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何かありましたら感想欄のほうへご一報下さい。

 いやーようやく武器を手に入れる事が叶って、ひとまずは安心と言った所だろうか。


 それでも、俺が未だにモンスターの命を奪う事に、抵抗を持っていることに変わりは無いのだが。

 でも、やらなければやられる事態に陥った場合は、躊躇っている暇など無いだろう……

 俺だって無駄に命を捨てるつもりは毛頭ない。


 俺のいたあっちの世界と違って、モンスターとの戦いが普通に日常として存在する様な世界みたいだし、最低限身を守るくらいは出来るようにならないと駄目だ。


 昨日色々と聞いたときに耳にした説明によると、冒険者の様なモンスターを相手に戦闘を行なう職業が必要不可欠と言われる位には、この世界はモンスターで溢れているらしいからな。


 そしてそんな事を考えつつ、今俺が何をしているのかと云うと。

 昨日寝ずの番をしたシュネーさんが少し睡眠を取りたいとの事だったので、周りで騒がしくして寝るのに邪魔にならないようにヴィルと一緒に部屋を出た。


 外に出ても仕方ないので、宿の一階にある食堂っぽい場所でヴィルの襟首辺りから、フンワリそよ風程度の温風を服の中に流し込んで温めてやっている。犬を駄目にする温風だな。


 現在の季節はと云うと、ヴィルの様子から察するに服一枚だと少々肌寒く感じる程度の温度、つまり秋口辺りじゃないかと予想している。向こうで言う10月半ばという所だろうか。


 俺はと言うと、この身体になってから色々なものに対する抵抗力が大分上がっているようで、これ位の気温ならば全く苦にならない。


 まぁ現在装着中の【精霊王シリーズ】装備が、耐久度が高く全属性攻撃に対して抵抗力を持っているからなのかも知れないけれどな。

 その変わりにこの義足は、他に俺が所持している義足に比べると、戦闘スペックが大分落ちるのだ。


 この世界に来る前に、殴られる事前提の稼ぎをしていた弊害と云う奴だな……


 この世界に存在するモンスターがどれ位の強さを持っているのか把握できていない今、身につける装備は本当ならば所持している装備の中で最高性能の物にしたいんだが。


 果たしてこの世界にゲーム内でいう所の『クラン制度』みたいなものが存在してくれているのか。

 なんというか、そこの所が非常に不安だ。


 無いなら無理やりソレっぽい物を作ってしまう位しないと、何時まで経っても装備を取り出せない事態に陥る可能性がある。


 このクラン作成に関して、まだシュネーさんに質問できていないんだよな。


 数時間ほどで起きますのでーなんてシュネーさんは言っていたけど。

 もっとゆっくり休んで貰っても問題無いと思うんだが。


 ヴィルもこうやって起きて警戒して……こいつ、もしかして寝てないか?


 椅子を二つ同じ向きに並べた状態で、人気のない食堂の隅で適当にヴィルを弄って遊んでいたのだが。

 ……反応がなくなっている気がする。


 とりあえず、ヴィルの肩口辺りから覗き込む様に横顔を見てみたが……

 やっぱり完全にスヤスヤモードじゃねぇか。


 うーん、適当に暖かい風を送り込みつつ犬耳やら尻尾やらを揉んで、暇つぶしマッサージしてやっていたのだが、効き過ぎたか?


 それは気持ち良さそうに、俺の前で椅子に座り込んだままグゥグゥ寝てやがる。


 食堂内で寝るたぁ良い度胸じゃねぇか。

 他に人がいないから良いものの、こういった場所で寝るのはご法度なんじゃないのか?


 カウンター向こうのキッチンで、なにやら料理を作っている最中の女将さんに視線を向け、両手を上げてブンブン振ってみる。


 鍋か何かをかき混ぜていた女将さん、俺の動きに気が付いたようでこちらを見て……

 ヴィルの状態を確認したみたいで、眉をひそめてビックリした表情をした後に苦笑いしていた。


 とりあえず、この駄犬は叩き起こす方向で行って良いか。


 俺は無言でヴィルにチョップをするジェスチャーを、女将さんに良く見える動きで実演してみる。

 女将さんは声を出さずちょっと笑うと、力強く頷いてくれた。

 やっぱり寝るのはアウトだよな。


 という事で。


「うぉらー! 起きんかこらー!」

「はひぃ!? 頭ぁ! 頭がぁー!」


 しっかり手加減をしたチョップをヴィルの頭頂部にゴリっと直撃させてやると、ビクンと反応して飛び起きる寝すぎな犬っころ。

 お前昨日の夜あれだけ睡眠取ったクセに、ここでも寝るとかどうなってんだ。


「物を食べる所で寝るんじゃーありません」

「う゛ぇー、すみませんー暖かくて気持ちよくなってしまってつい……」


 椅子の上で体を反転させ、背もたれに両手を乗せる形で逆向きに座ったヴィルが、ションボリとした顔で俺に頭を下げてきた。口元にはよだれの跡がある。


 そりゃまぁやる事も特にないだろうし、暇なのは判るんだがな。


 俺の方も、流石に人の目のある所でスキル確認を進める訳にも行かないので、やる事が無さ過ぎて困る位だからな……携帯用ゲーム機とかあったら良かったんだが。


「おーいヴィル、なにか暇つぶしにやる事とかないのか?」

「んー?……特にないですねー?」


 俺の言葉を受けて考える事数秒。返ってきた答えがこれだった。


 無いんかい! あまりに即答してきたのに思わず俺の右手が迅速に反応して、無言でヴィルの頬っぺたをグイーっと伸ばしてしまった。

 あまりにも自然に俺の手がヴィルの顔を横に伸ばし始めたので、全く回避行動を取れなかった怠惰犬っころが『んぅえー!? なぜでふかー!?』と涙目で俺に訴えかけてきている。


 いや、何でだろうな。のへーっとしたお前の顔を見て、ついやってしまった感じだろうか。


「こういう時、何か暇つぶし出来そうな素敵行動を俺に提案するのが、お前の仕事だろう」

「ひえええ!? 難易度高いですよぅ!?」


 俺の右手から頬っぺたを奪還したヴィルが、手で顔を擦りつつ俺の言葉に驚愕している。


 そうは言ってもな……この世界での暇つぶし行動知識と云う角度で見た場合、俺よりはお前の方が絶対に妙案を思いつく可能性が高いと思うんだが。ヴィルに期待したら駄目なのかもしれん。


「本当になにもないのか?」

「思いつくような事は無いです……ご主人様がお休みで私一人の時とかは、鍛錬したりして時間を消費したりしてましたし……うううすみません」


 その後続くヴィルの説明によると、本当なら今朝の時点でこの村を出発する日程だったらしい。

 まぁイレギュラー的モンスターが存在して、色々と予定が狂ってしまった訳だな。


 そういう理由も有って、この村で何かをするなんて予定自体が無かった感じか。


 こんなに暇なら、あっちの世界なら即ネトゲを始める勢いなんだが。あーゲームプレイしたいぜ。


 等と俺がボケーっとゲームについて夢想していると、ヴィルが何か思いついたようにハッと俯き加減だった顔を上げて俺の手を掴み、笑顔で話かけてきた。


「な、ならば、私と一緒に村をお散歩などするのはいかがでしょうか!?」

「却下」

「ふぇぇええええ! 駄目だったぁああ!」


 何故にわざわざ、冒険者じゃない余所者は帰れ的な目で見られるのが確実な状態で、村の中をお前と歩き回らんとイカンのだよ。

 絶対歩き回ってないで大人しくしてろ! っていう目でジロジロ見られるに決まってるだろうが。

 俺は招かれざる客なんだから。


 このまま宿屋でそっと時間が過ぎるのを待つ方が、絶対良いに決まってるだろう。

 ここの女将さんは。職業柄俺みたいな胡散臭い相手にも寛容だろうけどさ。


 そもそも、俺の存在をどういうった風にシュネーさんは村長さんに伝えたのか。

 そこの所を後で聞いてみないと、落ち着いて外の空気なんて吸えないぜ。


「それじゃー、えーっと、えーっとぉ」

「ああー、まぁ無理に決めなくても良いからな?」

「そ、そうですか!? はひぃー……」


 椅子の背もたれの部分にオデコをゴリゴリ擦りつけながら、延々と唸り続けていたヴィルを止める意味合いも籠めて、暇つぶしに関する思考を停止する許可を出してやると……


 ぐでーっと潰れるかの如くため息を吐いて、椅子の上で目を瞑るヴィル。

 考えすぎでバテたらしい。


 んー、なら俺が適当に軽い時間潰しのネタを提供するか……暫くしたら昼食を食せるだろうしな。


 女将さんがテキパキと、良い匂いの漂う料理を作っているのを視界の端に収めつつ、俺からヴィルに一つ暇つぶしの提案をしてやる。


「ならば俺がお話を一つお前に聞かせてやろう」

「お話ですか? わー! 嬉しいですー!」


 俺の声を聞いたヴィルが、途端に元気になって両手でパチパチと拍手をしている。

 知恵熱は大丈夫なのかお前。


「お前に聞かせるのは『ハチコウ』というヤツの話だ」

「ハチコー? ですか?」





「う゛ぇぇぇぇ! ハ、ハチコーは犬人族奴隷の鏡ですぅ!! 私も見習わねばぁ!」


 俺の記憶だけを頼りにした『新説 冒険者ウェノーと犬人族奴隷ハチコー』を聞いたヴィルが、両目からボロボロ涙を零しながら、俺の肩をビシバシと叩きつつそう叫んでいる。ええい騒がしい。


 まさかここまでの反応があるとは思わなかったぞ。

 大分前に映画か何かで見た映像知識を、適当にオマージュしつつ色々と俺的改変を加えてソレっぽく語ってやったのだが。


「お、おう……そうかそうか、とりあえず落ち着けヴィル」

「おほほぅ!? くっ首は敏感だから優しくして下さいでありますぅ!?」


 あまりにも煩いので首根っこを掴んで揉み揉みしてやると、ヴィルが椅子の上で両手をワタワタしつつ悶絶して大人しくなる。


 女将さんがカウンター向こうで、声を押し殺して笑っているのが見えた。

 あぁー煩くてすみません。女将さんコイツ昼飯抜きで良いっすよマジで。

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