7、対戦ーランナVSパティー
2018年3月27日、パティからランナへの呼称を修正しました。
「プラボックスでバトルできるんだって。だから中に入って。」
「う、うん、わかった。」
プラボックスに入ると、半透明の蓋から向かい側のサニィが手を振っているのが見えた。リルも手を振り返す。
リルがプラボックスに入ったのを確認すると、ランナとパティはお互いのボックスを連結した。
「これで、アプリでバトル開始を押せば、プラモバトルが出来ますわ。」
ランナも自分のスマホの画面を確認する。現在のリルの状態が表示され、更に他のプラモロイドとのリンクを確認したことによってバトル開始のボタンが出ていた。
「これね……じゃあ、行くよ!」
二人同時にアプリのボタンを押した。
「フィールド展開!」
その瞬間、リルの視界は光に包まれ……
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「ここは……」
そして気づけば、リルは晴れ渡る草原に立っていた。100mほど離れた所にサニィが向かい合って立っている。
「うふふ、ようこそー、リルちゃん。ここがバトルフィールドだよ!」
手を後ろで組んで、覗き込むような上目遣いでサニィが言う。
『プラボックスに仕込まれたコンピュータをBISとリンクさせ、バーチャル空間にプラモロイドのボディを再現しているのですわ。』
パティの言う通り、スマホの画面にはバーチャル空間の映像が映し出され、同時にBISとのリンク、そこから繋がるABS素材とのリンクによってパーツの状態も表示されている。
プラボックスは、プラモのケースになったり、バッテリーを積んで充電も出来る便利な箱だが、更に積みこまれたコンピュータで現実に極めて近いバーチャル空間を作り出すことも出来るのだ。
『私も、観戦モードで見せてもらうね。』
ドーラがスマホをかざして、バーチャル空間にアクセスする。これで試合の様子を見ることが出来るのだ。
プラモバトルとは、このバーチャル空間で相手のプラモロイドを破壊する勝負なのだ。
一昔前では実際にプラモロイドをぶつけあってパーツが修復不可能まで破壊されてしまうこともあったが、バーチャル空間ではパーツが破壊されても現実には一切影響ない。お手軽に遊ぶことが出来るので、最近流行になっているのだ。
『これがプラモバトル用の空間……リル、具合はどう?』
リルは体を動かして具合を確かめる。
「うん、ちゃんと動けるよ。大丈夫。」
そして、改めてサニィに向かいあう。
『準備はよろしいですわね?では、先行をお譲りしますわ。バトルスタートです!』
『ありがとう。リル、まずは飛び回って。』
指示を受けたリルは、背中のPA-ポリエアリアル製の翅に電気を流す。この素材は電気を流すことによって、重力に反発し空中に浮遊する性質を持つ。
尤も、この程度のPA量では数ミリ持ち上がる程度が関の山だが、このバーチャル空間ではプラモロイドの出力はかなり強化されている。エネルギーを回す量によって高度を自在に操れる。
そして、スカートに仕込まれた小型のPE―ポリエナジン製の推進器によって、加速し、空中に飛び出す。
ポリエナジンは電気によってエネルギーを生成、蓄積、放出する素材だ。これも平常時では少しの熱と光を出す程度だが、このバーチャル空間内ではこのようにエネルギーを噴射して飛んだり武器に使ったりできる。
リルは、エネルギーのキラキラした光を撒きながら、勢いよく飛び出す。
『撃って!』
「マジカルショット!」
リルがすれ違いざまサニィに向けて青色の光弾を放つ。
リルの手にするステッキには、PEのクリスタルがはまっている。手のひらについた電極と杖の表面についた電極を接触させ、電気を流し、PEからエネルギーを光弾として発射するのが、彼女の基本武装だ。
因みに金属部品は常にBISとリンクしている回路部品や、隣接したABS部分にプログラムされている金属パーツならば持ち込むことができる。
「いっつぅ……」
光弾を腹に受けたサニィは押されてよろめき、彼女のHPゲージが減少する。
この空間では、プラモロイドの受けたダメージをゲージとして表示する。
プラモロイドで重要な部位は、メモリー兼パーツをまとめる核となる胸のBISと、処理をするためのコンピュータが内蔵された頭部、次いで腹部などバッテリーを格納した部分だ。プラモによって変わるが、人型ならおおよそこの位置に重要なパーツが入っている。
カウントされるダメージは、主にその頭部と胸部の二つの部位に対する衝撃を基準とする。なので、末端部のダメージはあまりカウントされないが、急所に直接ぶつからなくとも、強い攻撃なら衝撃が伝わって大きなダメージになる。そういう計算方法なので、四肢が吹き飛んだとしても生き残り、逆転する可能性もあるし、逆にほとんどが無事でも急所に当たって勝負がつくこともある。
バッテリーに関しては並列繋ぎで複数のバッテリーを使うので、一つ損傷しても即座に行動不能になることは無いが、長期戦では響いて来るだろう。また、バッテリーは装甲版など余ったスペースに錘代わりに入れることもあるなど、たいていの場合に最低限腹部には入っているというだけで、位置が決まっているわけではない。
『よし、続けて!』
「うん!」
サニィとすれ違って、距離が離れたリルは、そこから光弾を連射する。
だが、サニィの体力ゲージの減少は微弱なものだ。見た目としてはほとんど減っていない。
それもそのはず、彼女は、命中する光弾を自分の腕についた葉っぱ状の装甲で受け止めていたのだ。
プラモロイドに使われる素材には、PS-ポリソリッドと呼ばれる素材がある。バーチャル空間ではまるで金属の様な重さと堅さを得る素材で、装甲や武器などに広く使われている。
『中々の精密さですわね。一発目から当ててくるなんて。でも、遠くからちまちま削って勝てるなんて思わないでほしいですわ。』
「うん!このくらいなら痛くもかゆくもないもん。」
遠くから飛びながら連射しているので、一発一発の威力は低いし、そもそも距離があるので実際に命中しているのはあまり多くない。
頭部や胸部に来る弾だけを防御し、他の部分は防御しなくともドレスアーマーだけで弾いてしまっている。
『だったら近づいて連射よ!』
「わかった!」
もう一度サニィに向かって突撃しながら光弾を連射するリルだったが、サニィの見せた動きに機動を逸らして身をかわした。
サニィの左腕の、ラッパ状に広がった百合の様な白い袖が前にせり出し、代わりに腕のパーツが引っ込む。そして、袖の内側に沿うように銃口が6つ出てくる。
「軌道が見え見えだよぉっ!」
サニィは、右腕でガードしながら、突撃するリルに向けてカウンターでガトリングを撃ってきた。
この武器はプラスチックの弾丸をPEのエネルギーで撃ち出しているのだ。こういう実弾を発射するタイプの武器には専用の弾丸が詰まったカートリッジが使われる。一発一発弾を込めるとなると人間には細かすぎて面倒なのだ。
リルは左手の甲をサニィに向けて、手袋の甲に埋め込まれたPE装備を起動する。
「マジカルシールド!」
リルの左手甲から、顔と胸を覆うほどの大きさの、紋様が刻まれた半透明な盾が現れた。PEに刻まれた紋様が盾に投射されているのだ。
リルはそれをかざして顔と胸に飛んで来る弾丸を防いだ。しかし、腹や脚部には何発か貰ってしまった。弾丸を受け止めて役目を終えたシールドが消える。
『ひぃ!?リ、リル!?』
攻撃を受けたことで、ランナがうろたえる。
再びすれ違って距離を取ったリルがランナを落ち着かせようと語り掛ける。
「ランナちゃん。私は大丈夫よ!慌てないで!」
『リ、リル、大丈夫?ちゃんと動くよね!?』
ランナはまるで自分が攻撃を受けたかのようにつらそうな顔をしている。
「大丈夫、ちょっと足にもらっただけだから。」
『そ、そう、ならいいの。』
ランナはほっと息をついた。
「ランナちゃん、心配してくれてるの?」
冷たくて、壁を感じていたけれども、意外と優しいところがあるのかもしれないと、リルはランナに対する印象を少し改めた。
ランナは恥ずかしさを隠すように次の指示を出した。
『と、とりあえず、今度はチャージショットよ!』
リルのステッキのPEは、エネルギーを少しの間なら蓄積することが出来る。
それを利用して、リルはステッキの先端にエネルギーを集めていく。
『なる程、大きい一撃を撃ってガードを崩すつもりですか。』
「いいよ、受けて立つよ!」
サニィはチャージの隙をついて距離を詰めてくる。リルは走って来るサニィに焦らずしっかりと狙いを定める。
「いっけぇっ!」
勢いよく発射された大きな光弾はサニィに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
「そんな一発だけポンと撃ってもねっ!」
サニィはくるりと回って光弾を受け流す。
「かわされた!?」
「一発だけ撃っても、動いてる相手には当たらないよ!」
攻撃をかわしたサニィが更に距離を詰めようとするので、リルはガトリングを警戒してあわてて距離を取る。
リルが牽制に再び連射を放つが、全く有効なダメージを与えられていない。
そうして、しばらくリルが遠隔射撃を行う展開が続いた。しかし、パティと言葉を交わさずともサニィは攻撃や防御を行い、リル寄せ付けない。
『離れれば防がれるし、近づけばガトリングが飛んで来るなんて……パティちゃん、強い……!』
『どうしましたの?ランナちゃん、意外と臆病ですのね。』
『うぐっ、そんなことないわよ!』
パティの挑発にランナは怒るが、事実としてランナはリルが攻撃を受けることを恐れて、攻めに行くことが出来ないでいる。今だって、挑発に怒りはしても踏ん切りがつかないでいる。