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千集院創作芸術学院  作者: 綾高 礼
第二章「警告」

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2-3「アリバイ」


「何だこれ?」

「分からない! 朝来た時に黒板に三枚これが貼ってあった。それにA班の人たちは、N・Kの正体はB班の野崎さんだって決めつけてる。N・Kのイニシャルに当て嵌まるのが野崎さんしかいないって」


 綾人は教室に入り、自席に鞄を掛ける。不穏な空気が教室内に漂っていた。

 野崎の席には、茉希歩と勝俣が固まって喋っている。

 ちょうどその頃になって、片桐が教室に入ってきた。A班の男子の一人、曽根田が例のプリントを片桐に手渡す。読み終えた片桐に、曽根田が耳元で何かを囁いている。それを聞いた片桐は、ニヤッと笑って野崎たちのいる方を見た。


「おいおい投票操作なんて随分とクソみたいな手使ってくれてるじゃねぇかB班さんよ。ちなみにこのN・Kってのは野崎。お前のフルネームの栞菜と一致するんだって?」

「アタシがそんなことするわけないでしょ!」


 立ち上がった野崎は、青ざめた表情で懸命に言い返す。


「そうだよ皆! 栞菜ちゃんが不正なんてするわけない、それに誰がこんな出鱈目なプリント作ったの!? 私はそれが許せない!」

「そうだぜ、こいつの性格は確かに悪いかもしれないが不正なんて終わった真似はしねぇよ!」

「ちょっと勝俣君は黙ってて!」


 茉希歩に怒られた勝俣は、静かに後ろに下がった。


「お前たちのクソみてぇな友情ごっこにそうじゃないという根拠がどこにあるのか、それをここにいる者たちにも証明してくれよ? なあ皆?」


 片桐は、面白くて仕方ないといった様子で笑っている。生徒たちは、片桐と野崎たちを不安な面持ちで見守っていた。

 その時、窓際前列で静かに本を読んでいた天草が、物音を立てずに立ち上がる。

 野崎を見てこう言った。


「野崎さん、一つ気になることがあるんですけど」

「な、なに?」

「プリントに記載されているこの四月○○日、月曜日、午前十一時頃、どこで何をしていましたか?」

「何って……」

「たしかこの日は、一時間目がHRでその後は文章・描写基礎の授業でした。HRでは全員出席していましたが、二時間目には野崎さんと数人の生徒は見かけなかったと思います」


 野崎は焦ったように天草から目を反らす。


「……この日は、睡眠不足で頭痛が酷いから寮に帰って寝てただけよ。なに、アリバイ? ほんとにアタシを犯人扱いしてるの、皆? えっ、冗談でしょ?」


 生徒たちは誰も喋らなかった。野崎の悲愴を帯びた声だけが虚しく響く。


「でも野崎さんにもアリバイが無いのは確かです。誰かアリバイを証言出来る人はいますか?」

「そんなのいないわよ!」


 野崎は天草を睨みつける。

 茉希歩は、悲痛な眼差しを嵐と綾人に向けている。

 嵐は片足を前に踏み出した。


「も、もし野崎さんが仮に一人一万Npt渡すとしても限界があるよ! 僕たちはまだ入学して支給された十万Nptと読書でポイントを稼ぐくらいしか方法はない。それに一月も経てば、嫌でもポイントは減ってるはず。投票者を買収するとしても限度があるんじゃないかな」


 嵐は緊張した声を振り絞って言った。


「いや、それで充分じゃねぇかよ。例え数人でも投票者をコントロール出来れば試験結果に大きく響くのは目に見えてるからな」

「……それは、そうかもしれないけど。でもこんな中途半端な買収なんて……リスクが高すぎるよ」

「それはてめぇが決めることじゃねぇんだよ。N・Kが決めることだ。そういやてめぇ、B班のひょろがり班長だったな? まさか全部てめぇの指示なんじゃねぇだろうな? ああ?」


 片桐はどかどか乱暴な素振りで、嵐と綾人の前にまで詰め寄ってくる。


「どうなんだよ? なあ……答えろよ! ひょろがり!」

「ち、違う……僕はそんな……」


 片桐は187センチもある背丈を利用して、嵐を威圧するよう睨みつる。嵐の足元は、がくがくと震えていた。


「やめておけ。恐喝は罰金罰則だぞ」と綾人が静かに言う。


 それに反応した片桐は、ターゲットを綾人に向けた。

 綾人の顔面すれすれまで近づき「上等じゃねぇかよ」と迫る。


「まさかひょろがりじゃなくて、お前が野崎に指示したんじゃねぇだろうな? 答えろよっ!」


 綾人は何も言い返さずにただ黙っている。


「二人はそんなことしないっ!」


 茉希歩が泣きながら叫ぶ。教室中の視線が茉希歩に集中する。

 次の瞬間、片桐の肩に誰かの手が置かれ、無理やり引っ張った。


「それ以上うちの班員に近づくんじゃねよ」


 勝俣は怒り狂った形相で、片桐を至近距離で睨みつけている。


「なに勝手に触れてんだよ……てめぇ、おいっ!」


 反射的に二人は胸ぐらの掴み合いになる。勝俣の方も身長は182センチあるので、体格差にそこまで大きなひらきはない。


「やめてよ!」

「誰か先生呼んできて!」


 教室内の女子生徒たちが叫んでいる。

 HR開始を告げるチャイムが鳴った。

 慌てて入ってきた坂上先生が、二人の間に割り込んでいく。

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