Episode 10. 旅立ちの前夜
セシリアは、夜空に浮かぶ満月を見上げながら、深呼吸をした。
窓の外には、静寂な夜の闇が広がり、遠くから、フクロウの鳴き声が聞こえてくる。
数週間後、エドワードは、ローゼンバーグへと旅立つ予定だ。
セシリアも、アリスの指示に従い、エドワードの護衛という名目で、同行することになっていた。
もちろん、表向きは、婚約破棄された傷心旅行という建前で。
「アリス、準備は、順調?」
セシリアは、星詠みの水晶を手に、問いかけた。
「はい、ご主人様。エドワード殿下の護衛計画、そして、彼を狙う敵に関する情報収集は、ほぼ完了しました」
アリスは、自信に満ちた声で答えた。
「ローゼンバーグでは、何が待ち受けているのかしら…」
セシリアは、少しだけ不安げに呟いた。
エドワードを狙う敵の正体も、目的も、まだ、何もわかっていない。
これから、セシリアを待ち受けているのは、未知なる危険と、想像を絶する冒険。
しかし、セシリアの心は、不思議と、落ち着いていた。
アリスが、そばにいてくれる。
それだけで、セシリアは、どんな困難にも立ち向かう勇気が湧いてくる。
「アリス、あなたを信じて、いいのよね?」
セシリアは、星詠みの水晶を、ぎゅっと握りしめた。
「もちろんです、ご主人様。私は、必ず、あなたをお守りします」
アリスは、優しく、そして、力強く答えた。
セシリアは、アリスの言葉に、安堵の笑みを浮かべた。
明日、セシリアは、悪役令嬢の仮面を脱ぎ捨て、新たな一歩を踏み出す。
それは、セシリア・フォン・エルトリーゼという、一人の少女が、自らの運命を切り開くための、壮大な物語の始まりだった。
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