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告白サバイバル!  作者: レイチェル


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12/18

定期試験

 2学期制である築館学園には、年に4回の定期試験がある! それは内申点を決める上でも重要なことであり、何よりも学園内のカーストを決める上でも非常に重要な役割を持っていた!

 高校総体の県予選を難なく突破したバドミントン部や生徒会も例外ではなく、試験期間中は活動を休止して勉学に励む。そして、ここにまた新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!



※前回の定期考査(学年末試験)の結果

2年

栗原美琴(1位)

松島尚人(2位)

富谷慎之助(10位)

多賀城深雪(35位)


1年

名取理沙(1位)

古川優(25位)



「来週は定期考査前ということで、部活動の全てが休止となります。この生徒会も例外ではなく、生徒会活動も1週間はお休みになります。生徒会の名に恥じぬよう、前回よりも上の順位を目指してください。間違っても赤点なんて取ることのないように」


「うへぇ、定期考査かぁ……嫌な時期が来たよ……」


「多賀城先輩は普段から勉強してないからいけないんじゃないですか? 試験前だけ勉強しても無駄ですって。やるならマジで普段からやんないと、無理でしょ」


「名取ちゃんがいつにも増して毒舌だよ!? 私だって好きでこんな順位取ってるわけじゃないのにぃぃ!」



 1学年に300人以上の生徒がいるこの学園において、多賀城の35位というのも立派な数字である。しかし、それ以上に栗原と松島、それに2年では名取の成績はずば抜けており、他の追随を許さぬほどの勢力図を持っていた。

 そして、栗原と松島の戦いも、これが9回目の戦いとなろうとしていた。



「前回は会長が副会長に雪辱を果たして、合計4勝4敗の五分になりましたよね。うちの学年は名取さんの1強が崩れることはないでしょうし、注目なのはやっぱり3年生の行方ですね」


「まあ、内申に響いてくるからみんな本気でやってるんだが……この2人は違う理由で争ってるからなぁ」



 古川と富谷が視線を向ける先には、既に本日の生徒会の責務を終えて勉学に励んでいる2人の姿があった。栗原も松島も、まるで他者が話しかけるのを許さないと言わんばかりに、目の前の参考書を読み漁っていた。



「そろそろ前に出させて頂きますよ、副会長。私の前に平伏しなさい」


「ふん、何を言ってるんだ? 寝言は寝てから言うんだな。2年前の春に味わった屈辱、忘れたわけではあるまい?」


「むむむっ……!」


「ぐぬぬっ……!」



 他を寄せ付けるハイレベルな戦いが、この生徒会では定期的に勃発する。

 中高一貫校である築館学園において、ほとんどの生徒はエスカレーター式に高校へと進学した。栗原も例外ではなく、中学を主席で卒業し、新入生代表の挨拶も述べたほどであった。

 しかし、その栗原の牙城は、外部から進学してきた1人の男によって崩れ去ることになった。その名前は、松島尚人。反骨精神と己の地頭だけでエスカレーター式に上がって来た栗原たちを蹴散らし、1年1学期の中間試験で学年トップの座を撃ち止めた。栗原にとって、人生初めての屈辱であり、今でも恥ずべき黒歴史として残されていた。



「前回は会長が勝ったとはいえ、総合点数で1点差だもんな……これで勝った方が一歩前に出るとはいえ、ハイレベル過ぎるな。2位と3位の差があまりにも開き過ぎて、毎回張り出されるのが恥ずかしいレベルだぞ?」


「2年も同じようなものですよ。名取さんがあまりにもぶっちぎるから、2位以下がどんぐりの背比べ状態ですからね」


「別に、あんたたちがバカなだけでしょ? あんなの、普通に解いたら間違えるわけないじゃん。レベル低過ぎでしょ、金持ちのボンボンは。エスカレーター式だからって気抜いてんじゃないの?」


「そんな言い方酷くないですか!? 富谷先輩、名取さんに何か言ってやってくださいよ! テストの度にバカにされるんですよ! 僕だって、そんなに悪くない成績なのに!」


「ま、まあまあ……名取も外部入学で頂点まで上り詰めたやつだから、実力通りというか、な?」



 富谷の言う通り、名取も松島と同じく外部入学をしてきた人間であった。1000人近い生徒数を誇るこの学園において、外部入学をしてくる人間は1%程と言われている。つまり毎年2〜3人程度の割合であり、それが松島や名取であった。

 外部入学の試験は内部進学の物とは違い、かなりの力量を求められる。それこそ学年上位に君臨する者ですら、入学試験で不合格とされる場合が多数存在していた。

 そのため、松島や名取は己の学力を証明することで、この学園での存在価値を見出していた。全ては内部進学組に負けるわけにはいかないという、一種のプライドのようなものだった。そのため、松島と名取はお互いにシンパシーを感じる部分が多く、通じ合える部分も多い。他者を蹴散らし、己の存在意義を証明する。松島の場合は更に栗原というライバルがいるため、尚更負けるわけにはいかない戦いだった。



「そろそろ上位に食い込まないと、おじいちゃんに怒られちゃうよぉ! ねえ、2人とも! 私に勉強教えてよぉぉ!」


「普段から勉強していないのが悪いんですよ。名取さんの言う通りだと思います」


「一夜漬けなんかしても無駄だ。ましてや多賀城の頭だと、覚えた瞬間に前の知識が抜けていく」


「2人とも酷くない!? 名取ちゃんもそうだけど、何で私を貶めるときだけ意気投合してるのさ!? おじいちゃんに言いつけて、生徒会の活動差し押さえさせちゃうんだからねっ!?」



 結局、騒ぎ立てた多賀城を黙らせるべく、生徒会内で勉強会が開かれることになった。

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