうアリー‥‥だけどもう」
そしてついに今日、ギルドからも追い出されてしまう。
「おいテイジン、お前今日で20歳だろ?レベル1では免許更新はできないぞ」
「やっぱりダメだよね‥‥」
「そうだな、お前には無理なようだ」
ギルド管理官のバクーが冷たく言い放つ。このローメン帝国の冒険者ギルドでは20歳でレベルの下限が15と決めれていた。
20歳でレベル1だった僕は免許更新が出来ず、ギルドから追放されてしまったのだ……一度追放されると2度と再登録は出来ない。ギルド証を返してパーティーメンバーを振りかえると、アリー以外、僕を残念な生き物を見る目で見ている。
僕は冒険者レベルが1から全く上がらないのだった。それこそ、他人の何倍も努力して筋トレや武技習得に励み、あらゆる格闘術の習得に励んだ。だが全くレベルがあがないまま20歳を迎えてしまったのだ。僕のレベルは1で最高だった‥‥。
「は~‥‥」
ポケットをまさぐっても金もなし。行く当てもなく、途方に暮れてため息をつく。
ギルドを見回すと嘗て同期で入った仲間達が楽しそうに次の冒険についての話をしていたりする。彼らも今ではレベル20を遥かに超える中級ランクの冒険者達だった。
僕はギルドで笑いものだった。初心者パーティーですら、僕の噂を聞いてあざ笑うようになっていたのだ。それにおでこにある、この痣‥‥。生まれつきの痣だけど、犯罪の前科者に付けられる痣とよく似ているのだ。
これではどこも僕を雇ってくれない。
「いっそ死んでしまおうか‥‥」
目の前が真っ暗になり、幼馴染達の前を項垂れて通り過ぎるが彼らも僕に掛けるべき言葉が見つからない。ギルドを首になるなんて、普通はあり得ないのだから。
僕はそのままギルドを出て独り街を去った。
暗い事を考えて居るうちに自然と自殺の名所と言われる”死と再生の洞窟”に足が向いていた。
「ここなら楽に死ねる‥‥」
でも、その洞窟の前で声にだしたら急に怖くなって躊躇していた。
「はぁ~~僕なんて死ぬ勇気すらないんだ」
更に絶望的な気分になってその洞窟の入口に入った所で座り込んでしまう。そして、空腹も限界に達し僕は気絶したように眠り込んだ。
ピチャン‥‥ポチャン‥‥
どこからか優しい水の音色が聞こえる。
「ポチャン‥‥テイジン‥‥ポチャン‥‥テイジン」
「誰?誰か僕をよんだの?」
「ポチャン‥‥おいで」
その夢のなかで僕は優しい声に呼ばれて真っ暗な洞窟の中を進んだ。不思議と、真っ暗なのにどこにも躓きもせずまっすぐに歩いて声のする方に行く。
「テイジン‥‥テイジン‥‥」
「誰?」
ずっと奥に進むと光る扉のようなものが見える。声はそこからしているように聞こえた。
「あ、この先に行けば死ぬんだね、良かった‥‥もうなにも要らないんだ、命さえ‥‥」
「テイジン‥‥」
僕はなんの恐怖心もなく只、優しい声のする光る扉を開けて中に進んだ。すると、扉の向こうには大きな光の玉が浮いていて、急におでこが燃えるように熱くなって‥‥意識をうしなった。
ポチャン‥‥
「は!‥‥なんだ、夢か‥‥」
洞窟の奥から水の滴る音が聞こえてくる。
「あっつ‥‥なんだこれ」
夢から覚めるとおでこが熱くて燃えるようだった。
それに今まで感じた事のないような気持ちの高ぶりを感じる。僕はじっとしていられなくなり、立ち上がって洞窟の外に出て行った。