表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千集院創作芸術学院  作者: 綾高 礼
第三章「パートナー」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/32

3-5「書生会議」


 画面越しの映像は五分割されている。そこに映る五人の生徒は、終始無言で会話一つない。

 スマホを弄っている者、紙の本を読んでいる者、じっと目を瞑っている者、画面をぼんやりと見つめている者、明らかに苛つきを見せる者。

 そこから五分が経過し、時刻は二十二時五分になった瞬間、画面が六分割され新たな生徒が映し出される。


「きたきた。おぉ、なんかスッキリしてるぅ」と画面をぼんやりと見つめていた者が手を振る。


「チッ、おせぇんだよ」と苛つく者は悪態をついた。


「悪い、遅くなった。はじめよう」


 遅れてきた生徒は、抑揚の無い声で五人に告げる。その生徒は、両膝に両肘を置いて両手を合わせながら弄んでいた。

 それに合わせて全員が画面を見た。


「ではさっそく現状の確認から」と先程まで目を瞑っていた者が喋りはじめる。


 画面には、千集院蓮の詳細なプロフィールが映し出された。


「一人目は二年四組の千集院蓮。彼はさっそく一年時から頭角を表します。昨年七月に【王道】、九月に【探偵】の二冠達成後、十一月に行われた文豪戦に初挑戦。結果は圧勝で、当時二年だった西山和樹から【文豪】の栄誉称号を奪取。もう彼を親の七光りなどと呼ぶ者はおらず、その後自身でも研究会【千集院ゼミ】を設立し、一気に学院内での派閥を形成していきました。親と実力を考慮すればほぼ間違いなく彼は特進クラス出身者でしょう」

「能力は?」

「『刹那』『文感』『千里眼』の三つは確実にタイトル戦で見せていますが、まだ他にも能力を隠している可能性は充分にあります」

「というか〜蓮ちゃんが絶対リーダーでしょ〜」

「その可能性は高いかと、で二人目は一年三組の村咲四季子」


 画面は村咲四季子のプロフィールに切り替わる。本人の画像は、生徒手帳から拝借してきたものか、運転免許証のような雰囲気だ。


「彼女は本日行われた名人戦予選準決勝にて、一部『刹那』を行使する場面が目撃出来ました。あと文章を読んだ限り末文や所々の文体領域の癖に私は『纏綿』の前兆を感じ取りました」

「俺も配信されたのを見ていた。『刹那』は間違いないだろう。『纏綿』については詩的さで隠したがっているようだったが確実に持っているな。文体制御がまだ不確かなんだろう」

「ゼロがそう仰るなら間違いないかと。どうお考えですか、これは明らかな陽動だと思われますが」

「それもあるが、ノベルポイントの貯蓄というのが真の狙いだろう。この学院では小説家としての素質、実力、技量がかなりポイントに反映される仕組みだ。それ故に階級などのポイントで買えるモノの範囲が広い。どうせ今後も重要になってくるのだろう」

「ええ、その中でもタイトル戦は名誉とノベルポイントを手っ取り早く手にする最もたる例です。新人賞や文学賞などの賞レースと捉えて貰えばわかり易いかと。そしてここからは推測になるのですが、三人目は一年一組の」

「あー退屈だ。もう我慢ならねぇ。わざわざ分かりきったこと聞く為に俺の時間奪ってんじゃねぇよ。そんなもんはここにいるクソ共皆もう分かってんだよ」

「ブ〜ブ〜! クソにクソって言われるのちょームカつくんですけど〜」

「おい口を慎め、無能」

「瞋恚、俺を今度その名で呼んでみろ、先にてめぇからぶち殺すぞ」

「おい」とゼロが無機質な声で言う。

「無能、序列を乱すな」


 ゼロの無表情の瞳の奥には、無限の虚無が広がっている。


「チッ、クソが……」

「再度確認するが、我々が刺客として送り込まれた最大の目的は、千集院隼人の集団創作計画の破壊。これを阻止できない限り現状の出版業界のモラルは崩壊する。奴はエージェント契約を交わした世に認知されている大物小説家たちをいずれ全出版社から断ち切るだろう。そうして自分の手元に呼び戻す。奴は今、そんな化け物たちの集団を指揮する圧倒的指揮者の誕生を待っている。今の所それが恐らく息子の蓮だ。そうなれば言わずもがな大学小説の始まりだ。こうなってしまっては何も鳳凰社だけではなく、全出版社で働く多くの社員や出版関係者たちとその家族、更に既存の小説家たちの生活に終止符が打たれる。我々はそれを守る為の大義を背負っていると再度心得てくれ」

「ハッ。では今後の方針はどのように」

「とにかく特進クラス出身者の情報を徹底的に集めろ。時間はまだある。情報の量だけこちらが有利に動ける。逆に情報が相手に渡れば渡るだけこの中から一人ずつ誰かが排除されていくと思え」

「ゼミの一般組に関してはどうしますか?」

「放っておいて構わない。下手に尻尾を出すと掴まれる」

「ヘッ、随分と弱気じゃねえかよ。本来攻める側の俺たちが鼠みたいにコソコソしてろってか? てめぇもお気楽な友達ごっこで脳みそ蕩けちまってんのかよ、ああ?」

「そもそもお前はあれでコソコソしてるつもりなのか? フッ。まああれはあれで溶け込んでいるとも言えるか」

「あ〜! ゼロが笑ってる〜おっかしぃ〜明日雪でも降りそう〜」

「何かあればすぐに情報を回せ。すまないが瞋恚と無能だけは少し残ってくれ。他は解散だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ