第四節 人生とは常に戦いである。-⑤
舞さんが早見さんを引きずって歩いている。その後を安村さんが追いかける。おそらく、今は舞さんがソフィアで安村さんがエドガーだ。ふたりの会話がかすかだけど聞こえた。
「結界はいつでも使える?」
「問題ないっす」
どうやら、さっきみたいに僕らをどこかに閉じ込めるつもりらしい。
「早見さんを助けないと」
「わかっているさ」
ミーシャは冷静に体育館の隅からふたりの様子を窺う。こっちに来たらどうしようと思ったけど、ふたりは体育館に入っていった。
「どうやら結界は体育館にも用意しているようだ」
「なら、体育館には入らないように」
「逆さ。佐藤くん」
「逆?」
「彼らの結界を利用させてもらうよ」
「どうやって?」
「君はソフィアを一瞬でも良いから動きを止めるんだ」
「え?どうやって?」
「ボクが幻魔の腕で君を投げ飛ばす。そのまま彼女ごと体育館の奥に飛んでいく。その隙にボクがエドガーを体育館の外に追い出す。そしたら、閻魔の審判で彼らが用意した結界を強制発動させる。なるべく部外者に邪魔されたくないと彼らも思っているはずだ。そうなれば、結界は内部からも外部からも干渉されないようになっているはずさ」
つまり、ソフィアを中に入れてエドガーを外に出して結界を発動できれば分断できる。さっきのような複数人同時に相手をする必要がなくなってミーシャが戦いやすくなる。
「ただ、そのためには君にソフィアを押さえてもらいたいんだ」
「え?ぼ、ぼ僕が?」
あの怪力を?どうやって?
「方法は何でも構わない。君の勇気を再びボクに力を貸して欲しい」
人に頼ってもらえる。それがどれだけうれしいことなのか僕は忘れかけていた。
強くなりたい。ボクシングを始めた理由だ。なぜそう思ったのか?強いヒーローに憧れたからか?違う。誰かに頼られたかったから―――かもしれない。恐怖はあまり感じなかった。強くなりたくて始めたボクシングをここで使わずしてどこで使うのか。
僕は無言で強く頷いた。




