2話
2話目です。
私がこの世界に来て25年が過ぎた。
この世界での私の名前はアイリーナ。
もともと貴族だったので、ファミリネームはあったのだが、家を出る時に捨てた。
嬉しいことに、この世界では私は美少女だ。うん。
黒髪のショートで、赤目。
しゅっとした小顔で童顔。あ、そりゃ15歳で成長止まってるから当たり前だよね。
それでね?私は今、冒険者の仕事をしてるんだ。
具体的にいうと、護衛の仕事かな。
冒険者っていうのは、日本でいう何でも屋、万屋みたいな職業なんだ。
依頼人が、冒険者ギルドに依頼を出して、その依頼を冒険者が受けるって形。
もちろん、個人の技量がわかるように、ランク制度を取り入れてる。
F、E、D、C、B、A、Sランクとある。
この世界の平均ランクはDで、そのランクまで到達するのに、10年かかる。
ま、それもこの世界の戦闘の水準が低いからってのもあるけどね。
大体、私の元の世界、地球ね。での自衛官だと、Cランクまで行くはずだよ。魔法を使えない自衛官ですらこの世界の水準より高いのだ。もし、自衛官が魔法を持ってこの世界へ来たら、余裕で征服しちゃうだろうね。けど、この世界にも強い人たちはいる。Bランク以上の人たちだ。
Bランク冒険者は、独りで自衛隊の小隊並の力を保有してる。それだけでも驚異だけど、Aランク冒険者はそのさらに上、一国の軍に値する。
敵対したくない存在だね。ちなみに、Sランク冒険者は、人外レベルだって。はは。
前世と違い今世では働き者だよ?
今も護衛の仕事を受けたから、護衛対象者の場所に向かってます。
あっ、焼き鳥だっ!美味しそー…美味しい!あっ!焼きとうもろこしだっ!美味しそー…美味しい!あっ!メロンだぁ〜美味しそ〜…美味しい!
あ、買い食いしてたら、時間がっ!
でも、私可愛いから許してくれるはず!
「おい。お前が護衛か?」
「そうだけど、守ってくれる人に対して、その口の聞き方はないんじゃないかにゃ?」
「にゃ?」
「気にすることないにゃ。癖にゃ。」
「あ、あぁ。わるかった。俺の名前はゲルンディア。ゲンってよんでほしい」
「わかったにゃ。私の名前はアイリーナにゃ。こう見えて高ランク冒険者にゃ。一応…にゃ」
「猫耳、猫の着ぐるみ、猫の手、猫の靴…アイリーナ……猫少女ってお前のことか!?」
「しらないにゃ…」
しらない。そんなひとしらない。私は今年で30過ぎてます。精神年齢が…
【現実逃避はやめといた方がいいと思うがのぅ。その装備を着てから既に10年がたっておるぞ? ふぉっふぉっふぉ】
急に出てくるな! 暇神が!
【いつもお主を見ておるぞ?】
神よ、私はあなたの悪名を広めることにします。覗き魔として…
【じょ、冗談じゃよ……やめてくれんかのう…信仰がないと力が弱まるんじゃよ…】
ならこの猫装備どうにかしろよ!
【可愛いじゃろ?猫耳のカチューシャ、猫の着ぐるみ、猫の手、の形をした手袋、猫足の靴。最高じゃ。福眼じゃぁぁ!】
変態。
それより、一番困るのが、語尾についちゃう「にゃ」。
あれって、猫装備を着用してると、必ずついちゃうのよね…
【可愛いじゃろ?】
…
【わかったわい。じゃ、次は数年後になるかのう。】
もう来んな!
【ふぉっふぉっふぉ。それは嫌だのぅ。では】
そう言って神の念話が切れる。
はぁ。この装備、性能は凄い良いんだよ。けど、痛々しい。
見た目が15歳だからいいけど、心はおばさんなんだぞ!?三十後半で痛々しいことしてる元女子アナみたいなんだぞ!?
はぁ。つらいわ。
「それで。私の護衛は必要なのかにゃ?」
「お願いしたい。あの噂が本当なら、お嬢ちゃんはかなりのやり手だからな。」
「どの噂か知らないけど、どこまで行くにゃ?」
「ここから北にずっと言った場所にある国、フローデンス王国だ。」
え?
「どうしたお嬢ちゃん」
「ごめんにゃ。この依頼は蹴るにゃ。」
「どうしてだ?」
「寒いとこ無理にゃ。絶対にゃ」
この装備、寒さには耐性がないんだ。暑いとこなら、どんなところでも涼しいけど、寒いとこだと、体感温度を二倍にして感じさせてくるんだ。つまり、ほかの人にはマイナス5℃だとしたら、私にはマイナス10℃に感じるってことよ。耐えられないでしょ?
「依頼失敗になるがいいのか?」
「脅しかにゃ?残念にゃ。それだけじゃ私のランクに傷つかないにゃ。逆にこのことを言わなかった罰をギルドに与えてやるにゃ」
私はそう言って、ギルドへ戻るのだった。
「ちょっとにゃ!これ、北国だって聞いてないにゃ!」
「あの、それでは依頼失敗になります。ギルドカード出してもらってもよろしいですか?」
「それよりにゃ!グレンだすにゃ!」
「ぎ、ギルドマスターは今他のお客様の相手をしております。なので、それはできません。」
「へぇ…にゃ。小娘、新人かにゃ?」
「わ、私より年下に言われたくありません!」
ダメだ。この娘私のこと舐めてる。ま、私の格好なら仕方ないけどさ。
「ならいいにゃ、居場所ならわかるから自分で行くにゃ」
そう言って上の階に行く階段を上がる。
「そ、そこはBランク以上の方しか行けない場所です!」
「ねぇ、ディアにゃ、そこの小娘を叱っておいて欲しいにゃ。人は見た目じゃないってにゃ。」
いい加減鬱陶しくなったので、私の一つ下の受付嬢、ディアにお願いする。彼女は、私が冒険者となった一年後にこのギルドにやってきたのだ。その時から仲良くしてるので、私のお願いなら大抵聞いてくれる。
「ええ、わかったわリナ。」
「ありがとにゃ。今度おごってあげるにゃ。」
「え?フロンディアさん!?」
先輩の予想外の反応に動揺する小娘。
ま、何事も経験だからね。頑張れ若者よ…私もか!てへっ!
ギルドマスターの部屋までやってきた。
私は、ノックもせずに入る。
どごおぉぉっん!!!
吹き飛ぶドア。
え?ドアノブ?なにそれ?必要?
「リナよ…お前は毎回ドア壊すな!!!」
「なににゃ!グレンが依頼を確認しないからいけないにゃ!北国ならちゃんと書いて欲しいにゃ!」
私はそう言って依頼書をグレンに叩きつける。
「それとこれとは話が別だ!」
「別じゃないにゃ!グレンが確認してたら破壊しなかったにゃ!」
「嘘つけ!ことある事に破壊しやがって!金請求するぞ!」
「グレンがしっかりすれば、壊れることなんてなかったって言ってるにゃ!金にゃ?そんなのいくらでも払ってやるにゃ!」
そう言って、金貨を大量にばらまく。
猫装備って、全部がアイテムボックスになってるから、どこからでも出せるんだよね。お金なら困らないぐらい持ってるから、この部屋いっぱいにばらまいても、支障はないよ。
「ばかか!金貨一枚で十分だわ!」
「とか言ってちゃっかり数枚ポケットに入れてるにゃ!貧乏グレンにゃ!言いふらしてやるにゃ!」
「そ、それだけはやめてくれ!!」
「じゃあ謝るにゃ。それで許すにゃ。」
「すまなかった…くっ」
「ふふっ。勝ったにゃ」
「くそっ…」
「はいはい。それじゃ、グレンは仕事してくださいね」
「ディアか。わかった。」
「それじゃ、私はほかの護衛依頼を受けるにゃ。」
そう言って部屋をあとにする。
誤字脱字がありましたら、感想にて報告お願いします
その他感想も頂けたら嬉しいです!