同級生の男の子の
私には中の良かった子がいた。
その子は大人しく、顔も普通な子だった。
趣味は全く合わないのに、なぜか話題は一緒だった。
「ねえねえあのさ、あの子面白くない?」
「え〜?どこが面白いの?」
「だってさ〜、何にも無い所でコケるんだよ?ちょっとおっちょこちょいだと思わない?」
「まぁ、…そうだね。どんくさいと思う。」
「それ言っちゃう?」
言われた子は聞こえていないせいなのか何も言っては来ない。まぁ、賑やかなこの部屋の中聞こえる方がすごいって。
教室内には大勢の子供達がいた。
私たちもその1人だ。
今は休憩時間。
皆ワイワイと喋ったり遊んだりしていた。
【ガツン!】
その音とともにこける男の子。
さっきもそうだった。
つい笑ってしまった。
そしたらさ、その子がこっちを向いた気がした。気のせいだと思うけどね。
でもね、ちらっと見たらその時目と目があった。
ヤバって思ったけど、その子は何も言ってこないからいいかなって思ったんだ。
でもね、翌日になったらその子は教室に現れなかった。休んだのだ。
同級生の女の子もたまたま休んでいたが、偶然と思い気にもしなかった。
次の日男の子は学校に出てきたけど、女の子はまだ出てこない。心配になった私はその日、帰りに家に行ってみることにした。
家の電気はついていない。
そりゃそうだ、まだ明るいもん。
チャイムを鳴らすも誰も出てこない。
なんだろう…嫌な予感がした。
ドアノブを回してみたらドアが開いた。
何で?
恐る恐る家の中に入る。
部屋は静かだった。
まるで誰もいないみたい。
友達は何処?
一つ一つ部屋を見て回る。
部屋はどれも荒らされたような感じはなかった。綺麗だった。そう、どの部屋も使われた感はあるけれど、綺麗すぎた。
二階建ての家だから二階にきっと子供部屋があるんだろう。そう思い、二階へ向かう。
でもさ、変じゃない?一階に誰もいないって…。親は何処?お父さんは仕事だろうからいないのはわかるけど、お母さんは何処にいるの?
まさか…二階?
私は鞄から携帯を取り出した。普段は使うと怒られるから使わないけれど、今は非常事態だからきっと怒られないと思ったんだ。
電源を入れ、いつでも警察に通報できるように画面は出してある。
奥の部屋のドアが開いていた。
そこが友達の部屋?
分からない。分からないけれどまるで何かに引っ張られるように足が動いた。
ドキドキが収まらない。
ゆっくり、ゆっくりと足を動かして部屋の入り口まで来た。あとは中へ入るだけ。
怖いよ。
どうしよう?
何かあったら…。
震える手がドアノブをつかんで動かす。
そこには母親らしき人が倒れていた。
友達は?…あっ、いた。
でも様子が変だ。
壁際に座り込んでブツブツと言っている。
何を言っているのか気になったので近づいてみる。
顔を覗き込んだ時思わず叫びそうになった。だってさ、その女の子の目が真っ白だったから。
まるで気を失っているかのようだ。
でも体は揺れている。
な、何があったの?
すぐに警察を呼ぼうと110番を押してかけようとしたら、女の子の手が私の両手をぐっとつかんで離さない。
「ヒッ!」
思わず叫んだけど、友達は反応がない。
目は相変わらず真っ白のまま…。
怖いよ〜。
泣きそうになりながら、それでもなんとか携帯の番号を押すことができた。
そしたらさ〜、ハンドフリーになってておまわりさんの声が大きく聞こえビックリした。
「どうしましたか?事件ですか?事故ですか?」
「た、助けて!」それ以外言うことができなかった。
携帯を持っていた手を振り払われてしまったから。
友達はまるで…そう、ゾンビみたいに動いてきた。
怖かったからその場から逃げ出した。
もちろん携帯は拾ってだけど、あまり余裕はなかった。
子供部屋で一体何があったのか?
母親は倒れたままだったけど。
怖くてそのままにしてきちゃったけど良かったのかと考える余裕もなかった。
携帯の電源入れっぱなしだったから、それを頼りにおまわりさんは来てくれたようで、ホッとした。
で、さっきまでの事を話して一緒に部屋に入る事に。
怖いよ〜。
でもね?おまわりさん二人も来てくれたからちょっと心強かったかな?
問題の部屋は二階だから案内をしなきゃいけなかったのがやだったけど、友達のその後も気になる…という事で、おまわりさんの服をつかんで部屋の入り口まで歩いて行った。
お母さんは倒れたままだった。
女の子は?
あっ!倒れてる!
何で?何があったの?
分かんない…。
おまわりさんにはどう説明したらいいのかもわからない。
その間おまわりさんはテキパキと動いていた。
まず最初にした事は脈の確認と救急車の手配。
現場保存と無線で連絡。
私はその間部屋の隅で立っていた。
ある程度のことが済むとおまわりさんが二人、私に聞いてきた。何があったのかを聞くために。
わた、私もこんな事初めてのことだからわからない事だらけだったけど、説明はできたと思う。
おまわりさんは真剣に聞いてくれた。
そして…。
翌日、私はいつも通りに学校へ行った。
友達の机はまだ空いたままだ。
今日も休むらしい。
詳しくは聞いてないけど…。
いつも何もないところでこけている男の子が近づいてきた時ふと呟いたのが聞こえ、ゾッとした。
だって、その子が言っていたのが「次はあんただ。」だったんだよ?怖いじゃん。
何でそんな目に合わないといけないの?と問い詰めたかったが、その男の子は体調不良で早退して行った。
それからが怖くて怖くて…どうされるのかがわからない。
じゃあ、もしかして友達がおかしくなったのって男の子のせいだったの?何で?
恐怖と戦いながら一人自宅への道を歩く。
下校時間は皆一緒。だけど家が近くなると一人、また一人と離れていく。最終的には私一人となる。
辺りをキョロキョロと見回しながら自宅の入り口までやってきた。この間何も起こっていない。
慌てて家に入る。
ホッと一息ついた。
ところがだ。
なぜかそこに男の子がいた。
何で?
自宅は私のところとは全くの反対だったはず。そう聞いた気がした。でも今ここにいるのは何で?確か今日は体調不良で早退したはずなんだけど…。
お母さんが入れた…何で?
「面白い顔してるね〜。何で?って顔に書いてある。あんたにもあの子と同じ目にあってもらわないとね。」
「な、何でよ。」
「僕のこと笑っただろ?見てたのは気づいてたからね。ムカついたからすることにしたんだ。」
「するって…何を?」
「それはね…。」
それだけ言うと男の子は跡形もなく消えていた。まるで今までいたのが嘘のように。
「え?うそ。」
私はガタガタと震えてしまった。
何がどうなったのかわからない。
男の子はどこへ?
私はどうなるの?
怖い怖い怖い怖い。
その場から逃げるように自室に走りこんで部屋の鍵をかけた。
それは以前パパが勝手に部屋に入ってこようとしてきたので嫌だったからママに頼んでつけてもらったものだ。
その場にへたり込んで両手で体を抱きしめた。
夕方だったから部屋の電気をつけた…筈なのにつかなかった。何で?
その時部屋の空気がなんか変わった気がした。
まさか…あの男の子?
窓ガラスの元に足が向き、カーテンを開けると外に男の子がいた。ここはマンションの二階だよ?どうやってここにきたの?外はそこそこ暗くなってきてるから…っていうか、これないでしょ?普通。何でいるの?嫌だ!怖い。
男の子はスーッと部屋の中に入ってきた。
私はドアのそばで固まっていた。鍵さえ開ければすぐ外に出られる。でもドアノブが動かなかった。嫌だ。出たい。何で私がこんな間に合わないといけないの?
男の子がドジっ子だったからいけないんじゃない。
笑ったらダメだったの?
でも今更だよね。
今部屋には私しかいない。
家にはママがいる。
叫べは来てくれるかも。でも男の子のことはどうすれば?あれこれ考えてたら目の前にいた男の子の姿が消えており、気がついた時にはすぐ目の前に体が透けて見えた。
「きゃーー!!」
叫ぶことしかできなかった。
そしたらさ、スーッと消えたんだよ?男の子は生きてるの?死んでるの?
もしかして体調不良だったから…まさか、ね。
慌てて部屋から飛び出して、ママの元に走っていった。いるはずの場所に行ったらそこにはママが倒れていた。
「ママ!ママ!」
何度か揺さぶっていたら気がついたのかスッと起き上がった。顔をこちらに向けた時怖くなって叫んだ。だってママの目が真っ白だったから…。
両手が体をつかみそうだったので、慌ててママから離れて家から逃げ出した。
手にしているのは携帯と財布。
何処へ行こうと考えた時、パパのことを思い出した。そうだパパの元に行こう。
普段は嫌だけど、こういう時はきっと頼りになるはず。
仕事中だとは思ったけど、怖いからパパの携帯に電話をかける。
繋がったと思ったら、それは何と男の子にだった。何で??
パパをあてにできないと判断した私は中の良かった女の子のところは足が向いていた。まだ学校休んでるんだけどね。
何故行こうと思ったのかは分からなかったのだが、パッと頭に浮かんだのが仲の良かった女の子だったのだ。ここからは歩いても10分はかかる。それでも良かった。きっと友達は元に戻っているはず。その期待が大きかった。
ピンポーン。
チャイムを鳴らすと家の中で足音が聞こえた気がした。
「ハーーイ。」
なんかいつもと声が違う気がしたのは気のせいだったのか?それでも怖さが勝っていたのでドアが開くのを待った。そこにはいるはずのない男の子が。
「ヒ〜イ?!」
その場でうずくまってしまった。
もう嫌だ。
泣きながらその場で固まってしまった私は気が付いたら部屋の中にいた。
この部屋の間取りからして女の子の部屋のようだ。
しばらくしたらおばさんが顔を出してきた。
「大丈夫?玄関で倒れてたから部屋の中に運んだけどよかったよ…ね。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
「よかったわ。私が気がついて。なんか変な感じがしたのよね〜。まるで誰かに見つけてもらいたかったみたいに。あの子も起きてるから話でもしてくる?」
「いいんですか?」
「いいも何もあなた達友達なんでしょ?気にしなくていいわよ。」
「あ、ありがとうございます。」それしか言えなかった。でも有り難かった。
女の子の部屋に行くとそこには女の子が一人で机に向かっていた。
「あっ、起きたの?大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。…でもね、ちょっとだけ聞きたいんだけど聞いてもいい?」
「?いいけど…何?」
「あの子の事覚えてる?」
「あの子って?」
「ほら…。何もないところで何度も転んじゃう男の子の事。」
「あ〜、あの男の子の事ね?覚えてるけど…、えっ?まさかあの子が原因?」
「う、うん。そうなんだよね〜。」
私は今までの事を全て女の子に話して聞かせた。女の子はしばらく黙りこくり、真っ青な顔をしていた。
「ねぇ、その子…生きてる?」
「それはちょっと…分からない。」
「なら先生に聞いてみようよ。絶対に教えてくれるって。」
「そうかなぁ〜?」
「そうだよ。だって教え子だよ?知らないわけないじゃん。」
「う、うん、そうだよね。聞いたら教えてくれるよね。」
私達は話し合った結果電話をかけてみることに。
学校にはまだ先生が残っていたようで、担任の先生に変わってもらえるように電話口で伝えるとあっさりと変わってもらうことができた。
そして先生に男の子の事をストレートに聞いて見た。そしたらさ、初めは黙っていた先生も私達の勢いに根負けしたのか教えてくれた。
クラスメイトの例の男の子は夕方亡くなったという。
何でも急だったようで両親も混乱しているようだ。
それでもそれだけ聞けば事足りた為電話を切り、どうしたものかと考えた。
女の子は家の仏壇から数珠を借りてきて祈り始めた。どうかもうやめてほしいって。
私も一緒に祈ったよ。
笑ってごめんなさいって。
そして成仏してくださいってお願いしたの。
祈り出してからすぐの頃はラップ音とか聞こえたけど、時期に聞こえなくなり静かになった。
それ以降怖い目に会うことはないし、相手の嫌がりそうなことで笑ったりする事をやめることにした。また怖い目に会いたくないものね。




