Episode 8. 偽りの婚約者
「…と、いうわけで、アリス。エドワードを助けるための作戦、早速だけど、何か良いアイデアはある?」
セシリアは、星詠みの水晶に向かって、熱心に語りかけていた。
しかし、アリスの反応は、どこか鈍い。
「…ご主人様、本当に、それでよろしいのですか?」
アリスの声は、わずかに、戸惑いを帯びていた。
「もちろんよ! だって、エドワードは、これから、大変なことになるかもしれないんでしょ? 放っておけないわ」
セシリアは、悪びれる様子もなく、答えた。
アリスは、セシリアの言葉を、しばらくの間、沈黙して聞いていた。
「…わかりました。ご主人様の決意は、理解しました」
そして、静かに、しかし、力強く言った。
「では、エドワード殿下を、影ながら、お守りしましょう。そのためには、まず…」
アリスは、セシリアに、ある提案を持ちかけた。
「ご主人様は、しばらくの間、エドワード殿下の“婚約者”を演じ続ける必要があります」
「え?! 婚約破棄されたばかりなのに?!」
セシリアは、目を丸くして、アリスの言葉に驚いた。
「ご安心ください。表向きは、婚約破棄されたまま、セシリア様は、エドワード殿下に、深く傷つけられ、悲しみに暮れている… ということにします」
「なるほど… 周りの目を欺くための、偽装工作ってわけね」
「その通りです。そして、その裏で、私たちは、密かに、エドワード殿下を守り、彼を狙う敵の正体を暴くのです」
アリスの言葉に、セシリアは、深く頷いた。
偽りの婚約者。
それは、危険と隣り合わせの、命がけの任務。
しかし、セシリアは、少しも、怖気づくことはなかった。
むしろ、彼女の胸は、熱い闘志に燃えていた。
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