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ミレニウス女史の門出

 

 それは突然の事でした。



「もう私がお教えする事はございません」


 ミレニウス先生が急にそのような事を仰るので、当の本人である私はポカンっとしておりました。

 驚愕してしまい口が開けっ放しになっているかもしれません。いけません。淑女として、あるまじき行為です。


「バーバラ嬢はもう立派な淑女です」


 い、い…いいえ!!!

 淑女ではありません!

 全然出来たませんもの!

 ミレニウス先生は私の何処をどう見て淑女になったと判断なさったのですか!?


「バーバラ嬢は『完璧な淑女』ではありません」


 そうでしょうとも!

 まだまだ未熟者ですもの!


「ですが『普通の淑女』でもありません」


 どういうことでしょう?『普通の淑女』ではないというのは??


「世間一般の淑女ではないという事です」


 ???

 それは良くないという事でしょうか?

 はっ!ま、まさか、私の不出来さについにミレニウス先生が匙を投げられた、という事ですか?


「バーバラ嬢は『新しい淑女』になる可能性があります」


 新しい?

 淑女に新しいも古いもあるのでしょうか?


「時代を切り開く女性を意味します。何時の時代にも常識にとらわれない発想で次代をリードする淑女がいます。バーバラ嬢はそういった『改革する淑女』になるでしょう」


 改革?

 私に革命でも起こせと仰るのですか?


「勿論、新しいことをするにあたって反発も大きいでしょう。理解されないこともある事でしょう。ですが、バーバラ嬢ならばそれに負けない強さを既に身に付けております。それはとても得難い事であり、バーバラ嬢の魅力の一つです。貴女に惹かれた者達がいずれ淑女の在り方に疑問を呈する時が来るでしょう」


 魅力……ですか?

 貴族の中では埋もれ果ててしまう容貌ですのに……。


 ああ~~~~~~~~~~っ。


 私にお母様の十分の一程の美しさがあれば他者を魅了させる事も可能だったでしょうに。十人並みの容貌の私では…ね。

 いいえ!悲観してはなりません!大人に淑女の皆様には『メイク』という名のマジックアイテムがあるではありませんか!それを使えば私とで絶世の美女になる事も夢ではありません!


「貴女自身が変わる必要はありません。貴女はそのままで十分魅力的で素敵なレディなのですから」


 せ、先生!!!


「バーバラ・ロジェス伯爵令嬢、貴女の教育係になった事は私の誉れです。貴女のお陰で私も新たな挑戦に向かう事が出来ます」


 ミレニウス先生は一生徒である私の手を取って捧げるように辞儀し、膝をより深く曲げてカーテシーを行いました。それは、相手により深い敬意をあらわす場合にしか行われないものでした。





 その後、ミレニウス先生は世界一周の旅に出かけ、数年後に帰還したのです。

 帰還した後も精力的に活躍し、我が国初の女性旅行家として名を馳せるようになりました。


 世界中を旅し、旅行記を出版されました。『異文化に触れて』、『太陽神を崇める民族とその生活』、『南の民衆』は傑作です。


 ミレニウス先生の旅行記を読んで、世界旅行に思いを立つ人が後を絶たず、冒険家になった者もいました。



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