第五節 転生魔術師はサヨナラを言わない。-④
放課後。三田さんは個人的な用事で先に帰り、高島くんは部活、安村さんはいつもの取り巻きといっしょに帰り、舞さんの部活で帰りは宮本さんとふたりになった。
「その、悪いですよ」
「何が?」
「迎えに来てもらっただけでも悪いのに、送ってももらえるなんて」
「それが僕の役目だよ」
恥ずかしいのか宮本さんは一歩僕から離れる。
「正直、怖いです。いつどこで誰かが私の誘拐するんじゃないかって。でも、誠くんがそばにいてくれるおかげで怖くないんですよ。だから」
離れたのに僕に近寄ってきて手を握る。
「もう、怖くないよ」
「なんでですか?」
魔術師がいないからだ。でも、そんなことを言っても誰も信じない。
「大丈夫。もう、茜さんは大丈夫だから。何も怯えなくてもいい。引け目を感じなくてもいい。君は君がなりたいものになって幸せになって欲しいんだ」
「きゅ、急に何を言い出すんですか?」
それが早見さんの、―――ミーシャの願いだから。
不意にミーシャの面影と宮本さんが重なった。
ああ、そうか。もう、ミーシャには…。
「ま、誠くん?」
宮本さんが驚いた表情をする。僕はなぜか泣いていた。
「あれ?なんで?」
乱暴に拭き取る。泣いている場合じゃない。僕は目の前の宮本さんを幸せにするんだ。
「そうだ!近くにおいしいパフェ屋が出来たんだ」
「そうなんですか?」
「食べに行こう。きっと、幸せの味だよ」
それから僕らはふたりでパフェ屋に行った。値段にも驚いていたけど、甘い物好きはミーシャと同じだった。その面影がまた重なる。必死にその面影を振り切ってメニューに目をやる。僕は、ミーシャが頼んだものと同じジャンボを頼んだ。涙をこらえて必死にくらいついた。




