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絶望の転移者

俺は異世界にいた。と言っても、その事について確証はあまり持てなかった。


ただ、空気感が間違いなく日本では無い何処かなのは確かだった。


「ちょっと!なんでまた元クラスメイトに会わなきゃ行けないのよ!ってかここどこ!」


という元委員長(今は大学でテニスサークルに入って青春を満喫中)が叫ぶと、つられてみんなもがやがやと喋り出す。


実際にここは広く冷たい大聖堂のような場所で、まぁ元いた俺の家より暖かいのは確かだ。


「ふむ。こやつらが異世界からの贈り物か?……ふん、軟弱そうなものばかりではないか!……」


目の前に突然光がともり、初老の男性とその後ろにかなりガタイのいい男とかなり魔性の美しさを発揮する女性が立っていた


ひと目でわかる。あれは王様というものだ


初老の男はゆっくりと目の前にあった玉座に座り、俺たちを見下ろしながら


「さて。貴様らに一つだけチャンスをやろう。……貴様らは異世界からこの地に呼び出された……いわば我々の道具だ。……ただ道具にも使い道というのがあってな、……そうだ。今から選別を行う」


まるでこちらをただの一般人としてしか見ていない目をしていた。

その後ろに立つ男が小声で


「王様、流石に彼らは力で我々に抵抗してくるかもしれないというのにその態度は……」


「あ?ゴミ共にチャンスを与えてやっているのはこっちだぞ?……ふん。それにあの愚か者しか引っかからない手口に引っかかって出できたヤツらには知性なんぞ求めていないわ。」

と呟いているのが聞こえた。


なんか俺らの扱いがかなり酷い気がする。仮にもこっちは異世界に呼び出されたはずだよな?……



「さて、貴様ら自分のステータスとスキルを1人ずつ述べろ。もちろんそれが使い道がなければゴミ箱行きだ。あぁ、安心しろ、しっかり使い道のある奴らは手厚くもてなしてやろう」


あ、やばい。と俺は直感的に判断した。

この初老の男はおそらく異世界転移者をただの駒として扱うつもりだ。

こういうのに着いていくと自分の人生がより一層惨めになる……


「ちょっと!私たちの扱いが酷いんじゃありませんか!?」


そう言って立ち上がったのは、確か体育委員長をしていた奴だ。もちろん名前なんて覚えていない


と、王が近くの近衛兵に目配せをし


「だいたい、私たちは呼び出さ……ひっ、な、何を………すいませんすいません!……」


普通に剣を首筋に突きつけた。当然ながらただの人間はこうするしかない。

もちろん俺も今の近衛兵の動きの手馴れた具合で分かった。


こいつらに逆らったら殺される。と


みんなそれがわかったのか、いっせいに固まってしまった。




──────「さて、まずそこの男。名前と能力、ステータスを教えろ。早くしろ?死にたいか?」



慌てて、指名されたやつが立ち上がり自分のことを話し始める。

「山田……は、遥斗です……えっとこの世界での名前はパーネルです!能力は『受けたダメージを魔力に変える』です。ステータスは、体力がBで攻撃力がC、魔力がAです。それ以外は……Dです…大魔法使いのクラスです!……これでいいですか?……」


「ふん、まあまあだな。まあいい、貴様には使い道がありそうだ……よし、近衛兵に従いあちらに行け。あぁ妙な真似をしたらお前の前でこの残りのやつを殺す。」


人はそういった脅しに弱いのだ。……確か野球部の元エースだった男は震える子羊のように歩いていった。


「次、その後ろのやつ。」


また1人呼ばれていく


「ほお、賢者か。かなりいいじゃないか……何より女、これがいいな……ステータスも全てA以上……よしお前もあちらに行け。」


「次!」


──────「ふむ、貴様が勇者か。まぁよい。民たちに伝えよ、勇者が見つかったとな。……あぁ安心しろ、勇者にはかなり特別な待遇が用意してある。……何よりこのステータス、素晴らしい。オールSSか」


「これであのにっくき魔王と魔族共を根絶やしに出来ますわね……王様」


先程まで我関せずを貫いていた後ろの女がそう言っているのを耳にし、あぁ魔王がいるんだ……とこの世界のことが少しだけ分かった俺は改めて自分のステータスを見る。


『名前、晴風(はるかぜ) 優輝(ゆうき)→『レイン=アビストス』

職業(クラス)『無職』

能力(スキル)『ガラクタに愛されるだけ』

体力C 攻撃力C 魔力E 武力F 幸運X

補足:武器の装備不可 魔法の属性:『無し』 以上』


うーん意味不明。まず何だよガラクタに愛されるだけって。


こんなステータスじゃ間違いなくゴミ捨て場行きだぞ俺は……


そうこうしている間に気がつくと次は俺の番だった。

俺は観念したように


「はるかぜ……あ、こっちの名前ではレイン=アビストスです。

職業(クラス)は無職……」


元クラスメイトからの嘲笑が聞こえた気がする。


俺は無視して続ける


「……能力(スキル)『ガラクタに愛されるだけ』……あとステータスはどれもC以下です。……あと補足で武器の装備が不可と、魔法の属性が無し。だそうです……」



沈黙が流れる。


そして、一言だけ王は口を開いた。


……「ここまでゴミなやつが出るとは……ふむ、利用価値もないゴミだし……そうだな衛兵!後で、ガラクタ置き場にでも投げ捨てておけ……次」


俺は終わった。と思った


何せ先程から後ろの……元クラスメイト達からずっと笑われているのだ。


俺は指定された場所に1人で座る。

前を見ると、どうやら騎士の中でも非常に偉そうな人が先程選ばれた人たちを連れて行っていた。

あれは属に言うエリートだろう



「……さて、約一名を除き皆はこのレイブン帝国で利用価値が見つかったものたちだ。……ふむ、そこの女とそこの女、後で王広間にこい。……良い服を与えてやろう……そう、良い服を……な……では後のことは王子、頼むぞ?」


そう言い残すと、威圧感を与えていた男はゆっくりと歩いていった。

初老の男の後ろで、かなり苦虫を潰したような顔をしていた男……つまり王子が


「……それでは皆様、改めて異世界へようこそ。歓迎致しましょう!……約一名を除き。」


やめてくれ、その言葉は俺に効く。

ひとりぼっちは寂しいのだ。そう、結局俺以外はみんな利用価値がある……とか何とか言われて服をプレゼントされていた。


肝心な俺は未だにワイシャツとスーツの下だけだ。


すると、どうやら自分たちが少しだけ上の立場に立てたのが嬉しかったのか、はたまた抑圧された空気が無くなったからか知らないが


「あたし達より利用価値のない雑魚がいるってさ〜」「ほんと、誰だろうね?……ぷぷ……」


「まさか俺みたいなデブより利用価値のないやつがいるなんて、異世界は広いなぁ……」


「ふへへ……あいつあまりにも情けない顔と格好してるからなあ……まあ当然っしょ……」


「なんだっけ?『ガラクタに愛されるだけ』だっけ?は!……アンタみたいな破けた雑巾みたいなやつはガラクタが恋人になるんだろうね!」


「あいつガラクタにしか好かれねえってことだろ?……最高じゃん、まじでお似合いだぜ?」



散々である。

無論反論するべきだったのだろうが、もう既に精神から疲れ切っていた俺は、フラフラと立ち上がり衛兵に連れられて行くしか出来なかった。



道中、衛兵にさえ罵倒された俺はまるでゴミを扱うかのようにゴミ捨て場に掘り投げられる。


同時に、ゴミ山のひとつが雪崩て俺を飲み込み、なんとか這い上がった時には既に誰もいなくなっていた。



ガラクタ置き場とは名ばかりで、実際は捨てられたゴミの悪臭が花をつき、俺は口から吐きでるものを止められなかった。


「……ちくしょう、何が異世界だ!……こんなの前より酷くなっているじゃないか!?……なぁ、なぁ!……誰か……俺は何をすればいいんだ!……何をすれば……世界が俺を愛してくれる……ってんだよ!?」


俺は怒りに任せてゴミ山を蹴り飛ばす。


しかし、帰ってきたのは足の鈍痛だけだった。








──────……あれ?俺は寝ていたのか?



気がつくとまたしても俺はガラクタの山に押しつぶされていた。

どうやらはい出そうとした後があったが、そこで力つきたようだ。


……結局俺は何も成せないまま異世界でくたばるのか?


お腹がすいた。……先程吐き出したせいかツンとする胃液の匂いが鼻の奥から離れない。


水が欲しい……


俺はなんとか近くの泥水の所まで這って行き、その水を飲む。



「……おえぇ……」


鉄の味がする。甘ったるくて苦くて、そしてよりその味が現実だということを引き立たせてくる。


と、俺は近くにあった人形に気がつく。


人形……と言っても、ただ人型なだけで、まるではるか昔に作られました!っていうような異様な雰囲気を醸し出しているだけの鉄の塊のようなものだ。


けれど、人っ子ひとりいないこの空間があまりにも寂しかったのだろうか?


俺はその人形?を胸に抱き抱えてうずくまる。


「──────あぁ……こうしてこのガラクタの山と一体化するのも……はは……悪く……ない…………かな……」


そうして俺はゆっくりと意識を暗転させていく。まるでクマが冬眠に入るように、眠るようにゆっくりと









──────こうして、俺の人生はゆっくりと幕を下ろし……




「??そうはさせません。我が主よ(マスター)!……」



俺の意識が底に達する直前、何者かに引っ張り起こされる。


最初は俺は衛兵か何かが来たのかと思ったが、近くには人の気配はなかった。



変わりに、抱き抱えていた人形が光っていた。



「なになに怖いって……!やめて怖い怖い!」


慌ててその場から離れようとするが、力が出ない。


すると、その光はどんどん広がっていき……ついにはガラクタの山全てを包むほどになって行った。


そして……


光が収まったとたんに、そこにあったのは…………1人の女性だった。



「起動しました。おはようございます。我が主よ……」

面白くなるように頑張ります。次の話は今日中に出します……たぶん

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