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婚約者からの呼び出し

 

 最近、どうも婚約者様にさけられている気がします。

 公爵邸に赴いても婚約者様は留守が多いのです。事前にお約束していたのですが、いつの間にか屋敷を抜け出されているご様子でした。


 何かあったのかと思っていた処に、珍しく婚約者様から「会って話がしたい」と手紙が届いたのです。相変わらず拙い文字に心がほっこりと致します。婚約者様は実に子供心を忘れない無邪気な方。

 さっそく、公爵邸に行かなければ!





 ――スコット公爵邸――



「お前を呼び出したのには理由がある。僕の()()の事だ」


「はい?」


 恋人?

 婚約者様は、恋人と仰いましたか?

 浮気相手ではなく?


「チッ、ここは『どんな素敵な女性なんですか』と聞く所だろ?気が利かない奴だな!」


 舌打ちをされました。

 暫く、会わない間に柄が悪くなってしまったようです。

 こうなっては、幾らお顔が宜しくても全てが台無しですわ。


「まあ、それは申し訳ありません。では、『どんな素敵な女性なんですか』」


 婚約者様は、私の言葉に満足したのか、鷹揚に頷かれました。


「うむ、花の精のように可憐で、笑った顔が特に愛らしいのだ。大きく開けた口で甘い笑い声などまるでローレライのようで、僕はいつもウットリと聞き入ってしまう程だ。だが、怒った顔も悪くない。いや、実に良い!頬を膨らませ目を吊り上げて僕を見る姿がまたそそるのだ。いや、それ以上にぐっとくるのはやはり涙を目に一杯ためて僕を見上げてくる姿だ。あれは何ともいえないものがある。彼女の可憐さをより一層引き立たせるというべきだな。う~~ん。難しい問題だ」


 私は一体何を聞かされているのでしょう?

 はっ!!!

 これが世にいう「惚気」というものでしょうか?

 どうやら婚約者様の相手は喜怒哀楽の激しい方のようですが、そのような令嬢はいたでしょうか?


 まさか!


「いけませんわ!」


「うお!? なんだ急に大声をだして!」


「そのような小さな子供に手をだしてはなりません!」


「はっ!?」


「如何にその幼女を愛そうとも」


「な、な、何を言っているんだ貴様は!!!」


「あら? 違いましたの?」


「違う!」


「ですが、先ほど聞いた内容はどう考えても就学前の子供……いいえ、淑女教育を始める前の幼児が行う行動そのものです。とても年頃の淑女とは思えませんでした。てっきり幼女を攫って御自分の好みに育て上げようと考えているのかと思いましたわ」


「ち、ち、違う!!!」


 婚約者様は顔を真っ赤にして叫ばれました。

 その後、如何に愛する女性が好ましい人物かを延々と喋るのです。


 これは何時まで続くのでしょうか?





「いいか、バーバラ! お前との婚約は王命で決まった事だ。国王陛下も何を思って我が公爵家の嫁にお前のような平凡な女を選んだのかは分からん! ただの伯爵家に過ぎない上に平凡な容姿に凡庸な頭。到底、名門スコット公爵家の子息であり、美しい容姿の僕の横に立つには相応しくない女だ。だが、陛下のたっての願いならば致し方ない。涙を呑んでお前のようなつまらない女と結婚してやろう! 僕の広い心に感謝しろよ」

 

 あら? 話が終わりそうな気配です。

 どうでもいい話はスルーする教育を受けていて助かりました。流石はミレニウス先生です!

 ここは男性を「よいしょ」して話をまとめるべきですね!



「まあ!確かに観賞用の容貌を持つ殿方に頭と中身は関係ないのかもしれませんね」


「ははははっ!僕の美しさを讃えるとは、まともな美意識は持ち合わせているようだな!」


 勿論です。婚約者様がたった一つだけ自慢できる大切な『顔』ではありませんか。




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