第1話
世界は理不尽だ。生まれた瞬間から弱者と強者に振り分けられる。
僕?僕はもちろん…………
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「ふぅ、ふぅ、ふぅ……。」
第一層で頻繁に出現するスライム種を息を切らせながら、やっとの事で倒した。
目の前に小さな核が転がっている。
「よしっ、こんなもんか。」
落ちていた核を拾うとリュックに放り込む。背中では、ジャラジャラと音がする程に貯まっていた。
「今日は、こんなもんだろ。」
独り言を呟くと出口へ向かって歩く。比較的、出入口に近い場所で戦っていたのもあり、すぐに外に出る。
まだ太陽が高い。真っ昼間だな。腹減った。
近くにあったオレンジ看板の牛丼屋に入り
「並、汁だく、卵。」
と席に着く前から呪文の様に唱えると
『はいっ、汁だく、卵です。』
と席に座る頃には、丼登場です。それをガツガツと掻き込む。
あっという間に丼は空になり、硬貨数枚で支払いを済ませて、また来た方へ向かう。
ダンジョンへ向かう訳ではなく、入り口前に建つダンジョン前役場に入る。
『換金ですね?』
いつもの顔のお姉さんに事務的な感じで言われると、お姉さんの前のカウンターに核が入った袋を置く。
『少々お待ち下さい。』
パソコンを操作して、バーコードの読み取り器の様な物を核に当てる作業を繰り返している。
『お待たせいたしました。こちらが換金した額になります。
よろしければ、こちらにサインを下さい。』
と金額の書かれた紙をこちらに向けて差し出してきた。
いつも通りの額なのを確認するとサインをした。
『はい。では、冒険者カードをお出しください。』
いつも通りの事に辟易とするが、これを望んだのは自分だし。
『では、お預かりします。………………入金をいたしました。お怪我のない様に無理なく、お続けください。』
言いながら、カードを返される。そのカードを財布に入れて、家に真っ直ぐ帰った。
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今日も無事に何事もなく、平和だな。
部屋で寝転がり、窓の外を見ると青い空に雲が流れて行くのが見える。
こんな平和な毎日ってサイコーですよね。1日の半分以上をダラダラと過ごせるんだから。
生まれてすぐに検査を受ける。
これは、全世界共通の常識で、ある数値が高ければダンジョンへの適応性があるとかで、冒険者となれる。
冒険者は、世界各地にあるダンジョンへ入り、魔物と呼ばれる生き物を討伐したり、鉱物や植物、または生物等を持ち帰る事で、金品に換金して生活していく事ができる。
冒険者の割合は、人口の1000人に1人。まぁまぁいるが、それでも貴重な人材だからか、換金率は高くて、僕の様に入り口付近でチマチマと半日もやってれば、1ヶ月で一流企業のサラリーマン程度の稼ぎになるし、たった数年間で年金が満期になる優遇措置も受けられる。
命懸けだからね。その位しないと冒険者資格持ってても冒険者しない人増えるから。
それでも冒険者しない人もいる。
第一層は、弱いスライム種が多数を占めるけど、たまに強いのが低層から上がってきてたりするからね。あっさりとゲームオーバーな人も居たりする。だから、冒険者をやらないって選択をする人も居るわけだね。命あっての物種ってやつ。
かなりの優遇措置を国がしてるのにも訳があって、ただレアな物を集めてる訳じゃなく、ありがちではあるがスタンピート対策も含まれる。ダンジョンと言う限られた空間に弱肉強食とは言え魔物が多数生まれれば、行き場を失った魔物が溢れるのが地上と言う訳。
過去にスタンピートによる大規模災害があったらしい。
と、まぁダンジョンに関わると色々あるんです。
そんな僕は、10代にして冒険者。あと少し冒険者として、やっていけば、老後も安泰と言う中級冒険者なのです。