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何かありましたら感想欄のほうへご一報下さい。

 ヴィルの奴が、作ってやった装備の性能を確かめたいといって聞かないので、適当に表で模擬戦の的になってやる流れになった。この機会に俺のこの『身体』にどの程度の戦闘能力が付加されているのか、確かめる意味合いもある。というか俺自身には全く格闘や剣術の知識はないんだが。


 身体が覚えている、とか無意識に身に付いた動きが出たんだ、とかそういった類の反応をこの手塩に育てたゲームキャラのアバターが勝手に繰り出すのだ。


 動きと意識が乖離しすぎていて違和感が半端ないので、このあたりもどうにかして最適化できたら良いのでは無かろうかと思い、ヴィルとのじゃれ合いに了承を出した。

 とはいっても宿屋の中庭にいって、棒切れでチャンバラをするだけだという話だが。

 適当に相手してやったら奴も満足するだろう。


 ヴィルの戦闘能力を確認する事も出来るし、悪い事はないしな。


 問題はこの格好で激しい動きをすると、いろいろ『見える』って言う事だが。

 まぁあれだな、現代の街中での出来事ならば問題アリだが、こんな場所で色々とモロ見せしても見る奴がいないか。


 中庭にて準備万端で鼻息の荒いヴィルに『待て』をしつつ、乾いた『宵闇の長手袋』を両手に填め込んで戦闘準備を完了させる。俺はその辺で拾った長い棒切れを剣に見立てて相手する事にした。


 取りあえずは防戦だけする形で、ヴィルの攻撃を回避する事に専念。

 いきなり攻撃に移るよりは体の動きが判り易いだろう。

 

「おーいヴィルよ、こっちからはしばらく手出ししないから好きに打ち込んで見てくれ」

「はい! 了解しました! それでは参ります!」


 普段使っている短剣の代わりに、右手に短い棒を握って構えたヴィル。


 軽いフェイントを混ぜつつ、素早い動きで此方の左斜め方向から間合いを詰めてくるのが確認できた。時間が間延びしているかの様な、何とも奇妙な感覚を覚える。


 恐らく物凄い速度で突っ込んできているのだろうけれど、此方に攻撃が届く間合いに入ったヴィルの動きは非常にゆったりとした物だ。というか俺がそう感じているだけなのだろうとは思う。

 普段から全部この動きで見えてたら、あまりの遅さに発狂して血管切れそうだな。


 ゆっくりと首元を狙って振りかぶられる棒を体を捻って回避、相手の勢いを利用してそのまま手を引いてグルリとヴィルを一回転させて地面に転がし、衝撃で顔をゆがめているヴィルの鼻を左手で摘む。


 この間、じつに0.1秒である。なんてナレーションが入りそうな動きだ。


 実際はどんな速度でこの戦闘が行なわれている事になっているのか、気になる所ではあるが。


「ぶぎゃ! うぇーやられましたぁ!」

「っていうか投げ飛ばされて、なんで嬉しそうなんだ?」

「やっぱりジルバ様は強いって再確認できたからです!」


 ヴィルの鼻から左手離すと、勢いよく起き上がりながらそう笑顔で答えてきた。

 コイツは何か直感系の能力でも持ってるのかね。犬だけに匂いで判るとか。謎だな。


 再度間合いを話したヴィル、棒を構えなおして今度は低い姿勢で突っ込んできた。

 足払いから仕留めに来る算段だろうか。

 ご丁寧にも、途中で左手を使い目潰し用の土を此方の顔面に投げ飛ばしてきた。実戦的だな。


 目に入りそうな土を顔を少しずらして回避、そのまま顔面に土を食らう事にする。

 とはいっても目を瞑っている状態だったとしても、恐らくヴィルの攻撃を回避する事が出来そうなきがする。まったくもってこの身体のスペックは凄いな。


 地面スレスレを掠るように繰り出される筈だったヴィルの足払いを、足が動き始める前に太もも辺りをグイっと右足のつま先で止めることで停止させ、バランスを崩したヴィルが強引に武器を振ってきたので肘の辺りをストンと受け止めると、勢いを其のままに後ろのほうへと転がして再度鼻を摘んでやった。


「うぇー! 全然私の攻撃が当たる気しませーん!」

「はっはっは、お前の目潰し攻撃は昨日見せてもらってるからな」


 その後、いろいろな方法で飛び掛ってくるヴィルをあっちへポイ、こっちへポイしながら相手してやる事に。その結果折角作った装備一式が土ぼこりまみれになるという弊害が発生した。


 ヴィルが言うには『馴染ませる為なので仕方ないです!』という事だったが。

 いちいち投げ飛ばして地面に転がさない方が良かったかな……まぁ後の祭りか。


 ヴィルの相手をし始めて少々時間が経過した頃、何やら中庭周りにある塀のスキマから誰かが覗いているのを感じる事ができた。恐らく数人固まって俺とヴィルの稽古っぽいじゃれ合いを見ている筈だ。

 ぎゃーぎゃー騒がしくしてたから、何事かと誰か様子見にでも来たのか。


 俺が塀の方へ気を向けているのに気が付いたヴィル、塀の方に視線を向けると誰かがそこに居るのに気が付いたようで、不思議そうに首を傾げるとそちらへと歩いていった。


「あのーそこに居るのは、どなたさまですかー?」

「わっ!? あのえっと!」

「やべぇ怒られる!? ごめんなさぃ!」

「だからやめよぅーっていったのにぃ!」


 ヴィルが塀越しに声をかけると、その向こうから恐らく子供であろう甲高い声が数人分聞こえてきた。

 村の子供達だろうか。あれか、俺や冒険者のヴィルが珍しくてコッソリ覗きに来たって所かな。


「ふふふ……怒りの鉄槌が下されるか否かは、アソコにいらっしゃるジルバ様のご機嫌次第だぞぅ!」

「おいばか止めろ! 何適当にあおってんだ!」


 無駄に子供達を恐れさせる様なたわ言を云い始めたヴィルの背後に駆け寄ると、お仕置きとして頭頂部をゴリゴリしてやる。アホな事を抜かした張本人は『あががが! 頭がぁ!?』と悶絶しているが、気にしない事にした。


「興味があるなら塀の内側に入って見てれば良い。そんな事で怒ったりはしないよ」


 塀のスキマに向かってそう声を掛けてみると、塀の向こう側で何やら話し合いが行われた様だった。

 話し合いが終わるのを暫く待っていると、何やら器用に塀にある狭い隙間の部分から、子供達がモソモソと宿屋の中庭に突入してきた。

 なんとまぁ、そこのスキマ通れるのかよ。あれだな子供限定の隠し通路だな。


 かくして女の子一人と男の子二人という観客を招きいれたヴィルとの模擬戦は、ヴィルの体力が尽きるまで続き、俺の全勝で幕を閉じる事になるのであった。


「はひー! もう動けませーん!」

「うむ、ヴィルお疲れさん。頑張ったお前には褒美としてこのジュースをやろう」

「やった! 果物たくさんジュースだ!」


 スタミナ回復効果のあるミックスジュースのパックを取り出してストローを突き刺し、地面に直に座り込んでいるヴィルの鼻先に差し出してやると、そのままストローを口にくわえて一気に中身を飲み始めた。

 不精しないで自分でパックを持たんかい。まぁあっという間に中身空っぽになったから良いが……


 ふと強い視線を感じたので、視線の先……ちょっと離れた場所にある庭石の上に座って此方を観戦していた子供3人に意識を向けると。

 興味津々な状態で、ヴィルが飲み干したミックスジュースのパックを見詰めていた。あーこれは。


「……お前達も飲むか?」

「「「飲むー!」」」


 綺麗にハモった返事を返してくる子供達。現金な奴らだなぁ……

 その後、ジュース以外にハロウィンのお菓子袋も取り出して子供達に食わせてやった。


 美味そうにお菓子を鷲掴みにして口に放り込んでいる子供達をボーっと眺めつつ、後ろに覚えのある気配を感じたので振り返ると、何時の間にかシュネーさんが新装備を身につけてヴィルと会話していた。

 うむ、我ながら良い装備作ったな。つや消しの入った落ち着いた白と黒の二色を基調にした革装備だ。ヴィルの時と同じで小物やインナーも同じテーマで一式作ってある。


「よく似合ってますよシュネーさん」

「ありがとうございます……それで、お疲れで無ければ私にも色々ご教授賜りたいです」

「模擬戦ですか? 良いですよ、ヴィル相手は殆ど動かないで終わりましたので」


 その後、子供たちのお菓子を補充してやりつつ、シュネーさんに対しては攻撃を回避するだけで無く、右手の棒で軽い反撃をする感じで模擬戦をすることになった。

 ある程度身体の動きと思考がかみ合ってきたかな……と思い始めた頃に模擬戦は終了。いやー何というか頑張ったな俺。

 あと、お菓子食いすぎだガキンチョ共。太るぞ?

 そして何時の間にか子供に混じってヴィルもお菓子食ってるしな。油断も隙もない。

一ヶ月以上間があいてスミマセンです。

こちらは本当ーに不定期になりますので……申し訳ないです。

それではまた次回。


※ 少々手直しをしました。

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