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6.突撃と回避と連行

あまり話が進んでいきませんねぇ



「いやぁ、酷い目にあった」

「無傷のくせによく言うよね」



 放課後。 

 特にすることのない僕と槙、柚の三人は、部室棟にある使われていない部屋に来ていた。二階の端にある一室で、机と椅子、水道、棚(特になにも入っていないもの)など一通り揃っている。それでいて他の生徒が来ることが少ないので、僕達のたまり場として使わせてもらっている。……いや、もちろん使用許可は得てるよ?



「いや、正直ずっとヒヤヒヤしてたぞ?」

「槙はもう少し運動しなよ」

「何度も言うな、何度も」



 いや、槙は言われても仕方ない。普段から必要最低限以外は体動かさないし。休みの日なんて家事終わったらあとずっと寝てるか読書してるもん。今度、柚と一緒に引っ張って無理矢理運動場にでも連れていこうか。



「最低限動ける程度の体力あれば、だいたいどうにでもなるだろ」

「さすがにボクより運動量少ないのはどうかと思うよ……」

「いや、…………」



 何かを言いかけていた槙が、言葉を切って左へ一歩。瞬間、



「そやああぁぁ!!」



 両腕を顔の前でクロスさせた楓ちゃんが、直前まで槙のいた場所に猛スピードでダイヴしてきた。

 盛大にスカッた楓ちゃんは、整列している机と机の間で受け身を取りながら床を滑走。部室の……部室棟にあるから部室で良いよね? 部室の壁の近くで停止して、振り返って槙に言う。



「――なんで避けるかなぁ!」

「避けなきゃ吹っ飛ぶからだよ!!」



 正論だ。もちろん槙が。


 僕達は、みんな何かしらの“能力”を持っている。今突撃してきた楓ちゃんの能力は“身体能力の強化”。これを使って、遅刻ギリギリでも無理矢理間に合わせたり、他の人にはできない短縮ルートを通ったり、僕や槙なんかにちょっかいをかけたりしているのだ。その他の用途に使われることは、ほぼ、ない。

 この身体強化の具合が実に強く、もろい壁だとただのチョップでヒビが入ることもある。全力は本人にもわからないらしい。

 そんなものをくらってタダで済むわけがない。そりゃ、かなり出力は落としてるだろうけど……あの勢いだもの。直撃して“吹っ飛ぶ”くらいならまだマシだろう。



「男なんだから受け止めるくらいの意気込みを見せなさい!」

「ふざけんな、俺が怪我して動けなくなったら誰が寮の部屋掃除すんだ!!」



 ……槙、それは確かに正論だけれども、論点がズレてると思う。まずは自分の身を案じるべきだと……っていうかごめんね、いつも掃除サボって!



「あー……うん、それは困るだろうね」

「だろ?」



 納得されちゃったよ……。



「というか、どうして槙や樂に突撃するのさ」

「あ、柚香やほー。そりゃ、避けるって信じてるからよ」

「避けること前提なんだね」

「避けなかったらどうする気なんだよ」

「んー……特に考えてないかな?」

「1度ぶっ飛んで大怪我してやろうか…………」



 そうしたら楓ちゃんも控えるようになるかもしれないけど、槙はしばらく布団から出られなくなると思う。



「まあまあ、結局当たらなかったんだから! この話はもうやめて、みんなで運動場行こ!」

「お前……体力有り余ってんなぁ……」

「ほらほら、早く早く!」

「うわおいやめろ、俺は行かないぞ! というかまだ文句言い足りな」

「あははははー!」




 楓ちゃんが槙の肩を掴んで、引っ張って部屋の外へ出ていった。よかった、僕の代わりにやってくれた。槙は運動場に連行された。



「ふふ、槙は災難だね。ほら樂、ぼーっとしてないでボク達も行くよ」

「ぼーっとはしてないよ!」



 微笑ましく見送ってたんだよ!

 まあ、なにかする事もないし。行かない理由はないよね。

 僕は連行された槙の荷物と自分の荷物を持って、運動場に向かうことにした。





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