17
何かありましたら感想欄のほうへご一報下さい。
ひとまず思いついた事はやり遂げたので、ベッドへ仰向けに寝転がって再度スキル欄を開き、現在持っているスキルを眺める。この様な事態になってしまった訳だし、なにか日常生活系というか便利系のスキルを取得してみたいと思っているのだが。
このキャラは特殊なビルド故に装備品を自作しないと活動できなかった為、自分で武器防具の作成スキルを取得して育てていた訳だが。
それ以外に存在していた、趣味系や生活系のスキルがほぼ全滅状態という、女キャラクターとしては結構致命的な様相を呈しているのだ。料理スキル系に属する部分は壊滅的状態である。
この辺を育てるには時間が非常に掛かり、しかも携帯用の料理器材ではスキルを育てるのに限界がある為、レベルを高くする為にひとつ所に長時間拘束されなければならない、という他のスキルと同時に育てづらい難点がある。
まぁこの辺を心配していても、新しいスキルを取得する方法がこの世界にないと意味が無いのだが。
そもそもこの俺が持っている『スキル』という概念が、この世界でどの様な位置付けで判別されているのかが判らない。魔法はこの世界の説明をしている時に痩身の男が言っていた『魔法の存在するファンタジー風世界』という言葉どおり、日常生活にも使われる頻度で存在しているのは確認済みだが。
後でシュネーさんあたりにそれとなく質問してみることにしようか。
一応は俺が冒険者になるまでは一緒についてきてくれるという約束を得ている訳だし、時間はまだまだあるだろう。
そんな事を考えつつ、そういえば風呂に入りたいなぁなんて気の抜けた事を考えていたその時。
階下から物音が聞こえてきた……これは3人分の足音かな。
素早くスキル欄を閉じてマップを表示させ、シュネーさんとヴィルが未だ見回りの途中である事を確認する。となるとこの足音は俺が知らない人間だという事。下に居た筈の女将さんが普通に通したという事は危険人物ではない、と思うが。一体何の用事だろうか。
この宿の客は現在3人、つまりシュネーさんとヴィル、そして俺しかいないのだが。
もしかしたら新規の客という可能性も、僅かながら存在するが……流石にないだろう。
となると、シュネーさんが見周りに言っていると言う事を知らない人物なのかもしれないな。
女将さんがその事を訪れた3人に伝えているみたいだ。
その後普通に3人が階段に向かって歩き始めたのを感じた。まぁつまり、あの二人にではなく流れの傭兵である俺に用事がある相手だと予想できた。
特に気配や足音を気にして歩くような事をしていない相手だったが、余り早くに感知している事を悟られると怪しまれるかもしれないので、とりあえず気が付いていない振りでもしておく事にした。
まぁ扉が閉まっているので相手からは見えていないのだが。
ベッドに横になった状態でノンビリと待っていると扉が数回叩かれた。ご到着かな。
「どなた様ですか?」
「この村の村長です、お話をさせてもらっても良いですかね?」
村長? シュネーさんは説明が済んだといっていたけど、念のために確認にでも来たのかな。まぁ実際怪しい人物には変わりない訳だし。
ベッドから身を起こした俺は、一応緊急時に対応できるよう無詠唱で使える防御系魔法を数種自分にかけておく。まさかこんな狭い場所でドンパチ始めるような事は無いと思うが、警戒するに越した事はないだろう。
ぶっちゃけシュネーさんとヴィル以外は、全部敵という認識で良いと思ってるくらいだしな。
一度軽く深呼吸をして扉の止め鍵を外し、ノブを回して廊下に立っている3人の顔を確認する。
扉をノックしたと思われる人物が恐らく村長なのだろうか。
次に後ろに控えているの二人の顔を見比べる。
右にガッシリとした体型の男、それと対照的に左に立っている男は痩せ型だった。
後ろの二人は護衛か何かなのか、腰に剣と鈍器を帯びている。圧迫面接でもするつもりだろうか。
「あー、まぁ自分の部屋では有りませんが、良かったら中へどうぞ」
「それでは失礼致しまして……ほら、お前達も中へ」
「うっす」
「失礼しますー」
村長を先頭に3人が部屋の中に入ってくる。コレだけ人数が集まると意外と狭く感じるな。
先ほどシュネーさんが使っていた椅子を引っ張ってきて村長に勧め、俺はベッドに腰をかけて一体なんの用事で来たのかを確認する為に、じーっと見詰める感じで話を促す視線を村長に向ける。
俺の視線を受けた村長がゴホンと一度咳払いをすると、こう話を切り出してきた。
「えーそのですね、あなたが傭兵であるという話を冒険者様から聞きまして、えーその」
「何かマズイことでもありましたかね?」
どうにも歯切れの悪い言い方をし始めた村長に質問を投げかけてみる。
この村についてから今までずーっと大人しくしていたんだが、一体どうしたと言うんだろうか?
「その、ですね、今回の依頼に対する報酬の件についてなのです」
「……あー、なるほどねぇ」
その後の村長の説明によると、シュネーさんは俺とどういった経緯で出会ったのか、といった事や俺が危険な人物ではない事などを熱心に説明してくれたのだが、村から俺に対しても報酬を支払うのかどうかを決めずに宿に戻っていってしまったという事だった。
報酬の取り決めについて気が付くのが少々遅かったのです、と村長がペコペコ頭を下げつつ額をハンカチで拭いながら俺に謝罪してきたが。
ぶっちゃけると別に報酬は要らないんだが……
たぶん厄介ごとが片付いてから移動した先で薬の1本でも売れば小銭になるとおもうし。
シュネーさんに協力しているだけなので俺の報酬は必要ない、当初の金額で問題ないと告げると、ようやく村長はホッと一息ついた様であからさまに顔色が良くなった。
そんなにビビる事はないと思うんだが……傭兵ってそんなに素行が悪いのかね?
こりゃ早く冒険者の身分を手に入れたほうがいいな。
「それにしたって、俺みたいなの相手にそこまで恐縮しなくても良いんじゃないですか?」
「いえいえいえいえ! そのような!」
俺が何となく投げかけた言葉に過剰反応する村長。
うん……余りいじめると村長の胃袋に穴が開きそうだな。やめておこう。
「それで後ろの二人は護衛かなにかでしょうか」
「えーその、お気を悪くされたのならばどうかお許し頂けると……実は、先日村で雇った傭兵がそれは酷い人たちだったもので」
「なるほど……それでその警戒具合なんですか」
「二人がどうしても付いてくると言って聞かなかったもので……それにしてもジルバロート様が人柄の良い方で安心致しました!」
今度は俺をなにやら褒め始めた村長。そんなにプレッシャーを感じていたのか……
村の長っていうのも中々大変なんだろうか。
シュネーさんに支払うお金だって村の住民から集めた物だろうしな。
ある意味中間管理職風味なのだろう。胃袋に注意して頑張ってくれ。
その後『お休みの所すみませんでした、それでは失礼します』といって椅子から立ち上がった村長が後ろの二人を連れて部屋から退出して行った。
その際後ろの二人から微妙な視線を受ける事になった俺だが。
まぁあれかな、凄腕の傭兵っていう説明を受けてるんだろうが、こんな見た目だからの二人にはその言葉を信用してもらえてないんだろう。どうみてもタダの小娘だしな。俺が同じ立場でも信用できない。
まぁあれだな、凄腕って表現が当て嵌まるラインがどれくらいの位置にあるのかが判らんけれど。
3人を見送って扉を閉めると、今度こそシュネーさんが戻ってくるまでノンビリと時間を潰す事にした。




