第五話「神童の娘」
えと、こんにちは。私は、実お兄様の妹の神童実弥と言います。
2030年、元旦生まれの中学生3年生です。趣味はお話を書くことで、お兄様にもよく誉められます。嬉しいです。
お家は製薬会社のトップなので、お屋敷が広いです。お家には、沢山の使用人さんがいて、私の大好きな人がいます。
お母様は会社の女社長さんです。私と同じ、少し紫がかった黒髪を、綺麗に揺らして微笑みかけてくれる優しいお母様。私もいつかお母様のような人になりたいな、といつも思っています。
お父様は、一般家庭の生まれで、お母様と結ばれた人です。とっても大きくて、私とお母様を簡単に持ち上げてしまうのです。
お顔は女のひとのようで、長く伸びた後ろ髪をゴムで束ねています。でも、髪が伸びる前のお父様はお兄様そっくりなので、まるで双子みたいです。あと目の目つきもそっくりなんですよ。
お兄様は、最近私と話してくれません。少し寂しいけれど、お兄様の邪魔にはなりたくないので、我慢しています。でも、時折見せる柔らかな顔に、ついつい見たくなってしまって。覗き込んだら鋭い目で睨まれてしまいました…。
そして、お兄様と私の大事なお友達、花さん。
昔からご近所さんで、とっても仲が良いのです。小さい頃の花さんは、いつもお洋服を泥塗れにして、
「あーそーぼっ!!」
と、元気よく笑って遊びの誘いをしにきていました。あの頃の無邪気な笑顔は今も変わりません。最近は私もお兄様達も忙しくて、なかなか会うことがありませんが、登校時に友人の方々と楽しそうにお喋りしているところをよく見かけます。
お兄様は、私が花さんの話をする度に何故か不機嫌になってしまいます。多分ですが、照れ隠しなんだと思います。なんだかんだいってお兄様ったら、私が花さんの話を止めると急にそわそわしだすんですもの。
あ、あらお兄様っ!?何でもありませんのよっ?花さんのことが気になられているだなんて、そんなことは…っ
私は自室の中、訝しげに此方を見やるお兄様の前で、慌てて大学ノートを閉じた。