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ミリーside

 

 私がお仕えしているロジェス伯爵家の御令嬢、バーバラ・ロジェス様はとても素直で心優しいお嬢様です。

 何時もニコニコ笑っているバーバラお嬢様。

 食べる事が大好きで、甘い物には特に目がない可愛いお嬢様。


 そんなお嬢様が婚約者である公爵宅から帰ってくると、なにやらずっと難しいそうな顔をしています。朗らかな笑顔が常ですから、伯爵邸の使用人たちは頭に「?」を付ける事態となっていました。


 お嬢様は悩んでいたのです。


 バカ…げふん。

 婚約者の公爵子息が浮気をしているという噂が『茶会』で話題になっていましたから。真偽のほどを確かめるために公爵邸に赴いていいたのですが…あの様子では真実だった可能性が大きいです。

 貴族の男に愛人はつきもの、と言いますが、ロジェス伯爵は妻第一の愛妻家。

 そんな両親を見て育ったお嬢様にとって、一人の男を数人で共有するという発想は中々結びつかなかったのでしょう。

 お労しい……。

 ですが、お嬢様から理由を聞いて「あのクソガキをどうやって殺してやろうか」の考えで一色になってしまいました。

 それだけ酷い男です。

 お嬢様には相応しくない男です。

 汚物と言ってもいいほどです!



『恋を知りたい』


 健気に訴えるお嬢様は天使です。

 お嬢様も年頃。

 本来なら恋に夢中になっていてもおかしくありません。政略とはいえ婚約者同士で愛を育むことも出来るといいますのに、あのクソ…ごほん。公爵子息の傍若無人ぶりではお嬢様も恋に発展する事はできなかったのでしょう。


 私は自分の愛読する『恋愛小説(聖書)』をお嬢様に手渡しました。

 大衆小説として今大人気の小説。


「お嬢様、恋とは十人十色です。愛し方も千差万別です」


「ミリー?」


「私がよく読む小説の一冊です。これに恋愛のイロハが書かれております。お嬢様、クソガ…ごほん。スコット公爵子息のように現実で()()()()()ことは出来ませんが、本の世界で恋愛というものを学ぶ事は出来ます」


「!ほんとうに……」


「はい。お嬢様は感情豊かな方です。本から色々な恋愛模様を吸収できます」


「ありがとう、ミリー!私、頑張りますわ!」


 いつものお嬢様に戻ってくださってミリーは嬉しいです。

 早速、小説を読み始めたお嬢様は既に本の世界に入ってしまっております。相変わらず、凄まじい集中力です。


 この分では三日とせずに小説を読破なさることは明白でしょう。

 新しい恋愛小説(聖書)を準備さねばなりません。


 あと、この事は他家のメイド仲間にも教えなかければなりませんね。

 彼女たちならばいい具合にクソガキの噂を流してくれる事でしょう。



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