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限界社畜OLの異世界食堂〜終電を逃して作ったズボラ飯が、味覚喪失の最強騎士団長の胃袋を掴んで溺愛ルートに入りました〜  作者: 黒崎隼人


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12/12

エピローグ「そして、プロポーズは日常の食卓で」

 一年後。

 『食堂きまぐれ』は、アークライト王国の住人たちにとって、なくてはならない憩いの場となっていた。時には、梓と同じように道に迷った現代人が偶然扉を開けることもあり、二つの世界の人々が集う、唯一無二の場所として繁盛していた。

 アズサとジークフリートの関係も、穏やかに、しかし深く続いていた。看板娘のリリィも、少しだけお姉さんになって、アズサの仕事をしっかりと手伝っている。

 そんな、いつもと変わらないある日の朝食。

 現代日本が夜明けを迎える頃、異世界は清々しい朝を迎える。アズサが作ったのは、日本の家庭の味、焼き鮭と、ふわふわのだし巻き卵、そして湯気の立つお豆腐とわかめのお味噌汁だった。


「うん、美味しい」


 ジークフリートは、すっかり使い慣れた箸で、幸せそうに朝食を食べていたが、ふと、その箸を置いた。そして、真剣な顔でアズサの目を見て、口を開く。


「アズサ」


「なあに? ジークさん」


「この味噌汁を……俺のために、毎朝作ってはくれないだろうか」


「え? いいよ、もちろん。いつも作ってるじゃな……」


 言いかけて、アズサは言葉の意味に気づき、はっと息をのんだ。

 それは、彼らしい、どこまでもストレートで飾り気のない、でも心の底からのプロポーズだった。

 意味を完全に理解したアズサは、一瞬きょとんとした後、顔を真っ赤にしながらも、満面の笑みで頷いた。


「……はい、喜んで!」


 ジークフリートは安堵したように微笑むと、ポケットから小さな箱を取り出した。中には、シンプルながらも美しい輝きを放つ指輪が収められている。

 それは後日、彼が梓の買い出しに付き合って現代を訪れた際、深夜まで営業しているディスカウントストアの宝飾品コーナーで、「俺の未来の妻に贈る指輪が欲しいのだが、どれが一番強固で実用的か」と店員を困惑させながら、四苦八苦して選んだものだと知ることになる。

 アズサの左手の薬指に、銀色の指輪が、きらりと光った。

 窓から差し込む新しい朝の光が、新しい家族の門出を祝福するように、温かく食堂を照らしていた。

 二つの世界を繋ぐ食堂で、彼女の幸せな物語は、これからもずっと続いていく。

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