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第二話「早紀島 女神成長日記」

南能嶋高校には、女神がいる。

そんな噂を聞きつけ、我はこの学校の入試を玉砕覚悟で受けた。


セミロングの黒髪をさらさらと揺らし、白線の間を駆けるその白肌少女。彼女はまさに、女神そのもの。


だが驚いたことに、彼女は世界に誇る日本の製薬会社、「佐川サプリ」の御令嬢であったのだ。なんという悲劇。我には彼女と並ぶ資格がない。がっくり。


あ、あぁ。自己紹介が遅れてしまった。我の名前は早妃島さきじま有斗ありと。正真正銘、男であり、オタクである。



我は2次元だけでなく、3次元の美少女(ただし年上は範囲外だ)も愛している。だが3次元は我々オタクに冷たい。とにかく行われるイベントには必ずと言っていいほど、ブスが出る、でる、デル、DELL。


そして、我々のようなオタクにそのブスが寄ってくるのだ。よせ、やめろ。ただ、我々はコミュ障の所為で他人に反論ができぬだけなのだ…っ!!……うわっ、よせやめろ!頼むから、我に近づくな…。


……ふ、ふぅ…。失礼、少し取り乱してしまった。そろそろ、本題に入らねば。


南能嶋高校には陸上部の女神が存在する。我はそれ目当てでこの高校に入った。だがしかし!!


我が所属したクラスに、今まで見たことのない美少女がいたのである…!



花のように表情をほころばせる笑顔!毎度のごとく転ぶドジっこ!

男子を惹きつけるその天然さ!


(お前はどこぞのギャルゲーに出てくる正当主人公かああぁ!!)



…ハッ!しまった、また荒ぶってしまった。


まぁ、その女神は我の左斜め後ろの席ですやすやと眠っている。


彼女の名は櫻木花。至ってシンプルな女性であり、女神であり。同時にスタンダードな攻略対象でもある。



いつか、陸上部の女神は手に入れられなくとも、このスタンダード女神だけはこの手に……!!


そんな妄想を頭の中で再生して、シュミレーションをしていた我の頭に、分厚い辞書が



すっぱああぁあぁぁあああぁぁん!!



「うぽあああぁああぁぁぁああああああぁあああぁぁいぃいいぃ!!」



ページの多い辞書らしからぬ音が、我の脳をぐわんぐわんと揺らした。


「おい」


その衝撃に頭がついていかないまま、その場に立ち尽くす我の後ろで、鬼にもにたドスの低い声が響く。


彼奴の名は神童実氏。だが我は男に興味などない。

噂ではあるが、彼奴は「人間ブリザード」とまで呼ばれるまで表情が歪んでいるそうだ。ん?なにゆえ、同じクラスだというのに、顔を見ていないのか、だと?


ふ、愚問だな。我はオタクだと言っただろう。

つまり、コミュ症の我にとって、人間と話すことは無理な話なのだ。


「……気持ち悪いからその不愉快な視線をやめろ。目玉つぶすぞ」


ひぃっ。なんて理不尽。

だがしかし、我は彼奴に目も合わせていない。何故だ…?


その時、我はまだここ、南能嶋高で自分に幸福が訪れるとは夢にも思っていなかった。高校生活もじきに一週間が過ぎようとしている。我々の青春は、ここから始まるのである。




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