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最高峰の教師

 

 婚約者様が、ああ言って(淑女ではない)いるのです。未来の妻としましては笑い者にならないためにも努力せねばなりません。なにしろ婚約者様のお好みは『淑女』なのですから。


「お父様、お母様、どうすれば素敵な『淑女』になれるのでしょうか?」


 こういう時は、両親に訊ねるのが一番です。

 夕食後のデザート。

 シェフ特製のプリンを頬張り、美味しさを堪能してから聞いてみました。


「バーバラ、どうしたんだい?突然」


「今日のスコット公爵家のお茶会で言われましたの。私は『淑女ではない』と。ですから『淑女』に成りたいのです」


「う~ん。バーバラにはまだ早いような気がするんだが、それにしても『淑女ではない』などと私の可愛いレディに言うとは。バーバラ、公爵家では他になんて言われたんだい?」


 お父様が優しく聴いてきますので、婚約者様のお言葉を一元一句(侮辱的発言)間違わずにお伝えいたしました。にこやかに微笑んでいるお父様の額に何やら青筋が見えますが、どうなさったのでしょう?

 隣に座っているお母様も何故か冷え冷えとしたオーラが醸し出されております。寒いですわ、お母様。

 お父様もだけでなく、お母様も「淑女教育」はまだ早いと否定的ですが覚えるには早い方がいいはずです。


「最高の先生から学びたいのです」


 私の訴えに対して、


「淑女教育で最高峰といえばジャンヌ・ミレニウス女史だわ」


 お母様が教えてくださいました。


 ただ、王族の姫君や公爵家の令嬢しか教えないそうです。

 それというのも、ミレニウス女史の家系は代々『妃教育』を生業にされていらっしゃるため普通の貴族令嬢では歯牙にもかけてもらえないらしいのです。勿論、「それでもミレニウス女史に教えを請いたい」と言う親御さんたちは大勢いることでしょう。ミレニウス女史の教育を受けて合格すれば間違いなく『当代一の淑女』になれるというもの。そうなれば、より良い縁組も期待されるのは請け合いです。


 残念ながら、未だかつて公爵家以下の家柄の令嬢が合格点を頂いたことはないそうですが。


 なんでも、ミレニウス女史の教えが厳し過ぎることが原因らしいのです。始めは何人かの公爵家クラスの令嬢達がミレニウス女史の教育を受けたそうですが、あまりの厳しさに令嬢達が()を上げてしまったとか。 


「私、ミレニウス女史に教えを請いたいです!」


 勢いあまってスプーンを持ったまま立ち上がってしまいました。いけません。どうも私は感情的になってしまいがちです。こんなところも、婚約者様が「品がない」と言う理由かもしれません。


「バーバラ、本当にいいの?」


 お母様が何やら心配そうな表情。


「はい。私はミレニウス女史の淑女教育を受けて、本物の淑女になりたいんです」


「貴女の熱意は分かりるけど、ミレニウス女史の教えは、お母様とは比べ物にならないほど厳しいものですよ?」


「はい。覚悟はできております」


「バーバラ……」


 言葉にならない程、感動しているお母様とは対照的にお父様は随分と難しい表情でした。

 貴族令嬢は、8歳ぐらいまでは、母親か家庭教師ナーサリー・ガヴァネスから、読み書き、音楽、作法の初歩的なことを学ぶのが基本です。現に、私もお母様から色々学んでおります。まだ基本だけですが。そんな初歩の初歩しかできない娘が、いきなり高度な教育を施されようとしているのですから、お父様としても心配なのでしょう。



「バーバラの覚悟はよくわかった。しかし、相手はジャンヌ・ミレニウス女史だ。ミレニウス女史が担当した生徒は、錚々たる方々だ。王太后様、他国の王家に嫁がれた王女様方、公爵令嬢達。妃教育のエキスパートといっても過言ではない。今、受け持っている生徒も筆頭公爵家の御令嬢だ。伯爵家の我が家が依頼したところで断られる可能性は大きい。いや、間違いなく断られるだろう」


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