これは夢ですかどこですか
大変読みにくくなってしまい申し訳ありません。
これは夢...だろうか。
なんとなくついさっき眠りについたような記憶があるためそう思える。
しかし夢であればこんな風に自分の意思で自由に考えたり体を動かすことはできないはずだ。
わからない。
そんな風に思考を巡らせていると突然どこからか声が聞こえてくる。
「初めまして詩音さん。ようこそ異世界へ。ここは半分はお考えの通り夢の中です。ただ完全に夢の中というわけではなくてですね、夢を介してくることのできる秘密の部屋というのが正解ですね。」
...えっと、
間髪入れずに声が聞こえてくるものだから何も突っ込まずにここまで来たけれど、突っ込むところが多いなんてレベルじゃないんですが。
あなた誰ですか?異世界ってなんですか当然すぎませんか?夢に半分もくそもなくないですか?夢を介してこれるってそれ夢なんですか?ここはそんな胡散臭い場所だったんですね?
「あの、質問したいことは腐るほどあるんですけど、とりあえずこれだけ答えてくれませんかね。ここが夢だろうが何だろうがなんでもいいです、元の場所に帰れますか?」
「えっと...元の場所というのは、つまりあなたの家、日本、と言いますか地球のことでしょうか。」
何を言っているのでしょうかこのお方は。自分の家以外に元の場所なんて発言するようなところあるかな。
あれ...そういえばこの夢の前にいた場所って確か家じゃなくて、見ず知らずのおばあちゃんの家だったっけ。
「それであるならば答えはNOになります。もちろんあなたへの用事がすべて済んだ後、この場所からは解放はされますけれど、目覚めたら地球ではなくフリューラインと呼ばれる別の世界に送られます。というかもうすでに送られているんですけどね。いわゆる異世界転移です。」
...異世界ですか。うーん、なんというか。あまりに突然のことで複雑な気分だ。信じていいのかもわからないし。
僕けっこうアニメ見るし、ライトノベルなんかも読んだりするから異世界的なものは結構詳しいつもりだけど。
異世界開拓系だったら楽しそうだしありかも、とりあえずじゃがいも作っとけば何とかなりそうだし。
魔王と戦う系異世界だったら辞退したいんだけどなあ。
「あの、異世界っていうのはまあいいです。確かに全く分からないような場所にいたわけですし、一応信じるとしましょう。んで問題はそこじゃなくて、これって魔王討伐のために駆り出された感じですかね。」
「あ、異世界についての説明はいらない感じですかね、助かります。魔王討伐のために呼び出されたかどうかっていうのははっきりとお答えできませんね。と言いますのも今回異世界に呼び出したのは我々管理官ではなく、異世界の住民、ラファルガ王国にお住いのラファルガ・フリアーナさんですから。」
...ラファルガ王国のラファルガさんが異世界召喚したのね。もうそれ絶対魔王討伐系じゃないですかヤダー。
「あの、今回のお話はとても魅力的ではあるんですけれど、僕はお断りさせていただきます。」
...しばらくの無言が続いた後、ようやく管理官とかいうよくわからん奴が口を開く。
「...えっと、ごめんなさい。もうすでに異世界の方に体が転移していますので、残念ですが辞退は不可能です。」
まあ、そうなんでしょうね。大体異世界転移も転生もそのほとんどが理不尽かつ突然のものが多いわけで、そんなものに辞退なんて言葉があるわけもないか。
「あの、ただその代わりにというわけでもないんですけど、スキルだったりアイテムだったりをお与えしますから、あまり異世界生活も苦にならないかと思いますよ。」
スキルかあ。うん、むしろそれなかったら異世界召喚されないでしょうね。異世界の人は僕ら地球人がほしいんじゃなくて、僕らにもたらされるスキルが目当てなわけだし。
でもやっぱりスキルもらえるって嬉しいよね。あんまり期待はしない方がいいだろうけど、期待するなって方が無理な話だ。
「そうですか、で、そのスキルとアイテムは何なんですかね。」
「スキルはポイント制です。1人10ポイントが割り振られますからお好きなスキルを選択してください。アイテムは1人5ポイントが割り振られ、これもスキル同様お好きなものをお選びください。えっと、おそらくもうリストは届いているはずですので、こう空中に液晶があると思ってタップしてみてください。」
...うん、あれだ、この異世界は、まれに見る神的異世界だ。
いやまだスキル何があるか見てないけどさ、自分で選択できるとか、理不尽の1つである大要素の1つが解消されたも同然じゃないか。
僕は速攻で空中をタップする。早く、早くスキルを見てみたい。ローディング中です、だと?ちょはよしてくださいよ。何でこういうところスペック高くないんだよ。
「あー、どうやらあと3分くらい読み込むのに時間かかるみたいですね。ですから少し異世界についてお話ししましょうか。」
まじかあと3分って。ゲームの周回1周分って考えたら短いかもしれないけれど、今の僕にとってその時間はとてつもなく長く感じられる。
まあ、待たなきゃいけないものは仕方ないか。
「スキルってどんなものがあるんですかね。あ、異世界についてのお話しは別に結構です。」
「そ、そうですか。えっとスキルに関してはたくさんあるとしか言いようがないですけど、そうですね、サポートする感じのものもあれば、戦闘するためのスキルなんかもありますよ。」
「戦闘するためのものって、自身の能力向上系とかですかね、それとも攻撃スキルみたいなものとか?」
「どっちもですね。ただ能力向上といってもそれだけで沢山ありますよ。あ、そうそう、スキルについての説明はある程度リストにありますけど、具体的なものはないのでお気をつけて。」
あー、使用感とかの話かな。確かにスキルの説明読むだけじゃ攻撃スキルとか特にわかりにくいかもしれないな。
「それから、これは必ず皆さんにおすすめ、お話ししていることなんですが、スキルポイント3という消費が必要になるのですが【フリューライン完全適応】というスキルは取っておいた方がいいですよ。というのもこれがないと魔法に干渉することができませんし、言語、つまり言葉も通じません。そのほかにも様々な地球とフリューラインの違いに適応できるようになります。」
なるほど、確かに消費3はかなり大きいけれど、背に腹は代えられなさそうな性能だ。
...あれ、僕異世界のおばあちゃんと話したきが。
「ただこのスキル、身体能力的なものも地球でのものと同様のものに変わりますので。実は色々と複雑ではあるんですけど、そうですね例えば地球での重力と月での重力は違いますよね?そのため地球ではジャンプ力が30センチ程度だったものが月だと1メートル以上とぶことができるとします。でもスキルによって月でも地球と同じ30センチしかとべなくなる、みたいなことが起こります。」
ってことはつまり地球で50メートル走が7秒だったらこっちでも7秒ってことでしょ?
もしもこのスキルなかったらどれくらい違うのか知りたいな。
「これ、スキル選択って今じゃなきゃダメなんですかね。できれば色々試した後に選びたいんですけど。」
「いい質問ですね。実はそれについてもおすすめというかお話があるんです。このスキル選択はこの場所ではなくても、いつでもできます。そして特別サービスとして王国のお城まで転移させてあげることができます。つまりスキル選びについて詳しい人間に質問したり相談したりしながらスキルを選ぶことができるわけです。どうされますか、とりあえず【フリューライン完全適応】だけとっておいて王国城に転移なされますか?」
おお、確かにこれは良心的というか重要かも。
...でも王国ってことはつまりおそらくラファルガさんのところでしょ?もしかしたら魔王討伐余裕なスキルがあるかもしれないけど、魔王討伐することが確定してしまう気がする。それ前提でスキル勧められそうだし。
「うーん、ありがたいお話ではあるんですけど、とりあえず僕は遠慮しようと思います。まあ一応スキルとアイテム見てから決めようかとは思うんですけど。」
「わかりました、あ、もう間もなくローディングが終了するみたいです。」
そう言われて再度空中をタップすると画面に数字が表示される。5、4、どうやらカウントダウンのようだ。
いやー、正直楽しみで仕方がない。異世界に召喚してくれたことに関してはラファルガさんに感謝しないといけない。
地球ではいいことなかったからなあ。全く大勢の前で女装とか、本当によくやったものだよ。
...あれ、そういえば異世界のおばあちゃんと話してた時は昔の記憶なかったはずだけど戻ったのかな?
まあ単に一時的なものだったのかもしれない。突然異世界なんてところに来たんだし1つや2つ障害が起きるものなのかも。
いやでも...
まだ何か大事なことを忘れている気がするのだけれど。
まあ、大して気にすることもないだろう。