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無人島でカップ麺を争って3人で戦う話

作者:

勢いで書きました


反省はしてません

ザザー・・・

ザザー・・・・・・


・・・・波の音しか聞こえない…。

ここはどこだ…?


俺はさっきまで白鳥の遊覧船に乗って潮風を感じ、たまの休日を満喫していたはずだ。

日々の激務を何とかこなし、クリスマスも年末年始もないブラック企業に務めて疲れ切った体を、奇跡的に取れた休日に癒しを求め、一人遊覧船に乗って揺らぎを感じていたはずだった。


「なんでこんなとこに…」


ここはどう見ても無人島だ。

さっきまで湖にいたはずだから、たとえ白鳥の遊覧船が沈んだとしてもこんな何もないところにたどり着くはずがないのに…


「どう見てもまわり海…!」

あたりを見渡しても、水平線の向こうに見えるはずの大地は存在しなかった。

あるのは砂浜と生い茂った森、そしてあたり一面の海水だけ。


ハハ・・・ハハハ・・・・

もうどうにでもなれだ。

俺はそう思うことにした。ありえない状況に直面した俺だが、日々のくそ業務に疲れ切っていたため、現状に対し、それほど悲観的になることはなかった。


「こうなったらここで一生暮らすかぁ」


そんなことを思いながら揺れる海を眺め、膝を抱えてつぶやいていると…


グー・・・


「う・・・なんにしても食い物は必要だな。なんかあるかなー」

腹は減る。このまま帰れようが帰れまいが、たいして困る人はいないだろうが、生きることを諦めたわけではない。正直あまり動きたくはなかったが、先立つものがなければこのまま餓死するだけだ。幸いにも日は高い。俺は浜辺に何かないか探してみることにした。


「くそーなんもねぇな。なんだかんだ30分は歩いた気がするけど・・・

銛でも作って魚突きに行くかぁ?いや、あれはさすがに長年の経験と体力のなせる業・・・

ここ何年もデスクワークしかやってねぇマッチ棒人間がやれるわけねぇ。それに食える魚かもわかんないのに腹壊して死ぬなんて洒落にならん。くそー現代人は文明の利器がないと何もできねーのかよ。俺の人生なんだったんだぁ」


多少の疲れからか、若干の支離滅裂があるも、ただただ砂浜を歩き続けた。


すると、かすかに何かが聞こえた。


「・・・!聞こえた!今何か声!声が聞こえた!マジっか くそ、くそ!」

俺は走り出した。うれしかった。目から何かがあふれてきた。視界はかすんだが、それでも走り続けた。


こうなって思う。俺は心細かったんだ。ずっと疲れていた。ブラック企業で、日々心が摩耗して、でも気にかけてくれる同僚も先輩もいなくて、たまに会う昔の友人に仕事の話をされたとき、大変だけど充実しているのが感じられて、みじめで、一人になりたくて。


「でも・・・でも・・・やっぱり」


声が聞こえる。だんだんと近くに、何か話している。

帰れるかもしれない。そう、希望が見えてきた。



『ふっざけんな!これは俺が先に見つけたんだっつうの!

オメエに権利なんかねえから!!』


『はあああ?!なんであんたが先なのよ!私のほうが先に見つけてたわよ!ほら見なさいよ!私の手のほうがあんたより先に・・・』


聞こえてきたのは怒声だった。


そりゃそうだよ。だって姿見えなかったのに声だけ聞こえたもん。おれ結構走ったもん。

でも、うん、うれしいよ?だって寂しかったもん。人恋しっかったもん。この際誰でもいいよ。でも怖いなぁ。おれ今からあそこの中に飛び込むんだぁ。なんか気の強そうなヤーさんとギャルっぽいのおるなぁ。やめようかなぁ。あ・・・涙引っ込んでる。


勢いで走り出したはいいものの、少し後悔してしまった。しかし、この勢いに任せないと、いったん止まってから話しかける勇気など、根暗な俺には存在しなかった。勇気を振り絞り、足を止めず、まるで二人が何か話しているなんて気が付かなかったかのように、俺は声を絞り出した。


「おおーい!きみたちー!・・・あ!!」


足がもつれた。社会人あるあるだが、長年走ることから遠ざかった大人は、コケるのだ。自分がいつの間にか走れなくなっていることはつゆ知らず、昔の感覚のまま走ると体がついてこない。しかし勢いはそのまま。俺は見事に二人の間を駆け抜け、二人が何かを取り合っていたそれ(・・)を思いっきり押しつぶしてしまった。


「「「・・・・・・・・・・」」」


一瞬、三人の空気が無になった。


俺は砂浜に転び、顔面が砂まみれとなり、どこか擦り傷ができたようなじりじりとした痛みを感じつつ、ゆっくりと体を起こした。自分がつぶしたそれ《・・》を確認するように。


「・・・カップ麺」


それの正体はカップ麺だった。今ならわかる。この二人が争っていた理由が。すなわち、これは二人が探して唯一見つかった食糧なのだ。おそらくこの島唯一の。俺は無言で立ち上がり、それを抱えた。




「あはははは・・・・うふふふふ・・・・・」


「こらぁーまてー」


「もーぜったいつかまえてやるんだからー」



きれいな海、空は雲一つない快晴。

白い砂浜を、男女3人がかけていった。




FIN


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