第二節 ボクは魔術師さ。-②
「ここ最近、生徒の失踪事件が多発している」
と僕は先生から聞いた。
最初に二週間ほど前に三年生の田代さんと月嶋さんが学校から帰ってこないと連絡があった。先生たちが学校中を探したが、ふたりの足取りはまったくつかめなかった。ふたりは交際中だったということで駆け落ち的な感じで消息を絶ったのか?いろいろ憶測があったらしいけど、これ以上は一教師の先生たちには限界があると感じて警察に捜索依頼をしたが、未だに証拠もつかめていない。付近に不審者の情報もない。ふたりが誘拐みたいな事件に関わった確たる確信もない。捜査は難航している中、今度は隣の中学校で男子生徒がひとり学校から帰ってこなかった。そして、つい数日前に小学生の女の子と男の子が行方不明になったのを皮切りに警察もただの家出のような失踪事件ではないと本腰を入れて捜査に乗り出した矢先だった。山岸さんと連絡が取れなくなった。今までの五人と同様に学校へ行ったっきり帰ってこなかった。山岸さんの場合は母子家庭で母は看護師でその日は夜勤だったため、山岸さんが帰ってこないことに気付くのに数日遅れたからそれ以上前から行方不明だったと思われた。そして、今回の宮本さんの失踪。宮本さんの場合は来ないことにすぐに早見さんが異変に気付いて先生に報告した。警察も行方不明事件に本腰を入れて捜査をしてくれていたおかげか対応が早かった。だから、宮本さんが家を出て電車に乗ったというところまで足取りを掴むことができていた。
「何か知っていることがあるなら話すんだ」
と先生はいつになく真剣に僕を問い詰めた。
あえて誰もいないふたりっきりの空間を用意してくれたので、僕は正直に話をした。
「そうか。今後、その駄菓子屋に警察が行くようなことがあるかもしれないな」
「仕方ないです。宮本さんを探すためです」
今のところ消息を絶った人たちの足取りは途絶えている。進展しているような話をしないところを見て、警察の捜査も難航しているように見える。早見さんがどれだけ行方不明の人の件を知っているかわからないけど、いなくなった人が見つかっていないことを勘付いていたのかもしれない。捜しに行こうにも情報がない。最後に姿を見ている生徒は僕だった。だから、何か知っているじゃないかって早見さんは僕に迫った。
宮本さんのことが大好きな早見さん。
僕も彼女のことが好きだ。このままさようならなんて嫌だ。僕はまだ彼女に恩を返せていないじゃないか。
握る拳に自然と力が篭もる。