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パーティー会場での騒動2

イスに深く腰を掛けて、上を見上げるトアレ。

高い天井と豪華なシャンデリアが目に映る。


思えばメイリィのバイオリンを聴くのも久しぶりだ。

となりに住んでいたころや、孤児院に住んでいたころは毎日のように聞かされていたものだが。

あのころは他に誰も聴かせる人がいないからと言われて、しぶしぶ付き合っていたが、今はそう簡単には聴けないというのだから立場も変わったものだ。


屋敷の者たちによりカーテンが閉め切られ、パーティー会場は一気に暗くなる。

その中ステージのみランプが灯され続ける。

しいんと静まりかえった空気。


幕が開かれメイリィが登場する。

結い直された髪に、水色のリボン。

ステージ用の薄いシルクのドレス。二の腕や足を大胆に露出している。


ステージ中央まで進むと、目をつむり軽くお辞儀をする。

左肩にバイオリンを乗せ、ゆっくりと弓を置く。

そしてメイリィのバイオリンの演奏が始まった。


「・・・・。」


次々と織りなされる音色。

メイリィが弓を滑らすたびに、それが耳に入ってくる。


驚いた。

最後に聞いた時とは雲泥の差だ。

音楽には疎いトアレだが、その演奏に素直に聞き入った。

時折足踏みも交え、バイオリンを弾き続けるメイリィ。


多くの人の注目の中演奏は続き・・、そして終わった。

それと同時にパーティー客全員からの拍手があがった。


カーテンも再び開かれ、一気にもとの明るさに戻る。


メイリィはバイオリンを持ったままステージを飛び降りると、真っ直ぐトアレの所に向かう。


「どうだった、トアレ?」


「驚いたよ、うまくなったなメイリィ。」


その言葉にメイリィは得意げに言う。


「だって、毎日ずっと練習してるもん。」


「知ってるよ、働きもしないでな。」


そういってトアレは目の前にあったぶどうのジュースに口をつけた。


「もう、なんでそんな言い方するのよ。」


メイリィが苦笑いしながらトアレの向かい側に席に座り、自分もジュースを注いで、乾杯を求めてトアレの前に差し出す。

が、トアレはそれに答えず、何か考え事をしているように余所を見ている?。


「・・? どうしたの?」


「あ・・、いやなんでもないよ。」


我に帰ったトアレが慌て気味に返す。


「そう?」


メイリィはそう言うと、今注いだばかりのリンゴのジュースに口をつける。


「・・・・。」


なんだろう、このなんとも言えない胸に引っかかるような感じは。

そりゃあメイリィは昔からの親友だ。多少は執着もするさ。

だが今の演奏と周りの熱狂。あれを見ているとなんというか・・。

自分だけの親友だったメイリィがどこか遠くにいってしまうような、嫌な気分に・・。

いやいや何を考えているんだ。


首をふって頭の中の考えを無理矢理外にだそうとするトアレ。

その時、聞き覚えのある声がした。


「いやあ、メイリィ様。演奏に間に合わず残念でしたよ。」


「!」


最悪だ。

やっぱり来るんじゃなかった。


「しかし町長としての責務もありまして今日のところは・・。」


が、その人物はそこまで言って、メイリィの向かい側に座っているトアレを見つけ顔色が変わる。そう、ベネット町長キド・ラントである。


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