婚約者からの助言
「毎日、毎日、我が家に来ているが……お前は暇なのか?」
「急にどうしたのです?」
「飽きもせずに我が家に来ているが他に行く処がないのか?」
なんという事でしょう!
スコット公爵様の願いによって始まった茶会ですのに……婚約者様は遂に記憶が如何にかなってしまったのでしょうか?
「婚約者同士の交流ですよ?」
「だから何だ? 僕とて友人がいるんだ。こうも頻繁に我が家に来られては友人達と会う事も出来ないじゃないか。少しは考えて行動しろ!」
「それでは、友人の方々もお呼びすればよろしいですわ。お茶会も大勢の方が楽しいですから。私は一向に構いません」
「はぁ!?お前は何を考えているんだ!」
「どうなさったのですか?」
「僕の友人という事は、男だぞ?」
「それが何か問題でも?」
「女と違って、男は時間の無駄な茶会など好まないんだ!」
「まぁ、そうですか? 残念ですわ」
婚約者様の男友達に一度はご挨拶をしたかったのですが、この様子では無理そうですね。これから先も付き合っていける相手なのかを見たかったですが、残念です。
「……それにお前も女友達を作れ」
「はい?」
「公爵家の嫁になるんだぞ?お前はどうも理解していないようだ」
「理解……ですか?」
「僕の立場からしたら、当然、パーティーの主催者側になる」
「私たちの場合は、どちらかといえば招待されることが多いと思いますわ」
「~~~~~~っ。それでもだ! お前には招待できる友人はいるのか?」
「家と懇意にしている方や、仲良くしたい方を招待いたしますわ」
私としては上位の方々に御呼ばれされたい側なのです。身分が下の者が上の者を招待するなどよほど親しくなければできない事ですからね。
「なんだ、いるのか。意外だな。だが、友人は多いに越したことは無い! 招待できる友人を今から大勢作っておけ! 親しい者がいればいるほど有利になる。社交界でも生きやすいというものだ。友人の一人でもいないとなれば社交界で生きていけんからな。僕が思っていたのとは違って、お前にも友人はいるようだ。なら、その友人を自分の茶会に誘え! 今から主催者側として振る舞えるようになっていろ! 不愉快だが、パーティーなんかは女主人が采配を取るものだからな! 僕に恥をかかせるなよ!」
憮然とした表情で諭す婚約者様が珍しくまともな事を仰っています。
明日は雨でしょうか?
帰り道で雨にあわなければいいのですが……心配です。
「いいから、お前は来る日を減らせ! わかったな!!」