6 他の動物達
さて、キツネが人間の街でプレゼントを探していた時、他の動物達は何をしていたのでしょうか?
コマドリも逆さ虹のふもと街に来ていました。コマドリは歌が得意なので、人間の街でクリスマスの歌を覚えて帰ろうと思ったのです。
街をぐるりと飛んで、教会で神父さんがオルガンを弾いているのを見かけました。街の通りでは、あちこちの店から音楽が聞こえています。でもどれもコマドリが求めるクリスマスの歌とは違います。そしてとうとうコマドリは子供たちが楽しげに歌っている部屋を見つけました。窓の近くの枝に止まってしっかり聴く体勢です。
コマドリは知らなかったのですが、そこは病院でした。病気で入院している子供の部屋だったのです。ですが、わいわいガヤガヤ賑やかでとても楽しそう。コマドリが気に入ったのもそのせいでした。
「先生、また間違えたー」
「うるさいぞ!」
ピアニカって、知ってますか? 短い鍵盤に吹く所が付いた楽器です。吹く所が付いているんだから、吹かないと音は出ません。演奏しているのは、髭を生やした医者です。ところがこれがとんでもない下手くそ。おまけに間違えて子供に指摘されるたびに、口を離して言い返すものですから一向に進みません。でもねみんなとっても楽しそうなんです。
何度も何度も繰り返しているので、コマドリは曲を覚えてしまいました。途中で終わってばかりいるのに我慢し切れなくなって、コマドリは窓の外から歌い出します。
「やあ、綺麗な声」
「コマドリだ!」
「先生の伴奏より、よっぽどいいぞ!」
「うるさい!」
医者はぷりぷり怒っていますが、子供達は言いたい放題。しまいにはコマドリの歌に合わせて歌い出しました。子供達とコマドリの綺麗な歌声に他の入院患者達も耳を傾けています。
コマドリは最後までしっかり歌い切って満足すると、枝から羽ばたいていきました。子供達は大喜び。髭の医者と他の入院患者達もすっかり感心して、コマドリと子供達に盛大な拍手を送ったのでした。
所変わって、逆さ虹の森では、ヘビが美味しい物を探していました。
「美味しい物、美味しい物」
ヘビはクリスマスパーティーに美味しい物をプレゼントとして持って行こうと考えたのです。
ニョロニョロと這って誰かの卵を見つけました。
「じゅるり」
でも待てよ、と考えました。自分は卵が好きたけど、コマドリは卵を食べるかしら? キツネとクマは食べるかもしれないけど、きっとリスは食べません。アライグマはどっちでもいいや。
「探し直し」
またニョロニョロと這って、今度は沢山のキノコを見つけました。赤や黄色に紫、色鮮やかな綺麗なキノコが沢山です。
「これなら、コマドリさんも食べるかも〜」
ヘビはクリスマスパーティーに綺麗なキノコを持って行く事に決めました。
リスも逆さ虹の森でプレゼントを探していました。形の良い木の実を沢山集めています。自分の身体よりも大きな松ぼっくりも見つけました。
「大漁! 大漁!」
大満足の様子です。
ところで、肝心のクマはどうしていたかと言うと、アライグマをこっそりかげから見ていました。まあかれこれ一時間? いや、もっとでしょうか? 随分と長い事、アライグマの後をつけているのですが、未だに話しかけられないでおりました。
「あー。んー。なんて、話しかけよう」
図体の大きなクマがずっと付いて来ているんだから、普段だったらアライグマも直ぐに気が付いたでしょう。しかし、今はツリーの事で頭がいっぱいなので、周りへの注意が疎かになっています。
「どうしたらいいんだ! 見つかりたくないけど、自慢したい! 誰かいい方法を教えてくれ〜」
アライグマの叫びに応えてくれる動物は誰もいませんでした。