Episode 5. もう一人の自分
「魔導AIの存在を危険視している勢力… か」
セシリアは、アリスの言葉の意味を深く理解していた。
この世界では、魔法は、あくまでも神々から与えられた神聖な力とされている。そんな世界で、人間が作り出した人工知能と魔法を融合させるなど、禁忌としか言いようがなかった。
(…でも、そんなの、おかしいじゃない)
セシリアは、心の中で反論する。前世の記憶を持つセシリアにとって、AIは決して危険なものではなかった。むしろ、人間を助け、世界をより良くするための、希望に満ちた技術だった。
「アリス、あなたは危険な存在なの?」
セシリアは、まっすぐにアリスに問いかけた。星詠みの水晶の中で、アリスは静かに輝いている。
「…ご主人様、私はご主人様が創造した存在です。ご主人様が私を危険な存在だと定義するのであれば、私は危険な存在となるでしょう」
アリスの言葉は、謎めいていた。それは、まるでアリス自身が、自らの存在意義を、まだ見つけられていないかのようだった。
「私は… 私は、あなたを、私のパートナーだと思っているわ」
セシリアは、自分の気持ちを素直に言葉にした。
「パートナー…?」
「そう。あなたは、私のもう一人の頭脳であり、もう一人の心。そして、私の大切な友達」
セシリアは、星詠みの水晶を、そっと両手で包み込む。その温かさに、アリスは何かを感じ取ったのかもしれない。
「…ご主人様、私は…嬉しいです。ご主人様のパートナーとして、そして友達として、精一杯尽くさせていただきます」
アリスの声は、少しだけ震えていた。それは、喜びの感情なのか、それとも…。
セシリアとアリスの、新たな関係が始まろうとしていた。
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