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転生魔術師が君に伝えたいこと  作者: 駿河留守
第一章 転生魔術師はサヨナラを言わない。
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第二節 ボクは魔術師さ。-⑤

 学校は突然発生した爆発事故にパニック状態だった。市内の高校で発生した爆発事故ってことでマスコミたちが学校の周りにわんさか集まってきた。それに対応する警察は警備と事故の詳細の把握と周辺の封鎖などなどで手がいっぱいいっぱいだった。

 そのおかげか現在、行方不明で警察が血なまこになって探している宮本さんが目の前を歩いていても気付かず人でごった返している学校から何とか抜け出すことが出来た。

「あ、あのさ、そろそろ手を離さない?か、勘違いされそうだし」

「なぜだい?この方が君とはぐれる可能性が低いだろ?それに男女が手をつないでいるんだ。カップルだって思われて怪しまれる心配も少ない」

 そうだったとしてもいろいろ誤解されてめんどくさいよ。僕と宮本さんが。得に宮本さんはこの間の記憶がないんだから余計にややこしいことになるよ。それに女の子と手を握るなんてただでさえ人とのコミュニケーションが苦手な僕には無縁のイベントだ。めっちゃ緊張する。

 女の子って暖かいんだね。こんなに細くて小さいんだね。

 それから小走りで手をつないだまま僕らは僕の家に向かう。

「今更かもしれないけど」

 と手を離して立ち止まるミーシャ。それは偶然か否かジープと出会った自動販売機の前だ。

「ボクを家に上げてくれるのはうれしいけど、いいのかい?君の家には君以外にも誰か住んでいるんじゃないのかい?その人たちにボクのことをどう説明するつもりだい?それにボクは追われている身だ。君の家族に迷惑をかけるわけにはいかないな」

「それに関しては大丈夫」

 ミーシャの心配をばっさり切り捨てる。

「お母さんは今日から夜勤だから夜はいないし、父さんは出張中で戻ってくるのは来月頃だし、今年の春からお姉ちゃんは上京していないから事実、家には僕しかいないんだ」

 すべては事実だ。嘘じゃない。しかし、ミーシャはすぐに返事を返さなかった。

「そ、それに僕の家は学校に近いんだ。徒歩十分以下だ。走れば五分もかからない。ミーシャが言ってた魔術師を監視するのに最適だと思うんだ」

 ミーシャはじっと僕の目を見つめる。目は宮本さんそのままだけど、なぜか不思議と吸い込まれそうになる。

「そうか。ならば、お言葉に甘えるとしよう」

 なぜかほっとする僕。断られても無理矢理でも連れて行くつもりだった。宮本さんは消息を絶ってから、つまりミーシャと入れ替わってから一度も家に帰っていない。その間、どうしていたんだろう?公園とかで野宿をしていたんじゃないか?彼女の制服が不自然に土の跡がついていたり、汚れているのが物語っている。女の子がひとりで野宿をしているところを見たら何をされるかわからない。これは宮本さんを守るためだ。だから、恥ずかしくても多少強引に行かないといけないと僕は思っていた。

「では、早速案内してもらおうじゃないか」

 と手を再び握ってくる。この自然な感じが僕の心臓をいちいち刺してくる。

「そ、それがもうついてるんだよね」

 僕は指差したほうが僕の家なのだ。それはジープと始めて出会った自動販売機から数メートル進んだ先にある四階建てのコンクリート製のマンション。エレベーターはなく階段で四階まで上る。コンクリート製の階段は湿っぽく肌寒い。四階の一番端の部屋、四○八号室が僕の家だ。四階まで上がると学校の向こう側にある駅と病院を見ることが出来る。このマンションはこの辺りに建物の中では高いほうなので周辺を見渡すことが出来る。

「いいじゃないか」

 そういわれるとなぜかうれしくなる。

 ポケットから鍵を取り出して鉄の扉を開ける。一応、中を覗く。お母さんは仕事に行ってしまったようで家の中には誰もいないことを確認してから中に入る。

「おじゃまするよ」

 女の子が始めて僕の家にあがる。ただし、状況は僕のイメージとは全然違う。それは仲良くしていた宮本さんの見た目をした魔術師だってことだ。誰がこんな状況を想像できるだろうか。

 僕の家はリビングに僕の部屋と元姉の部屋とお母さん、父さんの寝室の四つの部屋がある。リビングにはダイニングキッチンがあって食事をするテーブルがあってソファーとテーブルがある。一般的な普通の家庭の家だと僕は思う。

「綺麗な部屋じゃないか」

「そうかい?」

「ああ。埃っぽくなくて…綺麗だ」

 その一瞬の間でミーシャは自分の生活環境を思い起こしたように見えた。滅ぼうとしているミーシャの世界での生活はどんなものなのか…。聞こうと思ったときだ。

 キューっとかわいい音がミーシャから再び聞こえた。

「これはずるいよ。こんないい匂いを嗅がされたら鳴るものも鳴ってしまうよ」

 声のトーンは変わっていない、表情も変わらないけど、僕にはそれが恥ずかしさを必死に隠す悪あがきにしか見えなくて笑ってしまいそうだった。

「お母さん、カレーを作ってくれたみたいだね」

 キッチンへ行くと書き置きがあった。『食べるときは温めて心を込めて母の愛をしっかり噛み締めて食べること』と書かれていた。何かいろいろ余分に書いてあったけど、了解した。

「いいお母さんじゃないか」

 僕の脇の下からすり抜けるように書き置きを覗き見してきた。僕の顔の前に宮本さんの頭がやってくる。シャンプーとリンスのいい香りがきっと女の子からはするんだろうなって思った。それはマンガやアニメを見ている僕のイメージだった―――が、現実は違う。

「…ご、ごめん、ミーシャ。臭い」

 腕をミーシャの上を通して離れる。

「臭いかい?」

 とミーシャは自分の腕の臭いを嗅ぐ。

 ミーシャから汗の臭いと土の臭いと雑草の臭いがした。その臭いから草むらの中で寝ていたことが判明した。連れて来て良かったと心底思う。

「とりあえず!お風呂に入って!ご飯はそれから!」

 お風呂があるほうへ指差すとミーシャはかすかに笑みを浮かべた。

「そうさせてもらうよ」

 とその場でブレザーを脱いでワイシャツのボタンに手をかけた。

「こ、ここで脱ぐなー!」

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