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第13話:再会の受付嬢、新天地での第一歩

お読みいただきありがとうございます!


今回から物語は第2編【街のデバッグ編】に突入します。 逃亡の果てに辿り着いた新天地『リ・デコード』。そこでレトを待っていたのは、意外すぎる人物との再会でした。


かつての街でレトに手を貸してくれた受付嬢セラ。彼女もまた、理不尽な組織の論理によって居場所を追われていたのです。 「追放された者同士」が手を取り合い、偽りの世界への静かな反撃がここから始まります!

 エリュシオンの街を脱出し、吹雪の隠れ里での修行を経て、レトとアイリスは南方の交易都市『リ・デコード』に辿り着いた。ここは王都から遠く離れ、複数の商会が実権を握る「中立」の色が強い街だ。聖女エレインの息がかかった騎士団も、ここではそう簡単には動けない。


「……マスター。心拍数の安定を確認。ここはエリュシオンに比べ、監視ネットワークの密度が低いです。ですが、長期滞在には公的な身分証明が必要です」


 アイリスに促され、レトは街の中心部にある冒険者ギルドへと向かった。指名手配犯である以上、正体がバレるリスクはある。しかし、冒険者ギルドは「過去を問わない」のが不文律だ。


 重厚な扉を開け、熱気に満ちたロビーを進む。そこでレトは、信じられない光景を目にした。


 受付カウンターの奥、山積みの書類をさばきながら、周囲の職員に鋭く指示を飛ばしている、見覚えのある栗色の髪の女性。


「……セラさん?」


 レトが呆然と呟くと、その女性――かつてエリュシオンのギルドでレトを助けてくれた受付嬢セラが、勢いよく顔を上げた。


「え……? 嘘、レト君!? それに、アイリスちゃんまで!」


 セラは手に持っていた書類を放り出し、カウンターを乗り越えんばかりの勢いで身を乗り出した。その瞳には驚きと、それ以上に深い安堵の色が浮かんでいる。


「どうしてここに……。エリュシオンがあんなことになって、あなたたちが『指名手配』されたって聞いた時、私……!」


「声が大きいです、セラさん」


 レトが慌てて口を抑える仕草をすると、セラはハッと我に返り、周囲を警戒するように見回してから、二人をギルドの奥にある応接室へと招き入れた。


 差し出された温かい紅茶の香りが、逃亡生活で張り詰めていたレトの心を解きほぐしていく。


「……災難だったわね、レト君。でも、生きててよかった。私もね、あの後ガストンの不正を暴こうとしたのがギルドの上層部にバレて、事実上の左遷させんでこの街に飛ばされたのよ。まさか、ここで再会できるなんてね」


「俺たちのせいで、セラさんまで……」


「いいのよ、あんな腐った街、こっちから願い下げだわ。……それより、これからどうするつもり? 聖女エレインは、あなたのことを『世界を呪う翻訳者』として国中に触れ回っているわ」


 セラの言葉に、レトは自嘲気味に笑った。真実を伝えたはずが、世界を壊す悪人に仕立て上げられた。その理不尽さは、今も胸の奥で燻っている。


「……汚名を晴らすつもりはありません。ただ、俺は俺のやり方で、この世界の『バグ』を直していきたいんです。たとえそれが、誰にも気づかれない小さなことでも」


 レトの瞳に宿る静かな決意を見て、セラはふっと微笑んだ。


「……変わったわね、レト君。前の街にいた頃より、ずっと強くなった。分かったわ、ギルド職員として、そして一人の友人として、あなたのことは私が全力でバックアップするわ」


 セラは立ち上がり、テキパキと偽装用の書類を用意し始めた。


「レト君のギルドカードは、以前のデータを私の権限で『抹消済み』にしておいたわ。今は新規登録の『レト』として、Fランクから再スタートよ。アイリスちゃんも同様ね。これなら、王都の照会システムにも引っかからないはず」


「ありがとうございます、セラさん」


「お礼なら、仕事で返してね。……ちょうどいい依頼があるの。この街の地下水道から、正体不明の『異臭』と『瘴気』が溢れ出していて、ベテランの冒険者でも原因が特定できずに困っているわ。これって、あなたの言う『バグ』なんじゃないかしら?」


 セラが差し出した依頼書。レトがそれを手に取ると、文字が黄金色に輝き、その裏側に隠された「真実の文字列」が浮かび上がった。


【クエスト:地下水道の異臭原因の特定】 【真実:古代遺物の『翻訳ミス』による、廃棄魔力の暴走】


「……間違いない。これは俺の仕事だ」


 レトはアイリスと顔を見合わせ、力強く頷いた。  新天地『リ・デコード』。信頼できる協力者との再会。レトの「街のデバッグ」という新たな戦いが、ここから静かに幕を開けた。

第13話を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


セラの再登場、いかがだったでしょうか! 勇者パーティが「利用価値」で人を判断するのに対し、セラはレトが「無能」と呼ばれていた頃から彼の人柄を見てくれていた、数少ない理解者です。そんな彼女と新天地でタッグを組む展開は、書いていて非常に感慨深いものがありました。


アイリスの偽装やギルドデータの抹消など、裏方でのセラのサポートは、指名手配犯となったレトにとってこれ以上ない救いとなるはずです。


次回からは、街に潜む「日常のバグ」を解体していく新展開。 「セラさんとの再会が嬉しい!」「新天地での活躍が楽しみ!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価★】をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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