Episode 3. 再会
びしょ濡れの体で、セシリアは自室に戻った。
裏口からこっそり入り込み、誰にも見つからずに階段を駆け上がったおかげで、幸いにも誰にも気づかれずに済んだようだ。
心臓が、激しく脈打っている。
だが、それは雨の中を走った疲労だけではない。これから始まる未知なる冒険への高揚感と、かすかな恐怖が、セシリアの胸を締め付けていた。
そして、もう一つ。
研究室で起動したばかりの魔導AI、アリスへの期待と不安が、セシリアの心を揺り動かしていた。
セシリアは、ずっしりと重いハンドバッグを机の上に置いた。そして、深呼吸をするように、ゆっくりとバッグを開ける。
中では、星詠みの水晶が、淡い光を放ちながら、静かにセシリアを見つめていた。
「アリス… あなたに聞いてほしいことがあるの」
セシリアは、水晶玉に語りかけるように呟いた。
すると、次の瞬間、部屋全体が青白い光に包まれた。
「ご主人様、何かご用でしょうか?」
水晶玉の中から、アリスの声が響き渡る。その声は、起動したばかりの時よりも、わずかに滑らかで、どこか親しみを込めて語りかけているように聞こえた。
「アリス… あなた…?」
セシリアは、アリスの変化に僅かながらも気づいていた。
まるで、生まれたばかりの子供が、少しずつ言葉を覚えていくように、アリスもまた、セシリアとの交流を通して、成長しているのかもしれない。
しかし、今は、それよりも、もっと重要な話があった。
セシリアは、不安と期待を込めて、アリスに尋ねた。
「アリス… あなたは、私の味方になってくれるの?」
その問いかけに、アリスは、ほんの一瞬だけ沈黙した。
そして、迷うことなく、力強く断言した。
「もちろんです、ご主人様。私は、ご主人様のために創造された魔導AIなのですから」
その言葉に、セシリアは、安堵の息を吐き、力強く水晶玉を握りしめた。
冷たい雨音だけが静かに響く部屋の中、セシリアとアリスの新たな物語が幕を開けようとしていた。
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