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君の歌、僕の夢  作者: 上条 樹
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君と出会い

 今日の俺はすこぶる機嫌がよい。今の俺なら少々の事でも怒らない。

 ここ最近ではこんなに最高なテンションの日はないだろう。


 今日は待ちに待った念願のバイク、ZX10Rの納入日。高校生活、三年間アルバイトの金をチマチマ貯めて100万円弱の全てをぶちこんだ。ちなみに残り100万弱のローンが残っている。


 この春、なんとか国立大学への受験を征し、念願の大学生になる事になった。両親からの了承を取り付けて危険だからと反対され続けていたバイクの免許証も取得し、憧れていた本日、愛しのZX10Rに対面できるのだ。


 車体に合わせた黒いフルフェイスのヘルメットは用意している。このヘルメットだけでも諭吉さんが数枚俺の元から去っていった。

 しかし、このヘルメットがカッコ良くて、枕元に置いては何度も被ったり、脱いだりを俺は繰り返した。興奮して眠れなかった事をここに告白する。


 バイク屋へ続く道を鼻唄を歌いながら歩く。目の前に横断歩道。隣に小柄な女の子が並んでいる。


 度の強そうなレンズが分厚いメガネ。適当に結んだような髪。そして上から下まで黒い服。せっかく女の子に生まれたんだから、もっとお洒落すればいいのにと、いらんお節介な妄想を展開する。女の子は可愛く其なりにスタイルが良ければそれで既に人生の勝者だ。努力すれば皆それなりのレベルには到達する。しかし、生まれ持った資質には残念ながら及ばない。それは、男も同じではあるのだが……。男は財力でそれを補う事が出来るのだ。まあ、もちろん俺にはどちらも無いのだが、ほっとけ!

 

 目の前の信号が青になる。


「いちばん!!」叫びながら小さな男の子が横断歩道に飛び出した。すると赤信号で停車しない乗用車が飛び込んで来た。


「危ない!!」先ほどの女の子が男の子を突き飛ばす。いやいや、君も危ないよ!!


 ドンッ!!


 全身に駆け巡る痛み。えっどうしちゃったの俺。なぜか俺は道路の真ん中で空を仰いでいる。あー綺麗ないい天気だ。


「だ、大丈夫ですか!?」女の子が駆け寄ってくる。あれ……眼鏡を外している……。

 メチャクチャ可愛い。なんで眼鏡してるのコンタクトレンズにしたらモテモテじゃん……。


「ちょ、ちょっと、早く救急車!!」周りがざわめいている。


 バイク取りに行かなくちゃ……、あれ体が動かん。綺麗な女の子は相変わらず心配そうに俺の顔を覗きこんでいる。


 大丈夫だから……って言おうとしたが声が出ない。


 もしかしかて、俺が車に跳ねられちゃったのか……。しばらくするとけたたましい音を立てながら救急車が駆けつけてきた。


 あっ、新品のヘルメットが……。


 

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