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千集院創作芸術学院  作者: 綾高 礼
第一章「千集院創作芸術学院」

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1-4「読書制度と階級ボーナス」


「以上が学内の読書制度と階級ボーナスについてだ。二時間目は同じ教室で文章・描写基礎の先生が来てくれるからな。受講する生徒は残れ。では今週のHRはこれで終わる。片桐、ちょっと来い」


 坂上先生が言い終えたと同時に、チャイムが鳴る。片桐は舌打ちし、坂上先生と共に教室を出ていく。張り詰めた空気が一気に弛緩して、クラス内が騒がしくなった。

 綾人の席に、嵐と茉希歩が近づいてくる。


「なんか嫌な人」


 茉希歩はつまらなそうに言う。


「気にするな。ああいう奴はどこにでもいる」

「そ、そうだよ。それより二人共次の授業受けるよね?」


 嵐の言葉に二人は頷く。


「僕は今日全部授業を受けるつもりなんだけど」

「俺もだ」

「私も」

「じゃあお昼休みに三人で食堂に行ってみようよ」

「ああ」

「いいね」


 昼休み。文章・描写基礎の授業を終えた綾人たちはさっそく食堂に赴いていた。食堂は随分と広めで少しだけ生徒たちの列が出来ていた。


 三人はたぬきうどん(200Npt)を頼み、空いている席につくことが出来た。お腹が空いていた三人はずるずるとうどんを啜りながら、HRでのことを復習するように確認しあっていた。


「あれって要は学院専用のWEB小説サイト【千集院ノベル】で、1000文字読むごとと20Npt貰えるってことだよね。だから1万文字でだいたい200Npt。十万文字くらいの小説を読むと1000Npt貰えるっていう認識で合ってるよね?」

「うん、だけどちゃんと最低五百文字以上の感想を専用アプリに書き込んだ後、審査合格後にポイント反映されるって先生言ってた」

「でも実際その審査ってどれくらい厳しいんだろね?」


 嵐の声が聞き取りにくくなるほど、気づけば食堂にも生徒が増えて騒がしくなっていた。綾人はたぬきを齧り終えてから答える。


「感想合否の判断は、比較的に読んだか読んでいないかの基準で行われているって先生は言っていた。感想が多少稚拙であっても本人の階級とか学年などを考慮して、伝わればある程度認められるって。あと図書本など市販で出回っている通常本は、1000文字10Npt。千集院ノベルの半分だな。1万文字で100Npt。一冊読了後、同じように専用感想アプリに感想を書きこんで審査合格後、ポイント反映だろうな」

「でも小説読んでお金貰えるなんて凄いね……」

「あーちゃんノベルポイントね。でも単純に読書ボーナスは嬉しいな。私今度買いたいと思ってた新刊あったし。これに階級ボーナスも入れば……」


 茉希歩は、浮かれきった笑みでうどんを啜る。


「一応言っとくが俺たちはまだボーナス適用外だからな。ピラミッド型階級の上から【プロ、セミプロ、アマチュア】で、俺たちは今一番格下のアマチュアだ。アマチュアには何のボーナスもないだろ」

「さっき習ったから知ってるし。でもこれからノベルポイント頑張って貯めてセミプロ昇格券を買えば私達毎月10万Npt貰えるんだよ。食堂の行列もアマチュアの人たちより先を越せるし。ほら」


 茉希歩が指を指した一人の生徒は、明らかに長い行列を抜いていき、先頭に立った。だが誰も非難の声を上げることもせず、それどころかさもそれが当然のようにしている。


 綾人は、ノベルレンズの視点をその生徒に合わせる。


【九期生・三年二組・西山和樹『プロ』】


 ステータス情報が表示されるのを確認する。


「飯を食う順番も実力なのか。残酷だな」


 綾人は呟き、出汁を最後まで飲み干した。



 木金土曜日の通常授業と日曜日休みを挟み、月曜日の朝になった。


 新入生の生徒たちは、徐々に友達や授業など学院のシステムを肌に馴染ませはじめていた。元々小説が好きな生徒が集まっているので、趣味嗜好さえ合えば打ち解けるのは比較的安易な環境でもある。


 それは綾人たちも同様で、すっかり馴染みになりつつある近所の公園で待ち合わせをして登校する。ただ六組の生徒の中で、片桐だけはHR以来一度も姿を現していなかった。


 まもなく二週目のHRがはじまろうとしていた。

 先週よりもそれぞれの固まりが増えて、より騒がしいクラスに三人が入ると、勝俣はいつものように挨拶をしてくる。

 慣れたように挨拶を返し、他の生徒と坂上先生が同時に入ってきて最後に片桐が入ってきた。


 生徒たちが徐々に静まっていくのをそれぞれの固まりが察知し、緊張感に包まれた頃。


「出欠とるぞ。席につけ」と坂上先生のいつもの声が聞こえてくる。


 チャイムが鳴る。教室内で残響がこだまする。

 勝俣は片桐を一度も見なかった。片桐は不機嫌そうな顔で腕を組んで、足を机からはみ出すように広げていた。

 出欠を取り終わり全員の出席が確認された。


「先生。今日のHRはなにするんですかぁ」と勝俣はいつものような気楽さで聞いた。


「……勝俣。今日はとても大事なHRだ」


 坂上先生は、いつもより一層険しい表情で言い返した。勝俣もその感覚を肌で感じとったのか、黙って頷いた。

 クラスがさっと静かになる。綾人は気付かれない程度に片桐を見た。

 片桐は静かに笑っていた。


「では、本日より7月1日までを期間とした前期必修試験を開始する」

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