名取の命令
「じゃあ、皆さん良いですか? この筒の中に割箸が6本入ってます! 1つは王冠マークが付いた箸で、あとは数字の1から5までが書いてますからねぇ〜!じゃあ、いきますよ〜!」
多賀城が6本の割箸を筒の中に入れ、無作為にシャッフルする。そして、その筒が生徒会長専用のデスクの上に置かれると、メンバーそれぞれがデスクを囲むようにして円形に陣取る。
そしてよく分からない緊張感の中、メンバーのそれぞれが手を伸ばし、割箸を握りつつ声を出す。
『王様だーれだっ!』
全員が一斉に割箸を引き抜く。引いた割箸に書かれていた数字は他人に教えないように伏せ、王冠マークが施された割箸を引いた者が王様となり、命令を下すことが出来るのだ!
「あ、あたし王様じゃん」
「うわ、名取さんが王様!? 変な命令しないでくださいよ!?」
「だから、あたしのこと何だと思ってんのよアンタは!?」
「ぐぬぬぬ、まさか理沙ちゃんに取られるとは……!」
王冠付きの割箸をクルクルと回しながら、名取はどのような命令を下すか考えていた。そして、ここから他のメンバーたちはどのような命令を下されるのか、そして自分がその番号を引き当てていないかという、二重のドキドキ感に包まれるのだ!
「で、名取……命令は?」
「そうですねぇ……まあ、最初なので無難なものでいきましょ。2番が4番の肩揉みで」
「あ、4番私だ! やった〜、肩揉み肩揉み〜!」
「2番は俺か……仕方ない。変な命令されなくて良かったよ」
「これが王様ゲーム……というものなのですか?」
「ああ。これを何回か繰り返していくだけの簡単なルールだ」
「そうですか……」
何か考え事をしている栗原を他所に、多賀城が生徒会長用の椅子に座る。そして、2番を引き当てた富谷がその背後に回り、ゆっくりと肩揉みを始めていく。
しかし、ここで簡単に終わらないのが王様ゲーム! もとい、これを持ちかけた多賀城深雪の策略なのであった!
「んっ……はぁんっ……!」
『!?』
「ど、どうした? い、痛かったか?」
「だ、大丈夫です……ちょうど良い強さで、はぁぁん!? あっ、そこっ、ダメっ……!?」
「た、多賀城先輩っ……!?」
富谷としては優しく肩揉みを始めたつもりだったが、それが思いの外ジャストミートしたのか、多賀城の嬌声が突如として漏れ出していく。そのあまりにも妖艶さを秘めた声に、周囲の面々は一様に赤面していく!
富谷の指が多賀城の肩に埋もれる度に、多賀城のくぐもった声が漏れていく。その声は次第に妖艶さを増していき、部屋の外から見れば如何わしい行為をしていると見られても仕方がない展開になっていた!
「そ、そんな変な声出すな多賀城! ただの肩揉みだろ!?」
「だ、だって、最近肩凝りが強くて、んぅぅんっ!?はぁんっ、あぁっ、そこっ、もっと……もっと強く!?気持ち良いっ、富谷くん、そこぉっ……!」
「副会長……? どうしてそのように顔を赤くされているのですか? まさか、卑猥な考えをお持ちではありませんよね?」
「そ、そんなわけあるか! そう、オレは冷静、冷静だ!」
「男子ってサイテー」
「どうして僕の方を見ながら言うんですか!?」
栗原が松島に、名取が古川に冷徹な視線を向けていく。松島と古川は必死に多賀城から目を背けようとするが、普段は見ることのない多賀城の妖艶な表情と声に、どうしても反射的に視線を向けてしまう。
そう、これが男としての性である!
「んぅっ、はぁっ、はぁぁんっ!? そっ、そんなにされたらっ、私っ、おかしくなっちゃうっ!? そんなにグリグリされたら、おかしくなっちゃうよぉぉっ!?」
「くっ、なぜだっ……!? さっさと止めれば良いはずなのに、手が止まらない!? ふっ、ふふふっ……ここが気持ち良いのか、多賀城? ここか? ほらっ!」
「あぅぅんっ!? そこっ、そこ気持ち良いのぉっ!? もっと、もっとたくさんしてぇ!?」
スイッチの入った富谷は多賀城の気が済むまで、肩揉みと称した何かが繰り広げられていた。そんな2人を、松島と古川は顔を覆いつつもついつい視線を送り、羨ましそうな表情を浮かべる。栗原と名取は、多賀城の女としての武器を有効活用している様を見て、小さくないため息をついていた。




