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第一話「ハジマリの春」

私の名前は櫻木さくらぎ はな。私には、好きながいる。

茶色の、えりあしが少し伸びた髪。眉間にしわのよった顰め面。

話しかければ冷たい言葉で返され、怒らせると背負い投げを喰らわされる。

そんな噂、そんな容姿。それだけ聞けば人は恐れ近づかないことだろう。

でも私は、彼のいいところをたくさん知っている。


「実君!またおんなじクラスだよ!!」

「うるさい黙れ鬱陶しい消えろ」


小さいころから一緒にいたのだ。分からないわけがない。

彼は神童しんどう みのる。彼の家は大きな豪邸で、大型製薬会社の御曹司であり、

次期一八代目の社長。

お父さんは普通の家庭の人だったみたいで、私が遊びに行くたびに快く迎えてくれた。

なんだろう、敷居の違いが感じられないからかな。実君のお父さんはとっても

話しやすくて人みしりの私でも話せている。

何となくだけど、実君はお父さんに似ていると思う。

顔とかはどちらかと言えばお母さんに似ているのになぁ。


「大体、何で僕が君と一緒にしなきゃならないんだ、まったく…」


そういって実君がため息をひとつ。

より一層眉間にしわを寄せた実君は、手に持っていた小説に視線をもどした。

そのまま、教室までスタスタと歩く。活字に目を向けたまま、悠々と歩けるなんてやっぱりすごいなぁ。

私はひょこひょこと実君の後を追った。


「なんだ。ついてくるなバカ女」

「だっておんなじクラスだもーん」

「ハァ…極度の人見知りは一体どうしたんだよ…」


あ。今私のこと気にかけてくれた。

実君の、あの他人を気にしていなさそうに見える態度は誰も受け入れてくれない。

だけど、こっそり他の人が困っているときにさりげなく助けてあげているところを、私はよく知っている。


「ホラ、行くんだったら早く行くぞ。僕はそんなに気が早い方じゃないからな」

「うん、知ってるよ。ありがとっ」


私は久しぶりにほほ笑んだ実君の顔を見て、そのまま実君の傍へとかけて行った。

南能嶋高校なのじまこうこうでの、私達の物語は入学から二日目に始まったのだ。






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