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第1話エピローグ

ピ、ピ、ピ、……と言うアラームの音が鳴る。俺はそれを必死に叩きながら止め、再び暖かい布団の中に潜ろうとする。


天使が呟く。早く起きろと


悪魔が囁く。今日ぐらい寝ていようぜ、と


悩みどころだったが、俺は怖い上司の顔を思い出し……体にムチを打ちながら布団から這いずり落ちる。


師走つまり12月。もう既に冬が本格的に幕を開けて朝起きるのが苦痛になったこの時期



朝ご飯を作るのさえかなりストレスを感じてしまう。寒さとは人のやる気をことごとく奪い去ってくる


俺はそれでも嫌々ながら炊いたご飯を掻き込み、スーツに着替えて防寒着を着て家を飛び出す。


もちろん身だしなみなんて整える気すら失せている。俺は髪をいい感じに整える何て気分では無い。

何より朝自分の顔を見てしまうと、そこに映る自分の姿に絶望してしまうから。

新入社員として入った時はこんなに忙しいとは思っていなかった。

仕事なんて適当にパソコンをカタカタしていればいいだけ……何て甘い考えを持っていた自分をぶん殴りたい気持ちでいっぱいだ



俺はいつもの電車を駅のホームで待ちながらスマホの記事を適当に見る。


『祝!異世界ノベル大賞が大盛況』『ここからが俺たちの物語だ文庫最優秀賞は……』『新作RPGリ・ファイナルアンサー好評発売中……』『今年のクリスマスケーキの予約は……』『今年の税率は異常!?……徹底解剖……』


結局仕事を始めてから自分の趣味に当てる時間すら取れなくなってしまった俺はただ他の人がやっているのを眺めることしか出来ていない。



かつてラノベ作家を志して、自分の売れなさに心が折れた俺には……もう既に夢なんてものは持ち合わせていなかった。



両親は既に離婚し、そのあおりで俺は大学に通えなくなって仕方なく仕事を始めたと言うのに……また大学に行くなんて事すら叶わない。


そんな事考えていると電車がこちらに向かって走ってきたようだ。

俺はすしずめになりながら、押し込まれるように電車の中に入る。

もちろん手を上にして、カバンを足元に置きながら……

ふと後ろを見ると、かなり沈んだ顔をした男の姿が目に入った。その顔を俺はなるべく見ないようにしながら俺は上をむく

『辛い疲れに、アデドランα!』『1秒で100億稼ぐ方法!……』

『このクイズの答え、あなたにはわかるかな?』

……広告はいいよな。ただそこにいるだけで皆から見てもらえるんだから……


押しつ押されつのまま、ぶ厚い防寒具によるあまりにも暑い状態に苦しめられながら俺は駅で降りる。


俺はやっとこの苦しい状態から開放された喜びに歓喜しながら出口に向かって歩みを進め……


「あんたさぁ、なんでこんな簡単なことも出来ないの?」


「本当にお前は役立たずだな……」


「さっさとやめたらいいのにね……新人のうちにあんなに怒られてるなんて……ぷぷ……」


俺はなるべく感情を殺す。殺す殺す……落ち着け落ち着け落ち着け……


俺は途中から無心で仕事に打ち込む。


──────気がつくと深夜帯になっていた。



どうやらもう今日の記憶は曖昧になっていたようだ。


そういえばもう今日はクリスマスか……

そんなイベントに時間をとる心の余裕すら無くなっていることに俺は悲しくなった。

昔は何かとイベントがあれば即刻両親を振り回していた俺はもう、いない。



……俺は結局誰にも愛されなかったな……


少しだけ豪華にしたご飯を食べながら俺はこの数年間を振り返り、


──────「あれ……俺って何でこんなに惨めなんだろう……」


気がつくと右目から涙がこぼれていた。


家族も皆どこかに行ってしまい、仕事場でも自分を好いてくれる人は一人もおらず……


挙句の果てに夢も希望もない。



──────こんな俺の人生に、なんの意味があるって言うんだ?




……もう風呂に入る気力すら湧かない。俺は冷えきったベットに横になり目を閉じる。


「明日、地球が滅んでいますよう……に」


そんなことが起きるわけが無い。それでも気がつくと俺はそう願っていた


"ピロン"とスマホにメッセージが届いたことで暗くなった部屋にあかりがともり、俺は何だろう?と片目で眺める

そこには


『異世界からの片道切符が届きました』


とあった。


異世界?なにかの小説の通知かな?と俺が再び目をそらそうとした時、さらに通知が表示される。


『切符を使いますか?』


──────はぁ。馬鹿馬鹿しい、そう思うも心の隅で俺はほんのり期待していたのだろう。

俺はその通知を開いてしまった。


「まぁ……なんも起きないよな……はぁ期待して……そ、……」


……世界がものすごい速度で光り始める。

太陽が落ちてきたのかと思う程に眩しい光に俺は目を閉じる。



そうして目を開けた時、俺は別の世界にいた。




唖然とする俺の前に他にも唖然としているの人がたくさんいた。

よく見ると、それは俺の高校の時のクラスメイト達だった。


嫌な記憶がふと頭をよぎるが……それでも先程のメッセージ

『異世界からの片道切符が届きました』

というのが本当ならば、少なくとも俺のあの惨めな人生からは逃れられる。


俺の前世の人生がくだらないものだとしたら、今度こそ素晴らしい人生にしたい。


そう、思った


こうして俺の異世界での生活が幕を開けたのだった






アーティファクトってかっこいいですよね。でも多分昔の人はそれをガラクタだと思ってたんだろうな……と思いまして……それで

書いた物語です。

何卒

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