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冷たいアスファルトの上で

更新は不定期です。出来は分かりませんが、完結はすると思います。






「はあ、はあ、はあ。娘の仇だ」


 男はそう言いながら何度も何度も刺突する。包丁は血で真っ赤に染まり、刺されている男はすでに虚ろな目をしていた。


(なんて刺し方するんだ、こいつは)


 刺されている男、村上仁むらかみじんはそんなことを考えながら、自分を刺す男を見た。すでに体に空いた穴の数は一つや二つではない。誰の目から見ても死に絶える寸前であった。

 

 村上があたりを見渡してみるとたくさんの野次馬が周りを取り囲んでいる。あるものは吐き、あるものは呆然とし、そしてあるものはスマートフォンをこちらに向けている。


 態度は人それぞれ。ただ共通して言えることは、誰一人としてその光景を止めるものは現れないことであった。


(……クソが)


 もしかしたら自分の危険を顧みてかもしれない、あるいはあまりの衝撃に驚いているのかもしれない。


 しかし一方で村上は別の可能性を考えていた。それは自分の死を皆が望んでいるということである。誰しもが心の中で、少なからず死んでほしいと思っているのだと。自分に死ねと言っているのだと。そう感じていた。


 そうしているうちに一人の青年が止めに入った。村上は最後の力を振り絞り自分の体を見る。身体からは明らかに助からないだけの血が流れていた。


(巫山戯るな……巫山戯るな!)


 俺は一体何のために死ぬのだ。こんな愚かな連中のために働いていたというのか。


 彼女は何のために死んだのか。融和や多様性などという聞こえの良い思想のために、彼女は死ななければならなかったというのか。


(誰の所為だ?誰の所為で……俺は、彼女はっ!)


 村上は既に声など出ない。しかし確かな怒りを抱えながら命の火を燃やしていた。


(実際に彼女を殺したテロリストか?武器を供給した企業か?その背後にいる国家か?それともそれを支える宗教か?)


 いや、違う。その全てが繋がっているのだ。思想も、欲望も、政治も、権力も、利益も、価値観も、その全てが絡み合った結果なのだ。


 『殺してやる』。村上仁の頭に浮かんだのは絶望でも痛みでもない。ただ世界への怒りだった。


 そしてその瞬間、強い光に包まれる。それは彼の人生の終わりであり、同時に彼の人生の始まりでもあった。


 新しい世界での人生が今始まろうとしていた。

















 今は昔、その世界には多数の“ヒト”が存在していた。


 身体が小さく、技術力に優れた小人族。


 龍の鱗を纏い、龍と言葉を交わす龍人族。


 獣の特徴をもち、大地を駆け回る獣人族。


 多種多様な種族が大陸に育ち、それぞれに群れを作っていた。


 彼等のような亜人の他に、人間種と呼ばれるものもいる。彼等は特徴的な外見こそもたないが、それでも多種多様である。そんな彼等は一番数が多く、そして一番非力でもあった。


 時が流れるにつれて、それぞれのヒトは数を増していく。そしてその数は多くなり、群れとして生きていくには工夫が必要であった。


 それは必然であっただろう。同種のヒトはそれぞれに集まり、それぞれの国家を作り上げた。国家は次第に大きくなり、大陸は彼等にとって手狭になった。そしてそれは争いを生むには十分すぎる理由であった。


 戦いは始まり、人々はその命を食らい合う。そして争いが争いを生み、それぞれの種族が争い始めてから300年が過ぎた。


 今ここに、新しいヒトが訪れる。


 村上仁。


 後に暴君と呼ばれ、あらゆる戦争に悉く勝利し、この世界の争いを終わらせる者である。






読んでいただきありがとうございます。


早いもので長編ももう五作目になります。

成長しているようなしていないような……。頑張ります。

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