自転車は、まだ乗れません
沙奈とは家が近所で小さい頃から、よく遊んでた。
誕生日プレゼントに自転車を買ってもらったって喜んでたっけ。
「ねぇ、あきと!お父さんに自転車補助輪付きだけど買ってもらったんだ〜」
「よかったじゃん!ずっとほしかったって言ってたもんね」
「うん、これから公園で毎日乗る練習しないと…あのね、お願いがあるんだけど、乗り方、教えてくれない?」
「えっ俺が?」
「だって、ほかに頼める人いないんだもん」
「でも、大人がいた方がいいよな、おばさんにも付き添ってもらえないのかな?」
「ん?私のお母さんってこと?」
「わかった、話してみる」
「教えるって言ってもなぁ…」
次の日、母娘揃って公園に、やってきた。
沙奈はピンクの補助輪自転車を押している。
「ごめん、お待たせ〜ってあれ?あきと、自転車は?」
「俺はいいんだよ、まずは沙奈が乗れるように見守ってるから」
「見守るだけ?」
「そうそう」
「明人くん、付き合わせてごめんなさいね」
「いえ、初心者はペダルに足を乗せないで、地面を蹴る練習からした方が上達が早いらしいですよ」
「まぁ!明人くん、物知りね〜」
手放しで褒められて、さすがに図書館で調べたとは言えない…
「そんなことないですよ」
「もう、2人で話しちゃってさ、で、私はどうすればいいの?」
「そうね、今の話だと、ハンドルを両手でしっかり持って、サドルにまたがってみて」
「はぁい、よいしょっと、こう?」
「そう、まだペダルには足をかけないで、地面につけたまま、蹴る!」
ガッガッ
「ほんとにこれでいいの?」
だって本で読んだしいいはず
「ねぇってば」
「えっ?うん、俺を信じろって」
「何回やればいいの?」
「焦らず今日は、これを繰り返して続きはまた明日だな」
「えーっ、つまんないよ、もうきっと大丈夫だから」
沙奈はペダルに足をかけようとして、バランスを失い、自転車ごとよろけた。
「危ないっ!」
「大丈夫!今度こそ、えいっ」
勢いをつけて乗ろうとする、でも
「あれ?おかしいなぁ?」
「まだ、早いんじゃないのか?」
「そんなことないもん!」
夕焼けこやけが響くまで練習は続いた。
あとで聞いた話だが、あれから一度も乗れずじまいで、新品同然のピンクの自転車は沙奈の妹が乗っているそうだ。




