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転生魔術師が君に伝えたいこと  作者: 駿河留守
第一章 転生魔術師はサヨナラを言わない。
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第五節 転生魔術師はサヨナラを言わない。-②

「きょ、今日も宮本さん来ませんでしたね」

「そうだね」

「これで一週間かしら?早見さんの時と同じね」

「そうだね」

「でも、あの時はすぐに宮本さんが戻ってきてくれたから早見さんもすぐに戻ってきたけど」

「うん」

 放課後。帰り際でそんな話を僕と三田さんと安村さん、高島くんでしていた。三人は魔術師同士の戦いの時の記憶が残っていない。なぜかはわからないけど、魔術のせいにしておく。ミーシャは記憶を操作できないと言っていたので、やるとするならジープだろう。しかし、疑問も浮かぶ。三人の魔術師に関する記憶が消されているのに何で僕の記憶は鮮明に残っているのだろうか?もしかして、あれは全部夢だったのかって何度も思ってしまうけど、今の人の囲まれている現実を見て毎回現実だったんだと思う。

 早見さんは行方不明扱いになった。警察は多発している行方不明事件と同様に事件に巻き込まれたと判断された。この事件の真相を知っているのは僕だけだ。魔術師ソフィアとエドガーが殺して消した事実は本人が違いない今、証明することは出来ない。

「やっほー、誠くん」

 舞さんが僕らのところにやってきた。ただ、僕らは無駄に集まっているわけではない。

「じゃあ、茜さんの家に行こうか」

 そう。これからみんなで宮本さんの家に向かうのだ。

 行方不明事件の次の標的としてもっとも有力なのが宮本さんなのだ。次に狙われるのは早見さんだって警察が警戒をしているさなかいなくなってしまったので、宮本さんは何も信用できなくなってしまっているようだ。それで家に閉じこもったきり出てこないというのだ。行方不明になった人は死んでいるのか、生きているのかもわからない。そして、見つかっていない。自分も友達の山岸さんや早見さんと同じ目にあうんじゃないのか。恐怖とふたりの友人を同時に失った悲しみで憔悴しきっているようだ。元気付けるために僕らは宮本さんの家に向かう。

 学校を出て歩いて十分で駅に着く。三十分に一本の電車に乗って六駅目の小さな駅に僕らはやって来た。そこからは歩いて十五分。会話はそれなりに弾んでいた。主に舞さんが盛り上げていた。十五分の道のりは長いと感じたのは僕だけだろう。みんなは宮本さんがミーシャだったころの記憶もしっかり残っている。残っているからこうやって僕の元にいる。ミーシャだった頃に出来た友好だ。朝起きたら突然、仲も良くなかった人が急に友人になる。はたしてこの現状を宮本さんはどう思うのか?どう感じるのか?

「ここですね」

 高島くんが地図を確認しながら立ち止まった極普通の一軒家。表札は宮本。ここだ。

 インターフォンを押す。すぐに出た。

「はい」

 声からして女性だけど、宮本さんじゃない。お母さんだろう。

「私たち、茜さんの友達です。元気がないって訊いて様子を見に来ました」

 するとインターフォンの向こうでぼそぼそと何か会話が聞こえたけど、聞き取れなかった。

「すみません。茜は会いたくないと言っています」

「なぜですか?」

 次の言葉に周りは衝撃を受けた。

「あなたは友達じゃないって茜は言っています。あなた以外もそうだと」

 インターフォンにはカメラが付いている。カメラ越しに僕らを確認したのだろう。そこに映っているのは宮本さんとは仲もよくない安村さん、三田さん、高島くん、舞さんだ。困惑するも無理はない。

「お引き取りください」

 それだけ言ってインターフォンは切れた。

 どうしたんだろう?様子が変じゃない?大丈夫かな?と誰一人今起きている異常事態を感じていなかった。宮本さんがミーシャだったときの記憶は宮本さんにはない。当然の反応だ。

 佐藤。―――茜のこと。これからも、頼んだわよ。

 頭の中に直接聞こえたその言葉に最後尾にいた僕は立ち止まった。それに舞さんが気付く。

「どうしたの?誠くん」

 早見さんは僕に宮本さんを託して僕とミーシャと宮本さんの命を救った。彼女の意思は僕の中で今も生き続けている。こんなところで後ろを向いていていいのか?いいわけない!

「すみません!ちょっと、用事を思い出したんで先に帰ってください!また明日!」

 そう言って来た道を走って戻った。舞さんが呼び止めていたけど、それに応答せず僕は走った。

 そうだよね。早見さん。ミーシャにだけ早見さんの犠牲のために生きろって言うのは無責任だよね。大丈夫だよ。ミーシャ。僕も君の苦しみをいっしょに背負う。それに早見さんの一生お願いだ。叶えないわけにはいかない。それに、それにだ。

 ミーシャがやったように僕も誰かを幸せにしよう。そうすれば、僕も幸せになる。

「そうだよね、ミーシャ」

 僕は宮本さんの家の目の前に戻ってきて息を整える間もなくインターフォンを押した。でも、反応はなかったから僕は思い切り叫んだ。

「茜さん!」

 それは宮本さんとした約束。名前で呼ぶって言う約束。

「大丈夫!君が不安にならないように僕が必ず守るから!」

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