君と小悪魔
一日目夜のオリエンテーションが終了する。さすがに美桜も女友達と歓談していた。
俺も同じ歳で一浪して入学したという大森という男と仲良くなった。
「お前いいな!さっそく彼女がいて……」どうやら大森くんは、美桜さんを俺の彼女と勘違いしておいでのようだ。
「いや、あの娘は違うよ。ちょっとした事で、前から知り合いなんだ。たまたま学校が同じになって……、まあ、初めての所に知り合いがいたから安心したんだろ」まあ、細かく交通事故の話をするほど彼に気を許していない。
「そうか……、じゃああの篠原って先輩どう思う?」大森が聞いてくる。
「どうって……、性悪そう……、いけず……、デーモン……」彼女への印象を聞かれると、色々な言語が飛び出してくる。
「はあ?お前は女を見る目ないんだな。どっちかって言うと女神様だろ!」あっ、君も泣かされる人なんですね。
「そうかね……」ふと、美桜のほうに目をやると、俺と目が合ったことが恥ずかしいのか下を向いた。
「お前の知り合いの子は今一だな」なんでそんな勝ち誇ったような感じで言うんですか。あなた美桜の素顔を見たこと無いからそんな事を言えるんですよ。
「顔で人を判断するのはスカンわ」俺はポツリと本音を呟いてしまう。
「あっ、悪い!悪気はないんだけどな」大森は少しばつが悪そうに頭を掻いた。
真ん中でオリエンテーションを仕切る昌子と目があった。なぜか笑顔で軽く手を振ってくる。大森が勘違いして笑顔で手をふりかえした。
全くどいつもこいつも、お前ら皆、あの小悪魔に泣かされちまえ!俺は呪いを掛けるように祈った。