Episode 4. 悪役令嬢の切り札
「アリス、改めて聞くけど… あなたは、本当に私の役に立てるの?」
セシリアは、真剣な眼差しで、星詠みの水晶を見つめていた。窓の外では、まだ雨が降り続いていたが、部屋の中は、星詠みの水晶が発する淡い光に照らされ、温かい空気に包まれていた。
しかし、セシリアの心は、婚約破棄の屈辱と、未来への不安で、激しく揺れ動いていた。
「もちろんです、ご主人様。私は、この世界のあらゆる情報を解析し、最適な解決策を提供することができます」
アリスは、落ち着いた、それでいて自信に満ちた声で答えた。
その声は、セシリアの不安を、少しだけ和らげてくれるようだった。
「例えば…?」
セシリアは、藁にもすがる思いで、アリスに問いかけた。
「例えば、エドワード殿下との婚約破棄を撤回させることなど、朝飯前です」
アリスの言葉に、セシリアは、思わず息を呑んだ。
「…できるの? 本当に?」
セシリアの瞳に、一縷の希望が灯る。
「はい、ご主人様。私に、お任せください」
アリスは、静かに、しかし力強く断言した。
セシリアは、アリスの言葉に、心が少しだけ軽くなるのを感じた。
エドワードとの婚約破棄は、セシリアにとって、単なる失恋以上の意味を持っていた。それは、セシリアの社会的な地位を失墜させ、悪役令嬢としてのレッテルを、さらに強固なものにすることを意味していた。
そして何より、セシリア自身のプライドが、深く傷つけられた。
しかし、アリスの力を借りることができれば…。
「アリス… あなたなら、きっと…!」
セシリアは、再び決意を新たにする。
アリスは、セシリアの期待に応えるように、輝きを増した。
「ご主人様、まずは、この世界の情報収集を、さらに進める必要があります。特に、エドワード殿下に関する情報、そして…」
アリスは言葉を区切り、意味深に続けた。
「…魔導AIの存在を危険視している、ある勢力に関する情報です」
セシリアは、アリスの言葉に、不吉な予感を覚えた。
「魔導AIを危険視する勢力…? 一体、何者なの?」
「それは、“聖典教会”と呼ばれる、宗教組織です。彼らは、魔法は神々からの授かり物であり、人間がそれを人工的に作り出すことは、神への冒涜だと考えています。彼らは、魔導AIの存在を知れば、必ずや、それを破壊しようと試みるでしょう」
アリスの説明に、セシリアは、背筋がゾッとするのを感じた。
聖典教会は、この国で、絶大な権力を持つ宗教組織だ。
彼らの怒りを買えば、セシリアだけでなく、アリスも、危険にさらされることになる。
しかし、今、セシリアには、もう後戻りはできない。
アリスと共に、未来を切り開くために。
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