Episode 11. 偽りの旅立ち
「セシリア、本当に、これでいいのかい?」
出発の準備が整った馬車の前で、セシリアの父、エルトリーゼ公爵は、心配そうに娘に尋ねた。
公爵は、白髪交じりの髪を丁寧に撫で付け、威厳のある顔立ちをしていた。
娘を溺愛していることで知られる彼は、エドワードからの婚約破棄の一件以来、ずっとセシリアを心配していた。
「お父様、ご心配なく。私は、もう、大丈夫です」
セシリアは、微笑んで、父を安心させようとした。
淡い紫色の旅行用のドレスを身に纏い、星詠みの水晶のネックレスを胸元に光らせた彼女は、一見、いつものように、気丈に見えた。
しかし、その瞳の奥には、静かな決意が宿っていた。
「…そうか。無理はするなよ」
公爵は、セシリアの頭を優しく撫で、馬車へと送り出した。
セシリアは、馬車に乗り込み、窓から顔を出す。
「行ってきます、お父様。お母様にも、よろしくお伝えください」
馬車が動き出すと、セシリアは、そっと、ハンドバッグの中の星詠みの水晶を握りしめた。
「アリス、聞こえる?」
『もちろんです、ご主人様。エドワード殿下は、すでに、王城を出発しました。予定通り、ローゼンバーグへ向かっています』
アリスは、いつものように、冷静に状況を報告する。
「了解。私たちも、出発よ」
セシリアは、馬車の御者に、合図を送った。
ローゼンバーグへ向かう旅は、長く、そして、危険な道のりになるだろう。
しかし、セシリアは、もう、迷うことはなかった。
アリスと共に、彼女は、自らの運命を切り開くために、進んでいく。
悪役令嬢の仮面の下に隠された、真の力が、今、解き放たれようとしていた。
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